秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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204.平和な商業祭と王族留学生達〜ギディアスside

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「なるほどね。
今年は問題のない普通の商業祭だったんだ」
「ああ。
とても平和だった····とても」

 昨年の商業祭との違いにほっとしたように頷く。
しみじみとした口調でとてもを2度口にするくらい、昨年散々な目に合ったのは友好国の第1王子であるゼストゥウェル=ザルハード。

「やっぱりアリーが引き寄せてたのかな」
「それは関係ないだろう。
まあ····多分?」

 ふふ。
否定しつつもどこかで更にそれを否定しかねているのは私の弟であり、この国の第2王子であるルドルフ=アドライド。

 この2人の事はいつの頃からかゼスト、ルドと呼んでいるんだ。

 先日1週間続く商業祭が終わり、ルドとゼストが報告に来た。

 ルドは留学生4名全員の後見人補佐、ゼストは自国の留学生2名の責任者を担っている。

 私はこの国の王太子業務の一環となっている留学生の正式な後見人だ。

 昨年留学してきたザルハード国の留学生があまりにも常識外れの厚顔無恥過ぎて、在学中に限り弟のルドへ後見人としての権限代行を一部認めている。

 そして同じような理由で、昨年ザルハード国からはゼストが責任者として父親である国王直々にザルハード国の留学生に関する権限を与えられ、非公式の協力体制が出来上がった。

 余談だけどあまりにも酷すぎた第3王子の婚約者は、留学後1年経たずして強制送還した。
どうやら最近になって教会からも聖女候補を取り消され、婚約解消となったみたいだ。

 今の留学生はザルハード国からはここにいるゼスト、エリュシウェル=ザルハード第3王子、コッヘル=ネルシス侯爵令息が、イグドゥラシャ国からはシンシア=イグドゥラシャ第2王女が留学生として国立魔法技術学園に通う。
ゼスト以外は皆2学年で、シンシア王女だけ今年度の途中から留学となった。

 そして今年はこの2人がお目付け役となって商業祭を引率して周り、一応レポートも提出させた。
どこぞの因縁深い試練の反省文とは勿論違う。

 ここにいる2人は何か起こるかもしれないなら、いっそ自分達が近くで監視しながら社会科見学させた方が気が楽、という共通認識の下に計画した事を他の留学生達は知らない。

「ただ、あの王女と第3王子の仲の良さが気になる」
「ああ、野外合同演習で仲良くなったんだっけ?」

 ルドがうーん、と腕を組む。

 学園では2年生と3年生の魔術師と騎士の卵達が合同でパーティーを組んで国の管理する山中で魔獣討伐や野草採集、野営を3日間行い、パーティー毎に点を競う。

 4年生と5年生、つまりゼストとルドの学年は手分けして監視とフォローに当たるのが毎年の恒例行事だ。

「王女が演習後に倒れたのを介抱したのがきっかけで打ち解けた、とエリュシウェルやコッヘルからは聞いている」
「まあ今は婚約者もいないから、仲良くなるのも問題はないけどね」
「そうだな。
そのおかげか無気力を脱して、今は王女に良い所を見せようと実力と知識の研鑽に努めている。
それ自体は同じ王族としても責任者としても喜ばしくはあるのだが····」
「良い方向に変わったのは後見人としては喜ばしいね。
国としては····まあ微妙かな」

 ゼストもルドと同じく何かが腑に落ちないみたいだ。

 私もイグドゥラシャ国とザルハード国の外交関係的には手放しで喜んでもあげられないんだよね。

「それもわからなくはないんだが····」
「何か気になる?」

 先へ促すとルドが躊躇いがちに口を開いた。

「出来すぎている気がしてならないんだ」
「どういう事?」
「あの演習で王女が倒れたのは恐らくたまたまだろう。
昔から体が弱かったらしいし、医師も心臓に軽度の持病があると認めている。
だから本来ならあの演習には出ないはずだった」
「そうだね。
でもその日はたまたま2年に体調不良者が何名も出て、当日は急きょチームの調整が必要になったって聞いてるよ。
そこで見学組みの王女が直々に早くクラスに馴染む為に出たいと申し出たんでしょ」

 元々あの第3王子とパーティーを組みたがる者はいなかったから、余計彼と側近候補の2人は誰ともパーティーが組めず、最後まであぶれてしまっていた。

 そんな彼らにとって王女の提案はありがたかったに違いない。

 しかし当然周りは強く反対した。

「医師の資格を持つ彼女の専属侍女も許可し、責任問題にはしないと確約した事で教師も同意したんだったかな」
「ああ。
結果、組むはずではなかったエリュシウェル王子とシンシア王女がチームを組み、演習の終盤、魔獣の討伐中に怪我をしたコッヘルを彼女が庇って前に出た。
王子と王女で手を取り合って討伐して演習は無事終えたが、その後に彼女が倒れた」
「以来、仲良く学園生活を青少年らしく謳歌している。
そうだね、確かに出来すぎてはいるね」

 私も気にはなってたんだよ?

「でも今のところおかしな点もないよね。
演習の時の体調不良も一部の仲の良い平民グループで流行っただけ、みたいだし。
原因もそのグループが自分達で昼食に作った料理に間違ってハライタケを混入しちゃったんだよね」

 ハライタケは下痢や腹痛を誘発する茸だけど、1日堪えれば翌日には治癒する。
一部の女子にはデトックス茸と呼ばれていて、便秘女子が好んで食べる場合があるらしい。

 問題は美味と称されるウマタケと外見と味が似ている事。
時々間違って食べて惨事に見舞われた報告が上がってくる。

「確かにそうなんだが····」

 何だろうね。
同じ生徒として近くで見ているからこその違和感が拭えないのかな?

「ひとまず2人は留学生達の動向は引き続き注意しておいて。
ゼスト、君は留学生だけど責任者だ。
その意味を間違えないようにね」
「「もちろんだ」」

 王子2人は大きく頷く。
特にゼストにとっては良くも悪くも異母弟王子は諸刃の剣だからね。

 アドライド国王太子としても、私個人としてもゼストには頑張って貰いたいところなんだ。

 まあそれはいい。
ひとまず気持ちを切り替える。

「それじゃあゼスト。
私はこれからルドと内々の話があるから、今日はもう下がってくれるかな」
「ああ。
それでは失礼する」

 特に気を悪くするわけでもなく、素直に出ていく。

「さて、ルド。
決まったよ」

 そう言って机の引き出しから開封済みの封筒を取って渡す。

 最初は訝しげな顔のルドも、封筒の裏の刻印を確認すると慌てて中の手紙を出した。

 それはルドが心待ちにしていたヒュイルグ国からの短期滞在を許可する知らせだった。
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