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44.競技場から今まで~sideゼストゥウェル6
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「····精霊、殿?」
指輪のくすんだ黒曜石を見ながら呆然と呟く。
何故、こんなことに····?
「精霊殿?!」
我に返ってとにかく魔力を注ぐ。
しばらくしてやっとくすみが少しやわらいだ気がした。
“ゼ、スト”
囁くような少年の声が頭に響く。
「精霊殿!
どうしたんだ?!
どうすればいい?!」
“あの····子····に····”
「あの子?!
あの少女か?!」
“ごめ····ん····”
「精霊殿!」
それきり声は聞こえなくなった。
私はとにかく魔力を込め続け、魔力の使いすぎで気絶してしまった。
翌朝、目が覚めてすぐに隣室のリューイの部屋をノックした。
黒曜石は再びくすみ、呼びかけても返事がない。
「リューイ!
開けてくれ!」
「どうしました?
ひとまず中へ」
驚いた顔をしながらリューイがドアを開ける。
すでに護衛用の服を着ていた。
部屋に入るとすぐに盗聴防止の結界を張ってくれる。
「魔力を随分消費していますね」
差し出された魔力の回復用ポーションを一気に飲む。
甘い口当たりと魔力の回復がいくらか心を落ち着かせる。
「精霊殿が、消えるかもしれない!
指輪の黒曜石のくすみがどれほど魔力を注いでもなくならないんだ!」
「落ち着きなさい」
リューイが私の手にあった指輪をそっと受け取る。
1度魔力を注いで様子を眺め、もう1度注いでから指輪に小さな結界を張る。
“だ····れ····”
「精霊殿!」
「あなたは少し黙っていなさい。
私ですよ、護衛のリューイです。
魔力を注いだ上で指輪に結界を張りました。
魔力が何者かに抜き取られていたようですが、心当たりは?」
“ぼくが····わる、い。
いえな····ことわ、り····”
「なるほど、精霊の禁忌をおかしたのですか?
しかしそれならすぐに消滅するのでは?」
理とは何だ?!
禁忌とは、何をしたのだ?!
詰め寄りたくても、今は静観するしかないのがもどかしい。
“····ご····め····”
「言えませんか。
それがあなた方の理なら仕方ありませんね。
大会の時の少女には会いたいですか?
随分驚いていたようですが」
そうだった。
リューイは競技場の後方に控えて全て見ていたんだった。
しかし、何故こんなに精霊の事を知っている?
“····う、ん····”
「この状態で魔力を注ぎ続けたとして、どれくらいもちそうですか?」
“いつ····か····”
「わかりました。
もう一度注ぎますから、そのまま休んで下さい」
そう言って魔力を注いでから、指輪を返された。
「聞きましたね。
猶予は5日あります。
今日は回復薬を飲みつつ、魔力を注いで下さい。
明日からは学園にいる間は私が代わりに注いでおきます」
「そなたは何故精霊の理や禁忌を知っている?!
どうして昨日教えなかった!」
思わず胸ぐらを掴んで大声をあげる。
「落ち着きなさい。
昨日の時点で話もしていないのにわかるはずないでしょう。
精霊が禁忌を犯した時、その瞬間に消えるというのを聞いたことがあるだけです。
逆に何年も一緒にいたのに何故知らないんです?
精霊は側にいるのも力を貸すのも当然とでも思っていましたか?
この精霊の事をちゃんと知ろうとしましたか?
理や禁忌の内容までは知りませんし、私が知るのは急に消えるという事だけでしたから、今の状況がどういうものなのかまではわかりかねます。
ただ、状況的にあの少女がそれに関わっている可能性はあるでしょうね」
リューイの言葉が刺さる。
私は····自分にとって必要な事以外では精霊殿の事を知ろうとした事はなかった。
名前すら教えてくれず、あだ名を付ける事すらも許されていない。
「あの子なら、助けられるだろうか····間に合うだろうか····」
「どうでしょう?
彼女が何かしたのではなく、あなたと精霊殿が何かをした方でしょうからね。
期待をして会うのなら、会わない方が良いかもしれませんよ。
それよりあなたがザルハード国の王族として、王子として、精霊と共に在る者としての在り方をもう1度見直されるべきでは?」
「····手厳しいが、その通りだ」
「明日は登校日ですから、明日の朝王太子に非礼を詫びて離宮から登校しましょう。
それ以降は運を天に任せて過ごすしかありません」
私は促されるまま、隣の部屋に戻った。
翌日ギディアス殿には非礼を詫びつつも、やはり早急にとお願いしてから登校した。
憂鬱な気持ちで寮に戻り、魔力を注いでいるとドアがノックされてルドルフ殿から2日後に念願の面会が叶ったと聞かされた。
1人になってから精霊殿に報告したが、反応はなかった。
指輪のくすんだ黒曜石を見ながら呆然と呟く。
何故、こんなことに····?
「精霊殿?!」
我に返ってとにかく魔力を注ぐ。
しばらくしてやっとくすみが少しやわらいだ気がした。
“ゼ、スト”
囁くような少年の声が頭に響く。
「精霊殿!
どうしたんだ?!
どうすればいい?!」
“あの····子····に····”
「あの子?!
あの少女か?!」
“ごめ····ん····”
「精霊殿!」
それきり声は聞こえなくなった。
私はとにかく魔力を込め続け、魔力の使いすぎで気絶してしまった。
翌朝、目が覚めてすぐに隣室のリューイの部屋をノックした。
黒曜石は再びくすみ、呼びかけても返事がない。
「リューイ!
開けてくれ!」
「どうしました?
ひとまず中へ」
驚いた顔をしながらリューイがドアを開ける。
すでに護衛用の服を着ていた。
部屋に入るとすぐに盗聴防止の結界を張ってくれる。
「魔力を随分消費していますね」
差し出された魔力の回復用ポーションを一気に飲む。
甘い口当たりと魔力の回復がいくらか心を落ち着かせる。
「精霊殿が、消えるかもしれない!
指輪の黒曜石のくすみがどれほど魔力を注いでもなくならないんだ!」
「落ち着きなさい」
リューイが私の手にあった指輪をそっと受け取る。
1度魔力を注いで様子を眺め、もう1度注いでから指輪に小さな結界を張る。
“だ····れ····”
「精霊殿!」
「あなたは少し黙っていなさい。
私ですよ、護衛のリューイです。
魔力を注いだ上で指輪に結界を張りました。
魔力が何者かに抜き取られていたようですが、心当たりは?」
“ぼくが····わる、い。
いえな····ことわ、り····”
「なるほど、精霊の禁忌をおかしたのですか?
しかしそれならすぐに消滅するのでは?」
理とは何だ?!
禁忌とは、何をしたのだ?!
詰め寄りたくても、今は静観するしかないのがもどかしい。
“····ご····め····”
「言えませんか。
それがあなた方の理なら仕方ありませんね。
大会の時の少女には会いたいですか?
随分驚いていたようですが」
そうだった。
リューイは競技場の後方に控えて全て見ていたんだった。
しかし、何故こんなに精霊の事を知っている?
“····う、ん····”
「この状態で魔力を注ぎ続けたとして、どれくらいもちそうですか?」
“いつ····か····”
「わかりました。
もう一度注ぎますから、そのまま休んで下さい」
そう言って魔力を注いでから、指輪を返された。
「聞きましたね。
猶予は5日あります。
今日は回復薬を飲みつつ、魔力を注いで下さい。
明日からは学園にいる間は私が代わりに注いでおきます」
「そなたは何故精霊の理や禁忌を知っている?!
どうして昨日教えなかった!」
思わず胸ぐらを掴んで大声をあげる。
「落ち着きなさい。
昨日の時点で話もしていないのにわかるはずないでしょう。
精霊が禁忌を犯した時、その瞬間に消えるというのを聞いたことがあるだけです。
逆に何年も一緒にいたのに何故知らないんです?
精霊は側にいるのも力を貸すのも当然とでも思っていましたか?
この精霊の事をちゃんと知ろうとしましたか?
理や禁忌の内容までは知りませんし、私が知るのは急に消えるという事だけでしたから、今の状況がどういうものなのかまではわかりかねます。
ただ、状況的にあの少女がそれに関わっている可能性はあるでしょうね」
リューイの言葉が刺さる。
私は····自分にとって必要な事以外では精霊殿の事を知ろうとした事はなかった。
名前すら教えてくれず、あだ名を付ける事すらも許されていない。
「あの子なら、助けられるだろうか····間に合うだろうか····」
「どうでしょう?
彼女が何かしたのではなく、あなたと精霊殿が何かをした方でしょうからね。
期待をして会うのなら、会わない方が良いかもしれませんよ。
それよりあなたがザルハード国の王族として、王子として、精霊と共に在る者としての在り方をもう1度見直されるべきでは?」
「····手厳しいが、その通りだ」
「明日は登校日ですから、明日の朝王太子に非礼を詫びて離宮から登校しましょう。
それ以降は運を天に任せて過ごすしかありません」
私は促されるまま、隣の部屋に戻った。
翌日ギディアス殿には非礼を詫びつつも、やはり早急にとお願いしてから登校した。
憂鬱な気持ちで寮に戻り、魔力を注いでいるとドアがノックされてルドルフ殿から2日後に念願の面会が叶ったと聞かされた。
1人になってから精霊殿に報告したが、反応はなかった。
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