秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

文字の大きさ
223 / 491
7―1

222.いつから?

しおりを挟む
「どういう事か説明されよ、ヒュイルグ国国王。
あの茶会や晩餐会もそうであったが、流石にあの母娘の言動は常軌を逸して目に余る。
アドライド国王族である私だけではない。
我が国の貴族令嬢に対しても、アドライド国王族の護衛に対してもだ」

 わぁ、ルドルフ王子って、感情的にならずにちゃんと王族らしく物申せるんだね。

 あの後夫人はいつもの側近が率いてきた兵士さん達に両脇をガシッとホールドされてズリズリ引きずられて引っ立てられた。

 色々と夫である宰相や僕に喚き散らしていたけど腰が抜けてたし魔封じの枷もつけられちゃったから、ほぼ無抵抗だったよ。

 そんな事より、僕はいつまでお外で君達に付き合わなければいけないんだろうね。
いくら義兄様に抱っこされて、それとなく義兄様が魔法で僕の周りの空気を温めてくれてても疲れてくるんだけどな。

「失礼。
ひとまずご令嬢に温室へお入りいただいてもよろしいかな?
少しお疲れのようだ」

 ゴードンお爺さんグッジョブ!
普通は王族同士のお話に割って入るの勇気がいるのに、さすがだね。

「ああ。
私達もそこで説明をさせてもらおう」

 え、嫌なんだけど。
国王ってば、何の巻き込み事故にするつもりかな。

 思わずムスッとしちゃった。

「陛下。
私の方からルドルフ王子とグレインビル嬢へ説明致します。
陛下と宰相閣下は早急に書類の調印と例の処理を指揮なさって下さい」
「いや、しかし····そう、だな。
ここはお前に任せる」

 彼の性格的には直接サクッと説明しそうだけど、任せるって事は今はよっぽど時間との勝負に入っているのか、それとも何かを警戒してるのか、その両方な?

 僕のお顔見てため息吐くなんて、失礼だよ。
まあずっとムスッとはしてるけどさ。

「ルドルフ王子、グレインビル嬢。
今は時間を争う故側近であるユニロムに任せるが、1週間以内には私の方から全て話そう。
それまでの間そなた達の護衛の数を増やす。
しばし不便をかけるが我慢されよ」
「····わかった」

 王子が頷く。
状況を把握しきれないながらも、何かしらの事態が大きく動いているのは肌で感じ取っているんだと思う。

「すまない」

 王子ではなく僕の方を見ながらそう言うと、彼はすぐに宰相と近衛や兵士を伴って踵を返した。

「それでは中にお入り下され」

 ゴードンお爺さんもすぐに温室の扉を開く。
中に入ると温室全体はほんのり暖かい。
冬の間は一定の温度が保たれるように暖炉の火は消されないんだ。

 普段僕がお茶をするソファとテーブル、少し離れてテーブルセットの辺りにはそれとは別に小型のストーブでしっかりと暖められている。

 ここには時々人が入るし、僕が気分でソファでも椅子でもどちらでも使えるようにしてある。

「ご令嬢と兄君はカハイでよろしいかな」
「ああ。
王子には紅茶を頼む」

 義兄様の言葉を快く受け、お爺さんはそのまま奥でお茶の準備を始める。
侍女もいないし、お爺さんの立場は1番下だからっていうのもあるけど、実はお茶を淹れるのが上手いんだ。
珈琲を淹れるのもすぐに覚えてくれたんだよ。

 ちなみにこの国にきてすぐの頃、僕に使う茶葉に何かが混入されて以来、備え付けの棚は義兄様によって僕達兄妹とお爺さん、マーサしか開かないよう設定されてるんだ。

 僕の疲れを感じ取ってくれたのか、指示を出した義兄様はソファの方に僕ごと座ってくれた。
僕は義兄様のお膝に横向きに座ってお胸にもたれつつ、背中を支えてもらってるから楽ちんだ。

 こんな場でお行儀悪いかな?
でも知らないや。

 義兄様の鼓動と温もりを感じて残っていた苛立ちのようなささくれた気持ちもやっと消えた。
中の温度も心地良くて、何だが眠くなるね。

 義兄様はもう侍従役はしないのかな?
ここの面子は今更驚いてないから、認識阻害の魔法を使っててもわかってたみたいだけど。

 王子は僕達、というか義兄様の隣に座ってお膝で寛ぐ僕に何か言いたそうなお顔をしたけど、正面を向く。
どうしたの?

 護衛と侍従であるシル様とコード令息はもちろん王子の後方に立ったよ。
他国だしあんな事があったんだから、警戒して当然だよね。

 お爺さんは僕と義兄様、王子の前にだけ用意した物を置いて立ち去る。

「毒の心配はいらないよ、ルドルフ王子」

 義兄様はわざとわかるように鑑定魔法を使って一声かけてから、この国の職人さんに作ってもらった僕専用のマグを手渡してくれた。
自分も僕とお揃いのマグで一口飲む。
棚の設定を知らないから王子達が警戒するのは当然だし、ある意味側近への嫌味パフォーマンスだね。

 お茶が来るまで立って待っていた猫っ毛の側近は必然的に僕達の対面のソファに断りを入れてから腰かけ、僕達を囲むように小さな結界を張って防音、防視、守護の効果を付与してから話し始めた。

「このような事態に巻き込み、申し訳ございません。
10年程王宮内にしつこく残っていた反乱分子を本日一掃します。
唯一邪魔だったクェベル国の元王女も今日のこれでまとめて処断となります」

 ふーん、宰相夫人とはもう言わないんだね。

「ねえ、そんな事より僕の妹を囮に使ったのかな?」

 けっこう大事おおごとなお話だけど、そんな事扱いするくらい義兄様は僕を優先してくれてて嬉しいな。

 義兄様はマグを置いたらお膝に乗せた僕のフードを後ろに脱がせて髪を手櫛で整えてくれる。
少しピリピリした空気を醸し出してるけど、仕方ないよね。

「今日のこの一件に関してだけは誓って違います」

 側近さんもそんな僕達を無礼だとは思ってないみたい。
むしろ真剣に否定する。

 まあ当然か。
僕に帰られたら困るのは彼らだもの。

「本来なら夫人があの場に現れる事はありえませんでしたが、こちらが予期しない者が手引きしたようです。
ただ····夫人とその娘をコンプシャー公爵家から追放できる証言を偶然····いえ、グレインビル嬢。
貴女が煽っていただいた事で興奮した当の夫人から得られました。
感謝しております」

 含みを持たせた言い方だけど、君はいつからいたんだろうね?

「注意しただけですのに」
「ベストタイミングな煽りでしたよ」
「それはかなり初めから見ていたという事か?」

 僕へ苦笑する側近に王子が眉を顰めて口を挟み、シル様は無表情でわざと殺気を放って威嚇する。

 そうだね。
夫人が魔法で攻撃しようとしたのは娘がこの国の王族直系の血を引いてる発言したあたりだもの。
他国の王族を害しようとする者をこの国の都合でわざと泳がせたのなら、さすがにまず過ぎるだろうな。

 でもそれは違うはずだよ?
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...