113 / 491
5
112.ザ·ラノベナイト
しおりを挟む
「シル様、後ろ!」
嫌な予感に叫んでみたけど時すでに遅し。
緑光が真っ直ぐにシル様に向かう。
僕は王子の背中に庇われているし、蔓に対処しようと繰り出される王子の火魔法やシル様の風魔法で声が届かない。
しかもあのひょろ長さん、殺気がないから質が悪い。
好奇心だけは滅茶苦茶ありそうだけど。
主に僕に!
さっきからチラチラ目が合うんだけど?!
シル様が何かの気配を感じ取ったのかバッと振り向くけど、緑光を真正面から受けてしまった。
「くっ?!」
横に飛び避けるけど、すでに光は消えていた。
「シル、平気か?!」
「問題あり····何、だ?!」
驚いたように呟くと、脱力したように片膝と片手を地面につく。
剣を地面に刺して崩れそうな体をかろうじて倒れないように支える。
懐中時計は光が止んでから針を物凄い勢いで逆回転しているけど、壊れたんじゃないよね····。
「シル?!」
「ふふふ、始まりましたね」
シル様の姿が緑光を放って段々と小さくなってる?
ひょろ長の愉快そうな声とは対称的に、シル様の近くの蔓が怯えるように避ける。
他の蔓も動きを止めた。
やっぱりこの豆は興味深いな。
「ルド様····」
僕は再び怯えたようにしてルド様の背中にへばりつき、そっと精霊眼を発動させて誰にも見えないように注意してシル様の体を観察する。
あ、これ駄目なやつだ。
シル様の体内でシル様の魔力と緑の魔力っぽいのが干渉して打ち消してを繰り返しながら徐々に緑が増えている。
緑の何かが小さな魔方陣を体内で形成しようとしていた。
魔法陣が刻む言葉と表す事象に驚きつつも、すぐに眼を閉じて蔓の間を走り抜ける。
「アリー?!」
王子の制止は無視!
蔓は僕に反応しなくなっている。
僕はケープに付けていた赤いピンブローチをむしり取る。
はずみで針先が皮膚を抉って血がついたけど、そのままシル様に押し付けた。
バチィッ!!
緑と赤の光が押し付けたピンブローチを基点に異なる魔方陣を描いて打ち消す。
赤い石がボロボロと砂塵のように砕けて消えた。
「このガキ!」
うわ、びっくりした!!
いつの間に近くに来てたの?!
とんでもなく怒気を纏った三角耳が石無しになったピンブローチを持つ僕の右手を捻りあげ、反対の手で頬を打った。
捻りあげられたはずみでブローチはどこかに飛んでっちゃった。
三角耳は憎々しげな顔を僕に向けながら空いた手で抜刀して未だに脱力から立ち上がれないシル様に視線を移すけど、その刃が振るわれる事は無かった。
「アリーを放せ!」
王子の放った高魔力を圧縮した幾つかの水刃が三角耳に真っ直ぐ放たれた。
怒りで反応が遅れた事と、腐っても高い魔力を有する王子の手加減無しの魔力を圧縮した水の刃に本来なら死傷していたはず。
けれど彼女の後ろに走り寄ったひょろ長が張った防壁が弾く。
ただし刃の攻撃力と完全に相殺されて防壁も消え、弾き損ねた1つの刃が彼女の頬を掠めていた。
そして水刃のすぐ後を突進してきたルド様がいつの間にか抜刀して三角耳に振り下ろす。
「この、糞ガキ····」
ドスの利いた声を出しながら一振り目をギリギリ肩の皮1枚の犠牲でかわし、三角耳は掴んでいた僕を後ろのひょろ長に投げ捨てると抜き身の剣でルド様の下からの二振り目を受ける。
「甘いんだよ、坊っちゃんが!」
叫んで剣を横に弾くとルド様に回し蹴りをお見舞いして引き離し、その勢いを使って元々狙っていたシル様にその刃を振り下ろした。
けれど少し前に聞いたような金属音が響き、三角耳の剣が弾き飛ぶと今度は三角耳より少し背が高い程度まで背が縮んだシル様が剣を振り下ろし、彼女の肩をザックリと切り裂く。
でも、浅いな。
「「ちっ」」
双方から舌打ちが聞こえた。
顔を上げて剣を構えたシル様は····背だけじゃなかった。
眉間の皺と目の鋭さがいくらか薄くなり、顔つきも少年のように若返っていた。
あの魔法陣が指し示した通りに。
ザ·ラノベナイト!
狼のお耳と尻尾少年、素敵ですね!
ちょっと軍服に着られてるかんじが初々しくて素敵可愛いですね!
なんて内心うはうはしてる僕の事は誰も気づかな····あ、ルド様が尻餅ついたままこっちを残念な何か見るみたいな目で見てた····僕はそっと視線を外す。
三角耳は肩を押さえて俊敏な動きでひょろ長の後ろに飛びすさる。
「ああ、可哀想に。
動かないで。
今治して差し上げますから」
とっても労りのある言葉をひょろ長さんは慈悲深い目で話す。
が、ひょろ長さんは後ろの彼女ではなく何故だか僕に熱視線を絶賛投げかけ中だ。
場違いなほどの上機嫌な声でひょろ長さんが治癒魔法を僕にかける。
「おい」
後ろの彼女がイラッとしつつも声をかけてますよ?
「おや?
効きが悪いですね?」
「魔法が効きにくい体質だから、かけてくれるなら上級のじゃないと治らないの」
「おい!」
後ろの彼女はそこそこの怒りを含ませたドスの利いた声で呼び掛けてますよ?
「なるほど、実に興味深い」
嬉々として上級の治癒魔法をかけると僕は痛みから解放された。
「おい、こら!!」
後ろの彼女はさらに大きな声を張り上げましたよ?
「えっと、ありがとうございました?」
「いえいえ、貴女にはこれから色々と実験に協力してもらいたいですし、先程の事も是非ともご説明····」
「おい、いい加減にしなよ!!」
ずっと僕達に無視され続けた三角耳が肩から血を流しながら怒りに身を任せてとうとう怒鳴り散らした。
嫌な予感に叫んでみたけど時すでに遅し。
緑光が真っ直ぐにシル様に向かう。
僕は王子の背中に庇われているし、蔓に対処しようと繰り出される王子の火魔法やシル様の風魔法で声が届かない。
しかもあのひょろ長さん、殺気がないから質が悪い。
好奇心だけは滅茶苦茶ありそうだけど。
主に僕に!
さっきからチラチラ目が合うんだけど?!
シル様が何かの気配を感じ取ったのかバッと振り向くけど、緑光を真正面から受けてしまった。
「くっ?!」
横に飛び避けるけど、すでに光は消えていた。
「シル、平気か?!」
「問題あり····何、だ?!」
驚いたように呟くと、脱力したように片膝と片手を地面につく。
剣を地面に刺して崩れそうな体をかろうじて倒れないように支える。
懐中時計は光が止んでから針を物凄い勢いで逆回転しているけど、壊れたんじゃないよね····。
「シル?!」
「ふふふ、始まりましたね」
シル様の姿が緑光を放って段々と小さくなってる?
ひょろ長の愉快そうな声とは対称的に、シル様の近くの蔓が怯えるように避ける。
他の蔓も動きを止めた。
やっぱりこの豆は興味深いな。
「ルド様····」
僕は再び怯えたようにしてルド様の背中にへばりつき、そっと精霊眼を発動させて誰にも見えないように注意してシル様の体を観察する。
あ、これ駄目なやつだ。
シル様の体内でシル様の魔力と緑の魔力っぽいのが干渉して打ち消してを繰り返しながら徐々に緑が増えている。
緑の何かが小さな魔方陣を体内で形成しようとしていた。
魔法陣が刻む言葉と表す事象に驚きつつも、すぐに眼を閉じて蔓の間を走り抜ける。
「アリー?!」
王子の制止は無視!
蔓は僕に反応しなくなっている。
僕はケープに付けていた赤いピンブローチをむしり取る。
はずみで針先が皮膚を抉って血がついたけど、そのままシル様に押し付けた。
バチィッ!!
緑と赤の光が押し付けたピンブローチを基点に異なる魔方陣を描いて打ち消す。
赤い石がボロボロと砂塵のように砕けて消えた。
「このガキ!」
うわ、びっくりした!!
いつの間に近くに来てたの?!
とんでもなく怒気を纏った三角耳が石無しになったピンブローチを持つ僕の右手を捻りあげ、反対の手で頬を打った。
捻りあげられたはずみでブローチはどこかに飛んでっちゃった。
三角耳は憎々しげな顔を僕に向けながら空いた手で抜刀して未だに脱力から立ち上がれないシル様に視線を移すけど、その刃が振るわれる事は無かった。
「アリーを放せ!」
王子の放った高魔力を圧縮した幾つかの水刃が三角耳に真っ直ぐ放たれた。
怒りで反応が遅れた事と、腐っても高い魔力を有する王子の手加減無しの魔力を圧縮した水の刃に本来なら死傷していたはず。
けれど彼女の後ろに走り寄ったひょろ長が張った防壁が弾く。
ただし刃の攻撃力と完全に相殺されて防壁も消え、弾き損ねた1つの刃が彼女の頬を掠めていた。
そして水刃のすぐ後を突進してきたルド様がいつの間にか抜刀して三角耳に振り下ろす。
「この、糞ガキ····」
ドスの利いた声を出しながら一振り目をギリギリ肩の皮1枚の犠牲でかわし、三角耳は掴んでいた僕を後ろのひょろ長に投げ捨てると抜き身の剣でルド様の下からの二振り目を受ける。
「甘いんだよ、坊っちゃんが!」
叫んで剣を横に弾くとルド様に回し蹴りをお見舞いして引き離し、その勢いを使って元々狙っていたシル様にその刃を振り下ろした。
けれど少し前に聞いたような金属音が響き、三角耳の剣が弾き飛ぶと今度は三角耳より少し背が高い程度まで背が縮んだシル様が剣を振り下ろし、彼女の肩をザックリと切り裂く。
でも、浅いな。
「「ちっ」」
双方から舌打ちが聞こえた。
顔を上げて剣を構えたシル様は····背だけじゃなかった。
眉間の皺と目の鋭さがいくらか薄くなり、顔つきも少年のように若返っていた。
あの魔法陣が指し示した通りに。
ザ·ラノベナイト!
狼のお耳と尻尾少年、素敵ですね!
ちょっと軍服に着られてるかんじが初々しくて素敵可愛いですね!
なんて内心うはうはしてる僕の事は誰も気づかな····あ、ルド様が尻餅ついたままこっちを残念な何か見るみたいな目で見てた····僕はそっと視線を外す。
三角耳は肩を押さえて俊敏な動きでひょろ長の後ろに飛びすさる。
「ああ、可哀想に。
動かないで。
今治して差し上げますから」
とっても労りのある言葉をひょろ長さんは慈悲深い目で話す。
が、ひょろ長さんは後ろの彼女ではなく何故だか僕に熱視線を絶賛投げかけ中だ。
場違いなほどの上機嫌な声でひょろ長さんが治癒魔法を僕にかける。
「おい」
後ろの彼女がイラッとしつつも声をかけてますよ?
「おや?
効きが悪いですね?」
「魔法が効きにくい体質だから、かけてくれるなら上級のじゃないと治らないの」
「おい!」
後ろの彼女はそこそこの怒りを含ませたドスの利いた声で呼び掛けてますよ?
「なるほど、実に興味深い」
嬉々として上級の治癒魔法をかけると僕は痛みから解放された。
「おい、こら!!」
後ろの彼女はさらに大きな声を張り上げましたよ?
「えっと、ありがとうございました?」
「いえいえ、貴女にはこれから色々と実験に協力してもらいたいですし、先程の事も是非ともご説明····」
「おい、いい加減にしなよ!!」
ずっと僕達に無視され続けた三角耳が肩から血を流しながら怒りに身を任せてとうとう怒鳴り散らした。
16
あなたにおすすめの小説
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~
季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」
建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。
しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった!
(激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!)
理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造!
隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。
辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。
さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。
「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」
冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!?
現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる!
爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる