秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

文字の大きさ
179 / 491

178.取り立てへの意気込み

しおりを挟む
「なあ、これ····」
「この、香りは····」

 香りに慣れ親しんだカンガルーさんと飲んだ事のある白虎さんがぎくりと顔を見合わせる。

「香りは香ばしい良い香りなんだよねえ」
「ああ、確かに」

 味を知るカイヤさんと隣国の王子がうんうんと頷く。

「兄上、旨そうな香りだな!」
「味は眠気を撃退してくれそうだけどね」

 興味津々の弟に、味を知るこの国の王太子。

「へー、変わった淹れ方だね。
香りもいいし、楽しみだ」
「そういや、煮出してねえな?」

 キラキラした目でニーアの手元を見つめる従兄様に、見慣れない光景に不思議顔のカンガルーさん。

 そうこうしている間に給仕係によってテーブルが片づけられ、試食スタイルから試飲スタイルへとチェンジする。

 定番の蜂蜜、お砂糖、ミルクはもちろんだけど、3種のシロップ達も小さな器で義兄様達以外の各自それぞれの前に並ぶ。
シロップは黒とピンクのカハイ&スラのシロップの他にも黒いシロップがもう1つ。

 ニーアが用意したところで給仕係は小さいカップを合計6つずつ、それぞれの前に並べた。
色は黒4、赤茶色2だよ。
もちろん黒は僕によって既にわが家の定番の飲み物となってしまったから、義兄様の前には普通サイズの黒カップが1つだけだ。

「今回は試飲なので、皆さんの前には小さなカップでお出ししています。
黒いのはカハイ、赤茶はただの紅茶です。
南国ではスラの種を黒に近い焦げ茶色になるまで炒って細かく挽いて煮出して飲むのが一般的ですが、それだとかなりの苦みと雑味が強くなります。
今回は焦げ茶色に炒ってから少し荒めに挽いた物を使っています。
淹れ方は先ほどご覧いただいたように布を使って濾しました。
まずはカハイをそのまま召し上がってみてください」

 僕の言葉に味を知る人達は少し恐々と、知らない人達はわくわくしながら一口飲む。

「····苦いな」
「確かに苦いけど、慣れると癖になりそうな奥深い味わいだね」

 味を知らないルド様は初めてのコーヒーに驚いているけど、従兄様はそのうちはまってくれそうな気配を感じる。
僕も最初は将来コーヒーをブラックで飲む日が訪れるなんて予想しなかったくらいミルクと砂糖をたっぷり入れてたから、ルド様の反応は予測済みだよ。

「どうなってんだ、こりゃ?!」
「これなら普通に飲める範疇だよ、ヨンニョルさん!」
「淹れ方1つでここまで味が変わるもんなんだねえ」

 商会長さん達は口々に驚く。
特にカハイをよく知る2人のケモ耳がピコピコ揺れていて····いい!

「アリー」
「今は我慢だぞ、俺の天使」
「····も、もちろん····」

 ブラックコーヒーを優雅に飲んで釘を刺す義兄様達も素敵だね!
思わず声が上ずっちゃったよ。

「これ、ほどよく苦みがあって癖になるな」
(僕は甘い方がいい)
「私はあのカハイゼリーのようにもう少し甘みがある方が好きかな。
でもケーキを食べた後ならこちらの方が口の中がさっぱりしそうだね」

 意外にもゼスト様はブラック派かな。
闇の精霊さんはやっぱり甘い方が好きなんだね。
ギディ様はやっぱり甘党なのかな?

「元のカハイのお味はわかったと思いますので、お手元の物を好きに使って試飲してみてください。
黒いシロップはカハイシロップとチョコレートシロップです。
少し茶色がかっているのがチョコレートシロップです。
紅茶を用意したのはカハイがお口に合わない場合と、スラシロップは是非そちらにも試していただきたかったので2つ用意しておきました」
「アリーちゃん、カハイシロップは紅茶で試しちゃ駄目かい?」

 カイヤさん、よく聞いてくれました!

「苦味の相乗効果を体験できると思いますが、最後の方に少し試す事をおすすめします。
チョコレートシロップは少し意見が別れるお味になると思います」
「なるほど」

 カイヤさんは僕の意見を聞いてからスラシロップを最初は少し、次にもう少し入れて試飲し始める。
それを見て他の人達も思い思いに試していった。

 僕は僕の説明が全て終えたベストタイミングでそっと出されたブラックコーヒーを一息つきながら味わう。
もちろん僕に給仕してくれたのはできる専属侍女のニーアだよ。

 不意に僕の頭にそっと優しく手が置かれた。

「疲れたか?」

 和気あいあいと試飲している人達を横目に、バルトス義兄様が顔をのぞきこんできた。
バルトス義兄様の手は優しくて温かいね。

「試食品はもう全部出したし、いつでも休んでいいんだよ」

 レイヤード義兄様が僕の首筋に触れる。
熱と脈を同時に計られてるよね。

 2人とも、とっても気遣わしげな様子にほんの少しだけ胸が痛む。
もちろん、ほとんど痛まないよ。
だって····。

「義兄様達、この後の私の癒しのもふもふタイムは邪魔しちゃ嫌だからね」
「くっ、俺の天使は勘が良すぎる!」
「····後で僕も生やすから、覚えておいてよね」

 ふふふ、義兄様達はもちろん大好きだけど、目の前に餌がぶら下がってるのに引き下がる僕じゃない!

 ロイヤル達の後ろに控える黒と銀灰色のケモ耳、ケモ尻尾!

 あ、アン様が僕の視線に気づいてウインクしてくれた。
シル様も尻尾を軽く揺らしてくれたね。

 そして仲良く並ぶ白色と砂色のケモ耳、ケモ尻尾!

 ん?
ヨンニョルさんがビクッとしてファイティングポーズ取った?
そうか!
ふふふ、僕のもふりに受けて立つって事だね!
ウィンスさんもこっちを見て微笑んでくれてる!
ハの字眉なのも素敵ですよ!

 もちろん本日の僕の報酬に後払いなんか認めない!
この後きっちりその耳と尻尾で取り立てるんだから!
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...