秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

文字の大きさ
199 / 491

198.特別受注~ギディアスside

しおりを挟む
「そういえば学園近くの通りに3商会とフォンデアス公爵家のガウディードが合同で多国籍カフェをテーマ別でいくつか出店したらしいね。
ルドはもう行ったかい?」
「ああ、こないだゼストと例の編入生と3人で行ってきた。
王都や王都に近い領から教育が施された孤児達を店員として採用しているんだ。
カフェのコンセプトも店によって分けていて面白かった。
学生もそれぞれの店に客としてかなり入っていたし、元々王都でカフェをやってるガウディやこの国の一部の貴族も出資者として関わったから、既存の店ともうまくやっているようだ」

 引き続き執務室で兄弟仲良く世間話を交えつつ、情報を共有する。

 貴族が多いのが王都だ。
その上貴族令嬢達の中には獣人への苦手意識を持つ者が少なからずいたはずだけど、どうやら杞憂だったかな。
孤児の6割は獣人だし、南と西の商会長や主要従業員達もそうだ。

「それこそアリー嬢の影響も大きいかもしれないぞ、兄上」
「え?
どうしてだい?」

 ルドがまた心の妹を心の中で褒めてそうな顔をする。

「生徒会の女生徒から聞いたんだが、ブルグル公爵令嬢から広まっているアリー嬢の特別受注製の櫛が貴族令嬢達の来店のきっかけを作っているらしい」
「櫛?
ああ、そういえばこの前宰相が欲しいとバルトスに懇願してすげなく断られていたね。
彼、あの坊主頭になって以来、頭髪を気にするようになったらしいよ。
でもそれがどうして?」
「その櫛を依頼できる条件があるんだ。
合同カフェで3回以上本人が直接何か注文して、その場で食事した後に1人1本依頼できる。
ちなみに次の注文までは半年空けないと受け付けないらしいんだ。
それからアリー嬢の獣人好きが高じてできた櫛だから獣人への偏見のある人間には売らないそうだ。
逆に言えば、櫛を依頼した時点で偏見は持たないと意思表示したと取られても良しとした事になる」
「ああ、それで。
王都や王都に近いブルグル領でも孤児院で一定の教育を受けた成人間近の子供しか雇わないらしいけど、獣人が半数はいるからね。
あの子達は育った環境の影響があるからか特に偏見に関しては敏感だ。
でもそれだとアリーは櫛を積極的に売るつもりはないのかな」
「元々はブルグル公爵令嬢への卒業祝いにアリー嬢が櫛を贈ったのが始まりで、売り物にするつもりはなかったらしいぞ」
「そういえば試食会の時もバルトスとレイヤードに止められていたね。
でもそれならどうして今回売り物にしたんだろう?」

 あの子も兄達を無理に説得しようとはしてなかったように思うけれど····。

「カハイを濾す布は今、コード伯爵が事業の1つとして作っていて、今回の出展の出資者の1人なんだ。
コード伯爵、レースの糸で繋がるブルグル公爵令嬢、従兄のガウディ、各商会長からグレインビル領へ櫛への正式な依頼をしたんだ。
アリー嬢はどさくさに紛れて南と西の商会長と獣人の孤児達への限定的なもふもふ自主規制解除を家族からもぎ取ったらしい」
「それは····よくもぎ取れたね」

 あの悪魔家族はもふもふはもちろんのこと、櫛の製作も乗り気ではなかっただろうに。

 なんて言いつつも、どうしてもぎ取れたかはわかっているよ。
うちの第2王子は気づいてくれるかな?

「根本的なところでグレインビル侯爵家も貴族、というよりも辺境領主だから、ではないかと思うんだが····兄上はどう思う?」
「なるほどね。
グレインビル領は戦力として獣人とは馴染みがあったからこそ、彼らへの偏見や差別はあの領ではほぼ無かったと思うよ。
その分かつては紛争の絶えない辺境地だから孤児が多かったわけだけれどね。
他領の獣人が偏見や差別で職を失ってグレインビル領へ流れて来てたのも大きいだろうね。
そうした事には領民達も胸を痛めていただろうし、紛争を平和的に解決して領民や孤児への教育を徹底してきた領主家族としては無下にはできない、かな」

 ルドは自分の考察に確信を持てたのかほっとした顔になった。
弟の成長は兄としても嬉しいものだ。

「ブルグル領は今孤児への教育に力を入れているし、領収も上がっているから貴族達も注目している。
1番偏見を持ちやすい令嬢達も社交界の花となって流行を発信するレイチェル嬢と、あの母上の茶会以降、レースを発案し紫銀の宝玉姫と呼ぶようになったアリー嬢にも一目置くようになった。
だから令嬢達の関心が恐らく大きい美容関連で、この2人の令嬢が関わる入手困難な物を手に入れるチャンスがあれば、まずはそうした偏見を抑えてでも流行に敏感な令嬢達は動くと考えたのだろうな」
「そうだね。
元々わが国は獣人への偏見や差別は表面的には認めていないから、個人的な感情を抑える理由とするのは容易いしね。
でも店員の半数は平民の中でも獣人の孤児だからね。
例の商業祭みたいな事が起こると怖いよね?」

 わざと問いかけてみる。
意地が悪いと思わないでね、ルド。

「だからこそガウディ、いや、フォンデアス次期公爵が多国籍カフェの矢面に立ち、ブルグル公爵令嬢とグレインビル侯爵令嬢を関わらせたんじゃないのか?
特にこの2人の令嬢の兄達は令息達にとってそこはかとなく恐ろしい相手だ」

 よしよし、悪魔兄弟を思い出してぶるりと震えるうちの弟は賢いな。

「そうだね。
グレインビル兄弟は悪魔と呼ばれている上に立場も強い。
令息達は卒業後に騎士、魔術師、冒険者のどれかの道に進むのが全体の7割だ。
残りの3割も次期当主や何かしらの経営者となるのが大半だからね。
今やわが国の交易を担う代表と言っても過言ではないコード伯爵を含む出資者が後ろだてになる店に手を出すなら、余程の愚か者だ。
もちろん他の貴族達もね」

 あの商会長達もそこを踏まえてガウディードを先頭にして動いたんだろうね。
各諸国を代表する商会長達だ。
人の良い顔をしておいて一癖も二癖もある。
その最たるは東の商会長、カイヤだ。

 だけど南の諸国の交易問題で一歩出遅れた形となったチャガン商会会長だって負けていない。
アリーの試食会の後、南国リーと銘打ってグリッゲンを3色のリーとして大衆受けする味に改良し、アボット会長とうまく売り出した。
食材に東の国の食材を取り入れ、東の商会とも縁を繋いだ。
カハイも豆の煎り具合や入れ方を研究しているようだし、ガウディードから始まり、この国の商会や経営者とも少しずつ縁を広めている。

 そうそう、先日ついにアリーからマナーブックを貰ったみたいだ。
春から初夏へと移り変わるこの時期は虚弱体質のあの子も例年体調が落ち着いているから、の受け取りも兼ねてついででマナーレッスンをしてくれてるらしい。

 そうそう、櫛の事も実は知ってるよ。
一応王太子だからね。
他国から入ってくる商人の流れも把握してるのは当然だ。

 あの子は自主規制も一部解禁になったから、カンガルー属の尻尾を触ってニヤニヤしながらレッスンを指導してるって。
ニヤニヤするマナー講師ってマナー的にどうかとは思うけど。

 バルトスが夜勤明けにさっさと帰ったのも、彼の天使を惑わせる魅惑の尻尾を持ったムキムキのオッサンとの逢瀬を邪魔する為だろうね。

 過保護な兄を持つと大変だね、アリー。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

処理中です...