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115.誓い
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「シル!
しっかりしろ!
くそっ、この枷さえ外れたら!」
僕の足下あたりでガツガツと枷を岩に打ち付ける音がする。
「おう、じ」
「気づいたか?!」
「もうし、わけ····」
シル様の声が随分とか細い。
そろそろまずいね。
「シル····すまない。
俺がもっと····」
「何を····おっしゃ、る。
随分、ご立派、に····どうか····生きて····ご、ぶじ····」
「シル!
そんな····頼む、シル!
死ぬな、シル!!」
····ちょっと、うるさいよ、そこ。
まだラディアスが完全に立ち去りきってないんだから黙ってて欲しい。
あとシル様の体揺すってない?
何もしないで欲しいんだけど。
お涙ちょうだいドラマを展開してるとこ悪いんだけど、王子なんだからもっとドンと構えてよ····あ、完全に気配が消えたね。
よし。
「はい、そこまでです。
とにかく止血しましょう。
まだきっと助かります」
僕はむくりと上体を起こすとケープを脱ぎ、巻きスカートのリボンをほどくとズリズリと座ってルド様の方に後退りした。
「え、ア、アリー?」
首だけ振り返って後ろのルド様を見れば、突然てきぱきと動き出した僕に目を白黒させている。
シル様もルド様も上がシャツ1枚になってるね。
上着は色々隠しポケットもあるから取られたのかな。
にしても王子なのに役立たずだね。
僕なんて絶賛眩暈中なのを無理してるのに。
止血くらいしときなよ。
いや、王子だからこれなのかな?
「ルド様、私の腰の縫い目をちぎって巻きスカートと分離して下さい」
少年2人は重そうな手枷をしてる。
魔封じだけど魔法使えないだけだし、年頃の少年なんだから縫いつけた糸ブチッと引きちぎるくらいできるでしょ。
「早くして下さい、王子」
「あ、ああ、すまない」
もう、いつまでも呆けてないでよね。
自分の立場思い出してしゃんとしてよ。
こうして僕は気を失ったシル様にてきぱきと止血していったのだけど、対面に座ったかつて見た事ないほど深刻そうな顔をしたルド様はそれを呆然と見てるだけ。
時々僕に言われて布引きちぎるだけ。
····王子、邪魔····まあ、無いよりマシな猫の手かな。
「なぜ患部以外も縛るんだ?」
切られたのと反対側の太ももや二の腕を縛るのが不思議だったみたい。
僕はそれよりも体の時間が巻き戻ったのに傷はそのままの方が不思議だよ。
「腹部の傷口からの出血を抑える為です」
もちろん腹部の傷口も直接圧迫して止血を試みる。
背中までは貫通してないみたいだけど、臓器は幾つか損傷したみたい。
ルド様はそれだけの説明ではやっぱり理解出来ないみたいだけど、事態が切迫してるのは理解してるのか余計な質問はしてこない。
「····すまない、アリー」
1番深いお腹の傷を直接押さえて止血してたら、ぽつりと洩れ聞こえた。
うん、今のところ王子は邪魔なだけだものね····。
それに僕からすれば今回のは完全に巻き込み事故で、しかも空間に挟まれて死にかけてる。
心も体も現在進行形でストレスマックスだからどうにかなりそう。
そして愛想笑いをしつつ、僕はずっとこう思ってる。
(どうしてこうなったー!!!!)
本当に叫んでストレス解消したいよ。
「····アリーは凄いな。
俺よりずっと幼いはずなのに、ずっと正しく行動できている。
本来ならアリーにも気を配らないといけないのに、目先のシルが死にかけてるとそれでいっぱいいっぱいだ。
具合は?
動いても大丈夫なのか?」
そりゃ、前世40才オーバー、今世すでに300才オーバー、合わせて四捨五入したら400才だもんね。
まだ15才のルド様なんて赤ん坊みたいなもんだよ。
「私の事はお気になさらないで下さい。
この通り、今は動けております」
「····そうか。
私達王族に巻き込まれた上に、肝心の私が役立たずで本当にすまない。
しかも俺はあの3人を知っているし、近衛や王宮魔術師として守られた事だってある。
なのに····何を見ていたんだろうか」
自嘲気味に自分を責めてるところ悪いんだけど、本当にうじうじしてるのが側にいるって邪魔でしかないんだから自重してよね。
押さえてるスカートが血に染まっていく。
駄目か。
「後悔は全て終わった後からでもできます。
それに彼らが任務で王子を守っていた時、ルド様は最長でも10才。
10才の子供に、仮にもそれなりの立場に登り詰めた大人の何が気づけるんです?
しかもその頃には既に彼らは今日のこの日の為に何かしら画策し、動いていたはずですから王族と直接接する際には細心の注意をしていたでしょうね」
「しかし····」
僕はそっと手を離して真っ直ぐ金の目を見つめる。
「いつ後悔しても過去は変えられませんが、今動く事で未来をどうにかする事ならできる可能性はございます。
ひとまずルド様が今すべき事は、これから私がする事を見なかった事にすると何も聞かずに誓っていただく事だけですが、誓って下さいますか?」
はっとしたようにルド様も僕の目を真っ直ぐ見つめ返した。
僕の真意を見定めるように。
「ルドルフ=ウォース=アドライドはこれからアリアチェリーナ=グレインビルがする事を秘密にすると誓う。
シルを助けてくれ」
やがてルド様は静かに誓った。
「必ず助けると誓います」
静かに頷いて僕も誓った。
しっかりしろ!
くそっ、この枷さえ外れたら!」
僕の足下あたりでガツガツと枷を岩に打ち付ける音がする。
「おう、じ」
「気づいたか?!」
「もうし、わけ····」
シル様の声が随分とか細い。
そろそろまずいね。
「シル····すまない。
俺がもっと····」
「何を····おっしゃ、る。
随分、ご立派、に····どうか····生きて····ご、ぶじ····」
「シル!
そんな····頼む、シル!
死ぬな、シル!!」
····ちょっと、うるさいよ、そこ。
まだラディアスが完全に立ち去りきってないんだから黙ってて欲しい。
あとシル様の体揺すってない?
何もしないで欲しいんだけど。
お涙ちょうだいドラマを展開してるとこ悪いんだけど、王子なんだからもっとドンと構えてよ····あ、完全に気配が消えたね。
よし。
「はい、そこまでです。
とにかく止血しましょう。
まだきっと助かります」
僕はむくりと上体を起こすとケープを脱ぎ、巻きスカートのリボンをほどくとズリズリと座ってルド様の方に後退りした。
「え、ア、アリー?」
首だけ振り返って後ろのルド様を見れば、突然てきぱきと動き出した僕に目を白黒させている。
シル様もルド様も上がシャツ1枚になってるね。
上着は色々隠しポケットもあるから取られたのかな。
にしても王子なのに役立たずだね。
僕なんて絶賛眩暈中なのを無理してるのに。
止血くらいしときなよ。
いや、王子だからこれなのかな?
「ルド様、私の腰の縫い目をちぎって巻きスカートと分離して下さい」
少年2人は重そうな手枷をしてる。
魔封じだけど魔法使えないだけだし、年頃の少年なんだから縫いつけた糸ブチッと引きちぎるくらいできるでしょ。
「早くして下さい、王子」
「あ、ああ、すまない」
もう、いつまでも呆けてないでよね。
自分の立場思い出してしゃんとしてよ。
こうして僕は気を失ったシル様にてきぱきと止血していったのだけど、対面に座ったかつて見た事ないほど深刻そうな顔をしたルド様はそれを呆然と見てるだけ。
時々僕に言われて布引きちぎるだけ。
····王子、邪魔····まあ、無いよりマシな猫の手かな。
「なぜ患部以外も縛るんだ?」
切られたのと反対側の太ももや二の腕を縛るのが不思議だったみたい。
僕はそれよりも体の時間が巻き戻ったのに傷はそのままの方が不思議だよ。
「腹部の傷口からの出血を抑える為です」
もちろん腹部の傷口も直接圧迫して止血を試みる。
背中までは貫通してないみたいだけど、臓器は幾つか損傷したみたい。
ルド様はそれだけの説明ではやっぱり理解出来ないみたいだけど、事態が切迫してるのは理解してるのか余計な質問はしてこない。
「····すまない、アリー」
1番深いお腹の傷を直接押さえて止血してたら、ぽつりと洩れ聞こえた。
うん、今のところ王子は邪魔なだけだものね····。
それに僕からすれば今回のは完全に巻き込み事故で、しかも空間に挟まれて死にかけてる。
心も体も現在進行形でストレスマックスだからどうにかなりそう。
そして愛想笑いをしつつ、僕はずっとこう思ってる。
(どうしてこうなったー!!!!)
本当に叫んでストレス解消したいよ。
「····アリーは凄いな。
俺よりずっと幼いはずなのに、ずっと正しく行動できている。
本来ならアリーにも気を配らないといけないのに、目先のシルが死にかけてるとそれでいっぱいいっぱいだ。
具合は?
動いても大丈夫なのか?」
そりゃ、前世40才オーバー、今世すでに300才オーバー、合わせて四捨五入したら400才だもんね。
まだ15才のルド様なんて赤ん坊みたいなもんだよ。
「私の事はお気になさらないで下さい。
この通り、今は動けております」
「····そうか。
私達王族に巻き込まれた上に、肝心の私が役立たずで本当にすまない。
しかも俺はあの3人を知っているし、近衛や王宮魔術師として守られた事だってある。
なのに····何を見ていたんだろうか」
自嘲気味に自分を責めてるところ悪いんだけど、本当にうじうじしてるのが側にいるって邪魔でしかないんだから自重してよね。
押さえてるスカートが血に染まっていく。
駄目か。
「後悔は全て終わった後からでもできます。
それに彼らが任務で王子を守っていた時、ルド様は最長でも10才。
10才の子供に、仮にもそれなりの立場に登り詰めた大人の何が気づけるんです?
しかもその頃には既に彼らは今日のこの日の為に何かしら画策し、動いていたはずですから王族と直接接する際には細心の注意をしていたでしょうね」
「しかし····」
僕はそっと手を離して真っ直ぐ金の目を見つめる。
「いつ後悔しても過去は変えられませんが、今動く事で未来をどうにかする事ならできる可能性はございます。
ひとまずルド様が今すべき事は、これから私がする事を見なかった事にすると何も聞かずに誓っていただく事だけですが、誓って下さいますか?」
はっとしたようにルド様も僕の目を真っ直ぐ見つめ返した。
僕の真意を見定めるように。
「ルドルフ=ウォース=アドライドはこれからアリアチェリーナ=グレインビルがする事を秘密にすると誓う。
シルを助けてくれ」
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「必ず助けると誓います」
静かに頷いて僕も誓った。
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