秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

文字の大きさ
50 / 491

49.光の精霊王

しおりを挟む
「では光の精霊殿が闇の精霊殿を消失させようとしていたということか····」

 ん?
この王子ってばお門違いな怒りを滲ませてる?

「王子、怒りを感じるべきはそこじゃないですよ。
フェルも綺麗な顔なんだから、睨んじゃ駄目」

 僕は殺気立つ首に回されてる細い腕をぽんぽんと叩いてなだめる。

「どのような理由があろうと現実問題私の命が危ぶまれている。
その切っ掛けを闇の精霊である彼が作った。
でも理に抵触させたのは、あなたがそれによって行動してしまったから。
つまり彼を消しかけたのは、下手をすると精霊に好かれている私を殺しかねない状況にとどめを刺したあなた自身の言動です。
私を愛するフェルはそれに憤慨して1番影響力が小さい光の呪印で闇の精霊の力を削って消失の時間を早めただけ。
本来なら精霊にとって同族殺しは禁忌なので、フェルも大きくそれに当たる行動はできないから、できてそれくらいでしょう。
いくら理に抵触していた者であっても、理に反した者ではないのだから。
それにあの呪印はフェルが少しでも赦す気になればすぐに自然消滅してしまうのに、私に言われるまでフェルは解呪しなかった。
それどころか先ほどの庭でも王子は彼女の気分を害し続けた。
私が精霊が見える事は最新の注意を払って話すべきだったのに、耳の良い獣人の護衛の言葉を鵜のみにして何の対策も取らずに話した。
アン様はギディアス様の命令で聞き耳立ててましたし、少なくともリューイ様が耳の良い竜人なら聞こえていたはずです。
それに気配を殺すのが上手い誰かが聞いていたらどうなさいますか?
あの時木々を揺らして聞こえないようにしていたのは、他ならぬフェルですよ。
怒りが増長こそしても、解けるわけがない。
また闇の精霊さんがまともに加護を与えられる状態なら、この程度の光の呪印に影響されたりはしなかった。
フェルの力は今の彼よりずっと強いけど、同族の存在そのものを消し去ることが許されるほど精霊の理だって甘くはない。
それだけ彼の存在感が元々希薄だったんです。
原因、わかりますか?」

 ギディアス様、僕の視線から逃げたな。
王子は僕の言葉にどんどん青くなっていき、俯いた。
暫くして、わからないとポツリともらす。

「あなたが彼を利用しようとしていたから。
彼の存在をあって当然と軽くあしらったから。
第二王子が亡くなってから約9年でしょうか。
本来それほど長く共にいれば、せめて愛称くらいでは呼ばせてくれます。
それにあなたの闇の加護は随分薄い。
それこそ出会ってすぐに受け取って、それきりなんじゃないですか?
与えることができない精霊は存在が希薄になって、いずれは消えます。
でもこれだと彼があなたにわざと与えてないって思われるかもしれませんね。
違いますよ?
間近にいるのに愛を傾けてもらえない精霊は、加護を与えることができなくなる。
精霊の加護や魔法は特に周りの愛情に左右される。
そうさせたのもあなたなんです。
今は私が彼と関わることで加護を与えられるくらいには回復していますが、ザルハード国に戻ればその先はわからない。
これからあなたの覚悟が問われるでしょう。
精霊がつくとは精霊を愛し、愛される状態になるということですが、彼にそれだけの責任を持てますか?
愛称すら呼ばせて貰えない、王族としても精霊と共に在る自覚すらも未だ乏しいないあなたが」

 闇の精霊はもうずっと涙をこぼしている。
王子も俯いたままだ。
そして僕はそろそろ眠い。

「すまなかった、精霊殿。
全てが私の責任だ」

 顔をあげた王子は目に涙を浮かべ、苦しそうに眉をひそめている。
闇の精霊の両手をガシッと握って向き合う。

「私は同じ過ちを繰り返さないと誓う。
しかし人として、王族として未熟であり、精霊殿の事すら知らない。
まずはどうか共に在ることを許して欲しい。
そしてそなたの事、精霊の事を教えて欲しい。
本当に、本当にすまなかった。
これまでこんな私に恩情をかけて共に居てくれた事に礼を言う」

 王子は両手を握ったまま、額に当てる。
確かザルハード国の親しい者にする最上の礼の仕方だったっけ。

「ううん、僕こそごめんね。
君の弟、ユランから君の事をお願いされてたんだ。
なのに僕は嫌われたくなくて、君を正すべき時に正さないまま今日まできた。
今なら僕は加護を与えられるんだけど、受け取ってくれる?」
「····ふふっ、ぜひお願いする」

 泣き笑い合う美形の少年達。
精霊が額に祝福のキスを落とす。

(····これ、BL好きにはたまらないシチュエーションじゃないのかなぁ····)

 いけない、つい生暖かい目で見ちゃったよ。

「アリー、そんな顔も可愛いよ」

 義兄様、今はバラしちゃいけないとこだよ。

「さて、これで話は終わりましたので帰るとしましょうか」

 もうもめ事には巻き込まれたくないや。
僕はもう帰りたい。

「ね、待ってくれないかな、アリー?」

ギディアス様、嫌な予感しかしません。
いたいけな10才児なんてほっといて欲しいんだけど。

「君、他に色々隠してるよね。
疲れたなら、ここに泊まってくれてもいいんだよ?
部屋なんてたくさんあるから、ね?」
「ギディアス様、推察したようにザルハード国の建国の歴史は違っておりましたが、それは王子にお聞き下さい」
「そう、他には?」
「ザルハード国の教会って、やっぱり嘘臭いですよねー」
「それで?」
「····何がお知りになりたいでしょう?」

 義父様、義兄様、どうして止めてくれないの?!
何か2人ともじーっと見てるのはどうしてかな?!
ギディアス様の優しげな微笑みが優しく感じないのはどうしてかな?!

「そうだねぇ、そこの美しい淑女はもしかしてザルハード国の建国について知ってるんじゃないかな、とか?
光の精霊であるなら、建国の光の精霊王とも親しいのかな、とか?」

 鋭いご質問ですこと····ははは。
王子もこっちを凝視してくるし。

「アリアチェリーナ嬢。
先ほど3人で話していた際に出た力の強い光の精霊さんというのがその方ではないのか?
精霊とは生きてきた年数によっても存在感が違うと聞いた事がある。
もし光の精霊王と我が国の事について知っているなら、教えては貰えないだろうか。
それに闇の精霊殿に赦しを与えてくれる時に、まだ好きでいてくれて、と言っていた。
会った事があるのではないか?」

 うっわ、ギディアス様へ援護射撃なんかしてきた!
恩を仇で返すとはこのことか!

 僕は振り返ってフェルにアイコンタクトを送る。

(よし、フェルから断って!!)
(ふふ、任せて!!)

 ウィンクしたフェルに、伝わって良かったと安堵した。

「私がその精霊王よ!」

 うっわ、伝わってなかった。
僕は力なくフェルの大きな谷間に後頭部を埋めた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...