67 / 491
5
66.王子の謝罪と出発前の日常
しおりを挟む
「····」
「····すまない、アリー」
僕はかつて見た事がないほど深刻な顔をしたこの国の第2王子と薄暗い檻の中で向かい合って座り込んでいる。
王子の両手首には頑丈そうな手枷が嵌められていて重そうだ。
僕達の間には同じく手枷をされたルド様と同い年くらいの、シル様にとても良く似た傷だらけの狼獣人が横たわっていて、僕は破ったスカートの切れ端で1番傷の深い彼のお腹を両手で押さえて止血中。
切れ端はじわじわと血の染みを広げていってる。
か弱い僕の両手首には何もついてない。
僕には必要ないって判断したんだろうね。
獣人さんは血の気の失せた顔で浅く息をしている。
出血がひどいからね。
シル様よりは細いけど、肉食系獣人さん特有の将来が楽しみになる良質な筋肉がついた右腕と左の太ももの出血はすでに僕のスカートの一部を巻き付けてある。
僕は取りあえず愛想笑いをしつつもこう思わずにはいられない。
(どうしてこうなったー!!!!)
――――
「アリー、本当に体調は平気?
熱が出てるんじゃない?」
「そうだ、俺の天使の顔色が優れないぞ」
うん、直前に支度を手伝ってくれたニーアから今回の越冬は微熱程度で終わって肌艶も良いって褒められたんだけどな。
僕の事なのに自分の事みたいに嬉しそうに話してくれてほっこりしちゃったんだよ。
「可愛い私の娘が狩場や城になど行けば一目惚れする馬鹿な子息と嫉妬深い令嬢の熱線で溶けてしまう」
うん、人は目からビームなんか出さないし溶けないからね。
むしろビームだと焼け焦げちゃうんじゃないかな。
僕はそっとバルコニーに続く大きな出窓に目をやる。
季節は春だ。
麗らかな陽気。
夜はまだほんのり肌寒いけれどグレインビル領のあちこちに僕の大好きなアリリアの花が咲き始めていて山々が白く彩られている。
春風に乗って時折香りが鼻をくすぐる。
再来月にはアリリアの蜂蜜が手に入るんだろうなぁ。
ちなみにアリリアって、あっちの世界の桜に似てて香りはもう少し甘いんだ。
向こうと違って花の咲いた後はさくらんぼみたいな実がなるんだけど、めちゃくちゃ酸っぱい。
甘酸っぱいんじゃなくて、ホントに酸っぱい。
「アリー、そんな憂いのある顔をするくらい体調が悪いんだね」
「そうだな、これは出かけてる場合じゃない」
おっと、一瞬の現実逃避を見逃さずに病人に仕立てようとするなんて。
抜け目のない義兄様達もできる男でとっても素敵だよ。
「心配させるなんて悪い子だ。
良い子だから父様が部屋まで運ぼうか」
悪い子なのか良い子なのかどっちかな。
どっちにしても義父様の事が大好きな子に変わりはないけどね。
僕は抱っこしようとした義父様をかわして大げさにため息を吐く。
「父様も兄様達も心配し過ぎだよ。
狩りの時以外は皆ついていてくれるじゃない。
それに狩りの間は伯母様と従姉のお姉様がついていて下さるんだから問題ないでしょ。
せっかくこの冬は初めて体調が大きく崩れなかったんだから、そろそろ僕を病人扱いするのやめてよ」
僕はぷくっと頬を膨らまして怒ってるアピールだ。
「「「私の(俺の)(僕の)天使が尊い」」」
いや、皆の発言と僕の表情がちぐはぐなのに気づいてる?
「····すまない、アリー」
僕はかつて見た事がないほど深刻な顔をしたこの国の第2王子と薄暗い檻の中で向かい合って座り込んでいる。
王子の両手首には頑丈そうな手枷が嵌められていて重そうだ。
僕達の間には同じく手枷をされたルド様と同い年くらいの、シル様にとても良く似た傷だらけの狼獣人が横たわっていて、僕は破ったスカートの切れ端で1番傷の深い彼のお腹を両手で押さえて止血中。
切れ端はじわじわと血の染みを広げていってる。
か弱い僕の両手首には何もついてない。
僕には必要ないって判断したんだろうね。
獣人さんは血の気の失せた顔で浅く息をしている。
出血がひどいからね。
シル様よりは細いけど、肉食系獣人さん特有の将来が楽しみになる良質な筋肉がついた右腕と左の太ももの出血はすでに僕のスカートの一部を巻き付けてある。
僕は取りあえず愛想笑いをしつつもこう思わずにはいられない。
(どうしてこうなったー!!!!)
――――
「アリー、本当に体調は平気?
熱が出てるんじゃない?」
「そうだ、俺の天使の顔色が優れないぞ」
うん、直前に支度を手伝ってくれたニーアから今回の越冬は微熱程度で終わって肌艶も良いって褒められたんだけどな。
僕の事なのに自分の事みたいに嬉しそうに話してくれてほっこりしちゃったんだよ。
「可愛い私の娘が狩場や城になど行けば一目惚れする馬鹿な子息と嫉妬深い令嬢の熱線で溶けてしまう」
うん、人は目からビームなんか出さないし溶けないからね。
むしろビームだと焼け焦げちゃうんじゃないかな。
僕はそっとバルコニーに続く大きな出窓に目をやる。
季節は春だ。
麗らかな陽気。
夜はまだほんのり肌寒いけれどグレインビル領のあちこちに僕の大好きなアリリアの花が咲き始めていて山々が白く彩られている。
春風に乗って時折香りが鼻をくすぐる。
再来月にはアリリアの蜂蜜が手に入るんだろうなぁ。
ちなみにアリリアって、あっちの世界の桜に似てて香りはもう少し甘いんだ。
向こうと違って花の咲いた後はさくらんぼみたいな実がなるんだけど、めちゃくちゃ酸っぱい。
甘酸っぱいんじゃなくて、ホントに酸っぱい。
「アリー、そんな憂いのある顔をするくらい体調が悪いんだね」
「そうだな、これは出かけてる場合じゃない」
おっと、一瞬の現実逃避を見逃さずに病人に仕立てようとするなんて。
抜け目のない義兄様達もできる男でとっても素敵だよ。
「心配させるなんて悪い子だ。
良い子だから父様が部屋まで運ぼうか」
悪い子なのか良い子なのかどっちかな。
どっちにしても義父様の事が大好きな子に変わりはないけどね。
僕は抱っこしようとした義父様をかわして大げさにため息を吐く。
「父様も兄様達も心配し過ぎだよ。
狩りの時以外は皆ついていてくれるじゃない。
それに狩りの間は伯母様と従姉のお姉様がついていて下さるんだから問題ないでしょ。
せっかくこの冬は初めて体調が大きく崩れなかったんだから、そろそろ僕を病人扱いするのやめてよ」
僕はぷくっと頬を膨らまして怒ってるアピールだ。
「「「私の(俺の)(僕の)天使が尊い」」」
いや、皆の発言と僕の表情がちぐはぐなのに気づいてる?
15
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる