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59.緑茶

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「あはは、目に浮かぶわぁ、その光景!」

 事の顛末を話すとカイヤさんが大爆笑。
····解せない。
獣人さん2人はげっそりと力なく笑う。
····解せない。

「それより頼まれてたやつ探してきたよ!」
「うわぁー、やったぁ!」

 僕は一気にテンション上がる!

「ジャガンダの北の地域だけで飲んでたミィってんだ。
さっそく試してみるかい?」
「ぜひ!」

 あぁ、やっとだぁ!
カイヤさんは用意をしに奥に下がった。

「アリー嬢、何を探してたんだ?」

 ラルク様、キョトン顔にそのお耳、萌えます!
ペルジアさん、興味津々なお顔にピンと立つこちらに向いたお耳も素敵です!

「ふふふ、ずっと探していた茶葉があるんです」
「お茶?」
「はい、ジャガンダの気候は昔何かの文献で読んだ気候と似ていましたから、そこだけで栽培されてる茶葉が無いかと探してもらってたんです。
私が思う通りの物ならベイにも合うはず」
「ベイに!
去年のあの料理は旨かったから、それは私も飲んでみたい!」
「もちろん一緒に試飲しましょう、ラルク様」

 僕達の上がるテンションにギザ耳ペルジアさんも興味を引かれたみたい。

「ベイとは?
他の商会の物なら、俺も試してみたい。
かまわないか?」
「もちろんですよ、ペルジアさん。
差し入れ用にこの国に合わせて作ったベイ料理持ってきてるので、お茶がきたら試食もしますか?」
「いいのか!」

 ペルジアさんの顔が輝く。
お耳の他に尻尾までもピンとして····くそ、レイヤード義兄様め!
大好きだけどね!

「お待たせー」
「カイヤさん、ベイを使った差し入れ持ってきたので皆で食べながら試飲していいですか?」
「ベイを?!
そりゃ嬉しい!
もちろんだよ!」

 カイヤさんの笑顔が商人から素になる。
こういうの見ると嬉しいね。
僕は鞄からごそごそと取り出す。
あ、串焼きも1本ずつならいっか。

「これはカイヤさんの旦那さんが今出店してる串焼きです。
ジャガンダの調味料で味付けしてるんです。
お家用に買ったものですけど、1本ずつどうぞ。
こっちはベイと具材をトマトベースで炊き上げて薄い卵焼きで包みました。
お茶は····うん、やっぱり苦味があるので食事後に飲むのが初心者には良いかもしれません。
手で直接持って食べて下さい。
貴族にはお行儀が悪く思うかもしれませんが、ラルク様は平気ですか?」
「騎士の演習の食事は手で持って食べる事もあるから、大丈夫だ」
「じゃあ、まずはお茶を一口飲んでみて下さい」
「「····う、苦い」」
「あぁ、紅茶に慣れてると苦いよねぇ」

 うん、思った通り緑茶だ!
カイヤさん、淹れ方ばっちりですよ。
獣人さんにはやっぱりこの濃さは辛そうだ。
お耳がへにゃったのが可愛いなぁ。

「ふふふ、思った通りのお茶です。
カイヤさん、ありがとうございます!
じゃあ、ベイと串焼き食べたらまた一口飲んでみて下さいね」

 ラルク様がまずは黄色く包まれオムライス風おにぎりに手を伸ばす。
それを見て、ペルジアさんとカイヤさんも続く。
····どうかなぁ····。

「「「うまい(美味しい)!」」」

 カイヤさんは美味しいだったけど、3人ともものすごく良いお顔になった。

「なんだい、ベイってこんなアレンジできるんだね!
これならこの国でも売り出せるかもしれない!」
「あの時食べたベイとはまた違う味付けだが、確かにこの味付けならこの国の大体の者に馴染むと思う」
「ベイは面白い食感だな。
でもトマトの酸味とベイの甘味が上手く合ってる。
この串焼きもいいか?」

 よしよし、好評だね。
マジックバッグの良い所は保存が効くから温かいまま放り込んだら温かいまま取り出せるんだよね。
もちろん串焼きもどうぞ、と頷くよ。

「「うまい!」」

 育ち盛りの男子達のこの顔!
差し出した甲斐があった。
カイヤさんは旦那さんのお店のだし、どうせなら家で食べて欲しいと遠慮されてしまった。
残りのおにぎりも全部なくなって、仕上げの緑茶だ。
ペルジアさんもラルク様も意を決したようにグイッといく。

「「あれ?!」」

いきピッタリだよね、この2人。

「苦味はあるけど、さっきと違う」
「口の中がさっぱりだ」

 ペルジアさん、ラルク様と続いて感想を教えてくれる。

「なるほどね。
ミィも今後需要がでるかもしれないねぇ」
「私は定期購入するので、手配をお願いします。
あと栽培方法って一通りだけですか?
もしそうなら、実験に協力して欲しいんですが」
「確か一通りだけで、あの地域の庶民のお茶って聞いてるけどねぇ。
流通もほとんどないみたいだし。
どんな実験なんだい?」
「ふふふ、カイヤさん。
ここからは秘密のお話ですから、また後日。
このお祭りが終わったら、うちに来ていただけませんか?」
「····へぇ、もちろん行かせてもらうよ?」
「「ふふふふふふふ。」」

(カイヤさん、お金の匂いに気がつきましたか?)
(もちろんだよ、アリーちゃん)

「ラルク、上の兄貴の顔がちらつくのは何でだろう····」
「私はどこぞの悪魔の微笑みに見える····」

 男子2人はドン引きだ。

 ひとしきり笑った後、ミィをしっかりマジックバッグに詰め込んで王城に向かう。
正確にはお城の正門前だ。
ラルク様がちょうど用があるからとついてきてくれた。
ペルジアさんとはブースでお別れ。
途中でラルク様に買ってもらった果実水が美味しかった。
ちゃんとお礼も言ったけど、ラルク様は浮かない顔で後ろばかりチラチラ見てて聞こえてなかったかもしれない。
気になる商品でもあったのかな?

 正門に着くとすでにバルトス義兄様がいて、お帰りと抱き上げられる。
何故かすぐ後ろからレイヤード義兄様も合流して、声をかけられたラルク様は飛び上がった。

「な、レイヤード、やっぱり後ろにいた!
いや、いい!
私は知らないからな!
じゃあアリー嬢、また!」

 早口で喋るだけ喋ってダッシュで走って行った。

「お礼言えなかった····」
「脳筋はほっといて大丈夫だよ。
それよりちゃんと約束は守れた?」
「もちろん!
知らないお耳と尻尾は触らなかったよ!」
「····そう」

 レイヤード義兄様はどうして不服そうなんだろ?

「まずは帰ろう」

 バルトス義兄様が転移の魔法を使う。
領から王都は遠いから、朝もバルトス義兄様にお願いしたのだけれど、やっぱりこの魔法は便利だね。
レイヤード義兄様に転移魔具作ってもらおうかな。
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