秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

文字の大きさ
119 / 491

118.狩り~sideヘルト2

しおりを挟む
 ガガーン!!!!

 なかなかのけたたましい音と共に特大の稲光が雄の頭に直撃した。
白目を剥いて巨体が倒れこむ。

 氷竜には雷系の魔法攻撃が利きやすい。
だが雷系の魔法は使い手がほとんどいない。
発動させるのが難しいのだ。
中でも今使った上位魔法を使える者はほぼいない。
さすが私と愛しの妻ミレーネの息子だ。

 番であった雄を失い、雌が半狂乱でレイヤードに氷の砲口をぶつける。
もちろん息子は雷球をぶつけて全て粉砕してかわす。

 余波と暴れる体躯が起こす物理的な破壊行動で岩や氷や木々がこちらにも飛んで来るが、もちろん自分の周りにはちゃんと障壁を張って防ぐ。

「ぎゃー!
何か色々飛んでくるー!」
「父上、土壁の硬度上げてー!」

 全く騒がしい親子だ。
悪友も叫ぶ前にお得意の土魔法で壁を強化すれば良いものを。
甥は父親のあいつが作った壁の影に隠れつつ、炎幕を作って魔獣を寄せつけないようにする。

 ····攻撃しないのか?
今日は狩りだよな?

 ドーン!!
 ドーン!!
 ドーン!!
 ドーン!!

 そうしている間に狩猟祭の終了の合図が聞こえたが、あの4人は聞こえていないようだ。
いや、王太子だけは僅かに反応したか。

「こんな時にリューイはどこに行ったのだー!」
「あはは、相変わらず君の護衛はマイペースだよねー」

 そうだな。
お前の護衛はそこで氷熊を狩ってるぞ。
下位とはいえ、Aランクを3匹同時に相手にしても問題無さそうだな。
魔法ではなく今回は剣で勝負したいらしい。
一応そっちをチラ見してたが、お前の事は放置して遊ぶようだ。

 王太子は障壁を張りつつ、魔獣に火刃、風刃、水刃を使って切り刻む。
複数属性を1度に、それもそこそこに魔力を圧縮して使うとはなかなかやるな。
恐らく何かを試しているんだろう。
実戦の場というのはなかなか得られないし、彼の立場では更に難しい。
やるなら今だろうな。

 クソ王子は土魔法で尖らせた岩を一気に造り上げて魔獣の下から槍のように突き上げ、体を地面に縫い止める。
素材が傷つく考えなしの戦い方だ。
うちの息子を見習え。

 不意に彼の左手の小指が光る。
クソ王子を助けるのかと思えば、黒い靄がこちらへ来た。

『ねえ、アリーとは後で会える?』

 イラッ。

「私の可愛い娘に何用かな?」

 靄が怯えたように震えたが、コイツはあの日私の可愛い娘に添い寝した性別男の精霊だ。
しかも私の可愛い娘に向ける視線が気に入らない。

『その、会いたいなって····』
「断る」
『そんな····』

 何やら傷ついたような気配を纏うが、知らん。
あの日人生で初めて私の天使が嫌いになると私に言ったのだ。
思春期で父親を嫌う女の子はいると聞いた事はあるが、それもこれもあの胸だけ女とコイツの加護のせいとなれば話が変わる。

 そう思っている間にも、息子は雌竜を追い込んでいく。
が、とどめの雷擊を放とうとして止めた。
雷幕を作って取り囲んでいき、わざと一部だけ隙間を空ける。

 当然雌はそこから出て再び湖の方向へと踵を返した。

「どうやら子供がいたみたいなんだ」

 少し離れた所にいる私に風を使って声が届く。

 なるほど、耳を澄ませば微かにキューキューと親を呼ぶ子竜の鳴き声が聞こえる。
魔獣は狩り尽くすのも良くない。
特に上位種を好きに狩ると生態系が崩れて下位種の数が膨れ上がって、数の暴力とばかりに無駄で面倒な魔獣集団暴走スタンピードが起こりかねない。

「そうか。
じゃあバックにしまったら行こうか」

 そう言って狩った獲物を片付けていく。
時々邪魔する魔獣は水球に閉じ込めて窒息させる。

「待って待ってー!」
「叔父上、レイヤード、助けてー!」

 終わって帰ろうとすれば、魔土竜にガリガリ土壁を噛られ中の騒がしい親子が一部だけ小さい穴を開けて中から目だけ窺わせて叫ぶ。
どうやら完全に自分達を土壁で覆って攻撃を防いでいたらしい。
見た目が砂山に埋まってるみたいだ。

「レイヤード」
「えー」

 不服そうにしながらも威力をほどよく抑えた雷擊を魔土竜に当てて気絶させた。

「「ありがとー!!」」

 砂山が崩れて中から親子が出てくるのを見て王太子が声をかける。

「あれ、もう山を下りるのかな?」
「終わりの合図はとっくに鳴ってますよ」
「そうだった?」

 息子の言葉に白々しく驚く。

「ゼストウェル王子、リューイ殿、下りるよー!」
「いや、まだ魔獣がー!」

 魔獣というのは本能に素直だ。
特に下位種になればなるほどに。
つまり私達ではなくあのクソ王子に群がろうとしている。

 仕方ない。

 私は自分を起点に広範囲に魔方陣を出現させる。
その中から人の魔力と高位の魔獣だけを弾いて爆裂させた。

「····えぇ····」

 クソ王子は魔獣達の血肉を被ってただ呆然と呟いていた。

 これで少しばかり溜飲を下げてやろう。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ファンタジー成り上がり譚。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

暗殺者の少女、四大精霊に懐かれる。〜異世界に渡ったので、流浪の旅人になります〜

赤海 梓
ファンタジー
「…ここは、どこ?」  …私、そうだ。そういえば… 「貴女、ここで何をしておる」 「わっ」  シュバッ 「…!?」  しまった、つい癖で回り込んで首に手刀を当ててしまった。 「あっ、ごめんなさい、敵意は無くて…その…」  急いで手を離す。  私が手刀をかけた相手は老人で、人…であはるが、人じゃない…? 「ふははは! よかろう、気に入ったぞ!」 「…え?」  これは暗殺者として頂点を飾る暗殺者が転生し、四大精霊に好かれ、冒険者として日銭を稼ぎ、時に人を守り、時に殺め、時に世界をも救う…。そんな物語である…!

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

処理中です...