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101.お母様との絶縁~クラウディアside
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白い陶器のような肌に白銀の髪と紫暗の目をした少し垂れ目な目元が優しく儚げな印象を与える美少女。
青紫から裾にいくにつれて赤紫へと変わる色味のドレスがよく似合っていて型は子供らしさがある物なのに、どこか艶やかさを醸し出していました。
私の背伸びした赤のドレスとは大違い····。
差し出されたハンカチを断ろうとしたけれど、目元に溜まった水滴が落ちそうになって思わず受け取って水滴を吸わせてしまいましたわ。
1度そうすると次々溢れてしまうし、恥ずかしながら鼻からも····。
「洗ってお返ししますわ」
慌てて鼻を押さえて息を吸うと、優しい花の香りがして驚きましたわ。
「これ、良い香りですわね。
香水とは違う、自然の花の香り····」
「グレインビル領で精油にも使う花で染色しておりますの。
花の香りには心を落ち着かせる効果があるとされておりますし、今日は他にも予備を数枚持っておりますから、拙い刺繍でお恥ずかしいけれど、貰っていただけると嬉しいですわ」
私の驚きにもその理由を説明するし、刺繍だってその道の職人並み。
それに····。
月とアリリアのモチーフ。
昔、初めてルナチェリアに会いに行った時に叔母様に教えていただいた事を思い出しました。
そう、あなたはちゃんと私の従妹を大事に想っていたのね。
「拙いなんて····ありがとう」
完敗ですわ。
まだ心から素直にはなれませんけれど、今更遅すぎるけれど、あなたは迷惑でしょうけれど····。
「素敵なデザインね。
自分で刺繍したの?」
お母様もあの時いたから、きっと気づきましたのね。
いえ、もしかしたら最初から知っていたのかしら。
そうでなければ、親友の実の娘の後釜に座っただけの娘ならば、きっと他家の令嬢のお茶会に付き合うなんてしなかったはずですもの。
クッキーだって依頼されたからと今朝まで匂いがしっかり残るほど自ら作ったりしませんわ。
それから2人がドレスのデザインを仲良くお話ししているのを聞きながら、落ち着く香りを吸い込んで涙が引いていくのを待ちましたの。
ドーン!!
ドーン!!
狩猟の開始の合図ですわね。
今ならレイヤード様に心からの謝罪が····いえ、きっともうそれすら許されない。
そうして再び気持ちは深く沈んでいきましたわ。
けれど辺境城に到着して会場に入る頃には令嬢としての顔を貼りつけましたのよ。
涙が完全に引いたのは場内の騎士や兵士の数が思ったより多くて圧倒されたのもありましたけれども。
確かアビニシア領はまだ隣国と小さな小競り合いがある領地でしたものね。
会場に入ると慣れたとはいえ、既にいらっしゃる笑顔の淑女達の独特な視線に耐えねばなりませんでした。
『社交界でのあなたの評判を知っていて?
身分はあっても中身のないつきまとい令嬢。
公爵家の寄生虫····』
今朝のお母様の言葉を思い出して足がすくみそうになるのを何とか堪えて歩みを進めましたわ。
席に案内されながら先に歩くあの子の視線を追うと三大筆頭公爵家と主催者の1つであるご淑女方が目に入りました。
優雅に座りつつも、あの子に値踏みするような視線を送っていて、私はどうしてか不快な気持ちになりましたわ。
席に着くとそう時間を空けず、アビニシア侯爵夫人とそのご令嬢方が挨拶の為にこちらに参ります。
けれどその時の私は再びお母様の言葉でうちひしがれておりましたわ。
「あなたが娘であればと思うわ」
お母様はギリギリ私にも聞こえる程度の声音であの子にそう告げました。
私は要らない娘だと意図するようで、肩が震えて俯いてしまいまいました。
お母様はこの子を養女にしたいのでしょうか?
しかし2人の話の流れから、違うと感じました。
まさか、お兄様に?
俯きながらも耳をそばだてましたわ。
「確かに、あなたを前にしたあなたの家族を見たのは初めてだけれど、愛情表現が非常識かつ重苦しかったわね」
「それほどの愛情を注がれれば、私もついつい同じだけ、いえ、それ以上の愛情をかえしたくもなりますわ。
受け止める方も大変でしてよ」
恐らくこの子もお母様の意図に気づいて断りましたのね。
他の3人の家族と同じ類いの愛情の示し方は私でもわかる程に非常識かつ暑苦しく感じましたもの。
レイヤード様にはそれを傾けて欲しかったけれど。
お母様やお父様なら耐えられても、お兄様だけは耐えられないでしょう。
良くも悪くも常識的ですもの。
「そうね、色々諦めるべき所は諦めるべきね」
少し苦笑するお母様ですが、その目はまだ諦めてはいませんわね。
「ねえ、クラウディア。
あなたにはこの子より、いえ、足下に及ぶ程度には育って欲しかったのよ?」
その言葉に思わず顔を上げてしまいます。
遅ればせながら自らの過ちに気づきましたわ。
ですからどうか、見捨てないで下さいまし。
けれどその優しく慈悲深いお顔とは裏腹に、艶のある唇が紡ぐ言葉は私の心を引き裂きました。
「つまらない顔をしてもこれ以上失望させるだけの期待もあなたにはしていないのよ、クラウディア?」
お母様は優しいけれど、高位貴族として生きると決めて生きてきた方。
もう娘だからと甘える事は許さない、いえ、私がフォンデアス公爵家に存在する事そのものを許さないと決められたのだと悟りましたわ。
実のお母様からの絶縁のような宣言にいたたまれなくなり、マナー違反となる事への謝罪の一礼をして1人になれる場所を探す為、席を後にしたのです。
青紫から裾にいくにつれて赤紫へと変わる色味のドレスがよく似合っていて型は子供らしさがある物なのに、どこか艶やかさを醸し出していました。
私の背伸びした赤のドレスとは大違い····。
差し出されたハンカチを断ろうとしたけれど、目元に溜まった水滴が落ちそうになって思わず受け取って水滴を吸わせてしまいましたわ。
1度そうすると次々溢れてしまうし、恥ずかしながら鼻からも····。
「洗ってお返ししますわ」
慌てて鼻を押さえて息を吸うと、優しい花の香りがして驚きましたわ。
「これ、良い香りですわね。
香水とは違う、自然の花の香り····」
「グレインビル領で精油にも使う花で染色しておりますの。
花の香りには心を落ち着かせる効果があるとされておりますし、今日は他にも予備を数枚持っておりますから、拙い刺繍でお恥ずかしいけれど、貰っていただけると嬉しいですわ」
私の驚きにもその理由を説明するし、刺繍だってその道の職人並み。
それに····。
月とアリリアのモチーフ。
昔、初めてルナチェリアに会いに行った時に叔母様に教えていただいた事を思い出しました。
そう、あなたはちゃんと私の従妹を大事に想っていたのね。
「拙いなんて····ありがとう」
完敗ですわ。
まだ心から素直にはなれませんけれど、今更遅すぎるけれど、あなたは迷惑でしょうけれど····。
「素敵なデザインね。
自分で刺繍したの?」
お母様もあの時いたから、きっと気づきましたのね。
いえ、もしかしたら最初から知っていたのかしら。
そうでなければ、親友の実の娘の後釜に座っただけの娘ならば、きっと他家の令嬢のお茶会に付き合うなんてしなかったはずですもの。
クッキーだって依頼されたからと今朝まで匂いがしっかり残るほど自ら作ったりしませんわ。
それから2人がドレスのデザインを仲良くお話ししているのを聞きながら、落ち着く香りを吸い込んで涙が引いていくのを待ちましたの。
ドーン!!
ドーン!!
狩猟の開始の合図ですわね。
今ならレイヤード様に心からの謝罪が····いえ、きっともうそれすら許されない。
そうして再び気持ちは深く沈んでいきましたわ。
けれど辺境城に到着して会場に入る頃には令嬢としての顔を貼りつけましたのよ。
涙が完全に引いたのは場内の騎士や兵士の数が思ったより多くて圧倒されたのもありましたけれども。
確かアビニシア領はまだ隣国と小さな小競り合いがある領地でしたものね。
会場に入ると慣れたとはいえ、既にいらっしゃる笑顔の淑女達の独特な視線に耐えねばなりませんでした。
『社交界でのあなたの評判を知っていて?
身分はあっても中身のないつきまとい令嬢。
公爵家の寄生虫····』
今朝のお母様の言葉を思い出して足がすくみそうになるのを何とか堪えて歩みを進めましたわ。
席に案内されながら先に歩くあの子の視線を追うと三大筆頭公爵家と主催者の1つであるご淑女方が目に入りました。
優雅に座りつつも、あの子に値踏みするような視線を送っていて、私はどうしてか不快な気持ちになりましたわ。
席に着くとそう時間を空けず、アビニシア侯爵夫人とそのご令嬢方が挨拶の為にこちらに参ります。
けれどその時の私は再びお母様の言葉でうちひしがれておりましたわ。
「あなたが娘であればと思うわ」
お母様はギリギリ私にも聞こえる程度の声音であの子にそう告げました。
私は要らない娘だと意図するようで、肩が震えて俯いてしまいまいました。
お母様はこの子を養女にしたいのでしょうか?
しかし2人の話の流れから、違うと感じました。
まさか、お兄様に?
俯きながらも耳をそばだてましたわ。
「確かに、あなたを前にしたあなたの家族を見たのは初めてだけれど、愛情表現が非常識かつ重苦しかったわね」
「それほどの愛情を注がれれば、私もついつい同じだけ、いえ、それ以上の愛情をかえしたくもなりますわ。
受け止める方も大変でしてよ」
恐らくこの子もお母様の意図に気づいて断りましたのね。
他の3人の家族と同じ類いの愛情の示し方は私でもわかる程に非常識かつ暑苦しく感じましたもの。
レイヤード様にはそれを傾けて欲しかったけれど。
お母様やお父様なら耐えられても、お兄様だけは耐えられないでしょう。
良くも悪くも常識的ですもの。
「そうね、色々諦めるべき所は諦めるべきね」
少し苦笑するお母様ですが、その目はまだ諦めてはいませんわね。
「ねえ、クラウディア。
あなたにはこの子より、いえ、足下に及ぶ程度には育って欲しかったのよ?」
その言葉に思わず顔を上げてしまいます。
遅ればせながら自らの過ちに気づきましたわ。
ですからどうか、見捨てないで下さいまし。
けれどその優しく慈悲深いお顔とは裏腹に、艶のある唇が紡ぐ言葉は私の心を引き裂きました。
「つまらない顔をしてもこれ以上失望させるだけの期待もあなたにはしていないのよ、クラウディア?」
お母様は優しいけれど、高位貴族として生きると決めて生きてきた方。
もう娘だからと甘える事は許さない、いえ、私がフォンデアス公爵家に存在する事そのものを許さないと決められたのだと悟りましたわ。
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