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102.衝撃の陞爵理由~クラウディアside
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思わず会場を出た私は、しかしどこへ向かうべきか分からず辺りを見回してしまいましたわ。
場所が場所、王族の方々がいらっしゃる為に見張りの騎士や兵士が多くてどこに向かっても監視の目を感じます。
きっと不審人物のようでしたものね。
その間にも目からは涙が溢れそうになってしまい、あのハンカチで目元を押さえながら気持ちを落ち着かせようと長い回廊を歩きましたの。
優しい花の香りはいくらか気持ちを落ち着かせてくれましたわ。
結局どこに行ってもこの回廊には目があって1人にはなれない事にやっと気づきました。
少しずつ冷静になれたのでしょう。
仕方なく以前の狩猟祭で訪れた時の記憶を頼りに、少し離れた場所にある小休憩用に解放されていたはずの庭に向かおうとしたところで呼び止められました。
「どちらに行かれるのかしら?」
振り返ると瞳の色とよく似た青色のドレスに身を包むブルグル公爵令嬢、レイチェル様が立っておりました。
明るい金髪をハーフアップにして美しく結い上げ、キラキラと光る髪止めでまとめています。
年々美しく聡明になっていると評判で、古くから在り続ける公爵家のご令嬢です。
以前はよくお話しさせていただきましたけど、いつの頃からか距離を置かれてしまいました。
「こちらにいらして」
涙がほろりと溢れたのを見られたのでしょう。
ハンカチを握る手とは反対の手を掴んで元来た回廊を足早に戻り、化粧直し専用の小部屋へ連れていかれました。
ここにも警備が配置されておりましたが、軽く目配せされるだけで引き止められませんでした。
恐らく許されているのは公爵家の中でも限られた家だけでしょう。
レイチェル様は侍女を呼んで私の目元を冷やすよう指示され、慣れた手つきの侍女によって化粧直しも完了されました。
まだ少し目元が赤いのは仕方ありません。
「さあ、急ぎましょう。
時間的にもそろそろ王妃様がいらっしゃる頃でしてよ」
「あの、どうして私を····」
「頼まれたからでしてよ」
「頼まれた?
どなたにですの?」
私を気にするような者はいなかったはずですのに。
「グレインビル侯爵令嬢ですわ」
「····は?
嘘では····」
心底驚いて、思わず失言してしまいました。
「馬鹿にしてますの?
何故私が嘘など吐かねばならないのです」
「申し訳ございませんわ。
ですが、その、私は従妹につらく当たってしまいましたの。
それに何故あの子が恐れ多くもブルグル公爵家のご令嬢にそのような事をお願いできたのか····」
不愉快そうに顔をしかめられ、慌てて弁明しようとして、口ごもってしまいました。
だってあの子は侯爵家の令嬢で、引きこもりのはず。
「あなた、もしかして表向きの家格で判断されているの?」
「表向き?」
「呆れた。
あなたの家とグレインビル侯爵家とは親戚付き合いもあって懇意にしていると思っておりましたのに」
「あの、どういう····」
本当に言葉通り呆れたお顔をされても、私には意味がわかりません。
「貴族名鑑はご存知よね。
まともに読んだ事はありまして?」
「いえ、その····」
「ありませんのね。
公爵家の者ならばせめて目を通すくらいはなさいな。
まあ時間もありませんからよろしくてよ」
レイチェル様の心底呆れたお顔に自分の不勉強さを痛感します。
「少なくともグレインビル侯爵家は古くから公爵家として在り続ける我がブルグル公爵家と同列の家格ですの。
つまり、あなたの家格よりも上ですわ」
「····え」
言葉が出てきません。
そんな事、初耳····いえ、確かお兄様が····。
「グレインビル侯爵家は伯爵家の頃より幾度も陞爵や王の側近となる事を断り続けておりましたの。
それこそ無理にさせようとすれば一族もろとも他国へ移住しようとすらしたらしいですわ。
彼らを侯爵家へと陞爵させるのに成功したのはかつて敵国を退ける際に共闘し、当主同士が仲の良かったフォンデアス侯爵家を先に公爵家へ陞爵させた上でグレインビル家が陞爵を受け入れるよう仕向けたからでしてよ。
『フォンデアス家以上の働きを見せたグレインビル家が陞爵しないのであれば、フォンデアス家の功績も無いものと考え直すのが道理である』。
時の国王陛下はそう仰ってグレインビル家は仕方なく侯爵への陞爵に同意したのですわ。
これは三大公爵家も認めておりますし、暗黙の了解ですの。
この国そのものがグレインビル家を認め、手放したくないと知らしめている事と同義でしてよ。
けれど表向きの爵位しか見ない一部の貴族への牽制と、恐らくなかなか思い通りにならないグレインビル家への嫌味もかねていらっしゃるのでしょうね」
ふふふ、と口元を手で隠して笑われます。その仕草が上品で、見惚れてしまいそうでしたわ。
「王家のお膝元で発行される貴族名鑑には伯爵家の頃よりずっと、現在ならば15ある公爵家のちょうど中間、つまり我がブルグル公爵家が記載されているあたりにグレインビル侯爵家が記載されていますの。
グレインビル侯爵家は間違いなく貴族社会において我がブルグル公爵家と同列の家格となるのですわ」
私の涙はこの時完全に引いてしまいましたわ。
場所が場所、王族の方々がいらっしゃる為に見張りの騎士や兵士が多くてどこに向かっても監視の目を感じます。
きっと不審人物のようでしたものね。
その間にも目からは涙が溢れそうになってしまい、あのハンカチで目元を押さえながら気持ちを落ち着かせようと長い回廊を歩きましたの。
優しい花の香りはいくらか気持ちを落ち着かせてくれましたわ。
結局どこに行ってもこの回廊には目があって1人にはなれない事にやっと気づきました。
少しずつ冷静になれたのでしょう。
仕方なく以前の狩猟祭で訪れた時の記憶を頼りに、少し離れた場所にある小休憩用に解放されていたはずの庭に向かおうとしたところで呼び止められました。
「どちらに行かれるのかしら?」
振り返ると瞳の色とよく似た青色のドレスに身を包むブルグル公爵令嬢、レイチェル様が立っておりました。
明るい金髪をハーフアップにして美しく結い上げ、キラキラと光る髪止めでまとめています。
年々美しく聡明になっていると評判で、古くから在り続ける公爵家のご令嬢です。
以前はよくお話しさせていただきましたけど、いつの頃からか距離を置かれてしまいました。
「こちらにいらして」
涙がほろりと溢れたのを見られたのでしょう。
ハンカチを握る手とは反対の手を掴んで元来た回廊を足早に戻り、化粧直し専用の小部屋へ連れていかれました。
ここにも警備が配置されておりましたが、軽く目配せされるだけで引き止められませんでした。
恐らく許されているのは公爵家の中でも限られた家だけでしょう。
レイチェル様は侍女を呼んで私の目元を冷やすよう指示され、慣れた手つきの侍女によって化粧直しも完了されました。
まだ少し目元が赤いのは仕方ありません。
「さあ、急ぎましょう。
時間的にもそろそろ王妃様がいらっしゃる頃でしてよ」
「あの、どうして私を····」
「頼まれたからでしてよ」
「頼まれた?
どなたにですの?」
私を気にするような者はいなかったはずですのに。
「グレインビル侯爵令嬢ですわ」
「····は?
嘘では····」
心底驚いて、思わず失言してしまいました。
「馬鹿にしてますの?
何故私が嘘など吐かねばならないのです」
「申し訳ございませんわ。
ですが、その、私は従妹につらく当たってしまいましたの。
それに何故あの子が恐れ多くもブルグル公爵家のご令嬢にそのような事をお願いできたのか····」
不愉快そうに顔をしかめられ、慌てて弁明しようとして、口ごもってしまいました。
だってあの子は侯爵家の令嬢で、引きこもりのはず。
「あなた、もしかして表向きの家格で判断されているの?」
「表向き?」
「呆れた。
あなたの家とグレインビル侯爵家とは親戚付き合いもあって懇意にしていると思っておりましたのに」
「あの、どういう····」
本当に言葉通り呆れたお顔をされても、私には意味がわかりません。
「貴族名鑑はご存知よね。
まともに読んだ事はありまして?」
「いえ、その····」
「ありませんのね。
公爵家の者ならばせめて目を通すくらいはなさいな。
まあ時間もありませんからよろしくてよ」
レイチェル様の心底呆れたお顔に自分の不勉強さを痛感します。
「少なくともグレインビル侯爵家は古くから公爵家として在り続ける我がブルグル公爵家と同列の家格ですの。
つまり、あなたの家格よりも上ですわ」
「····え」
言葉が出てきません。
そんな事、初耳····いえ、確かお兄様が····。
「グレインビル侯爵家は伯爵家の頃より幾度も陞爵や王の側近となる事を断り続けておりましたの。
それこそ無理にさせようとすれば一族もろとも他国へ移住しようとすらしたらしいですわ。
彼らを侯爵家へと陞爵させるのに成功したのはかつて敵国を退ける際に共闘し、当主同士が仲の良かったフォンデアス侯爵家を先に公爵家へ陞爵させた上でグレインビル家が陞爵を受け入れるよう仕向けたからでしてよ。
『フォンデアス家以上の働きを見せたグレインビル家が陞爵しないのであれば、フォンデアス家の功績も無いものと考え直すのが道理である』。
時の国王陛下はそう仰ってグレインビル家は仕方なく侯爵への陞爵に同意したのですわ。
これは三大公爵家も認めておりますし、暗黙の了解ですの。
この国そのものがグレインビル家を認め、手放したくないと知らしめている事と同義でしてよ。
けれど表向きの爵位しか見ない一部の貴族への牽制と、恐らくなかなか思い通りにならないグレインビル家への嫌味もかねていらっしゃるのでしょうね」
ふふふ、と口元を手で隠して笑われます。その仕草が上品で、見惚れてしまいそうでしたわ。
「王家のお膝元で発行される貴族名鑑には伯爵家の頃よりずっと、現在ならば15ある公爵家のちょうど中間、つまり我がブルグル公爵家が記載されているあたりにグレインビル侯爵家が記載されていますの。
グレインビル侯爵家は間違いなく貴族社会において我がブルグル公爵家と同列の家格となるのですわ」
私の涙はこの時完全に引いてしまいましたわ。
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