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275.仲良し兄妹のよう〜ルドルフside
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「そう、君が····」
「えーっと、そろそろ下ろして?
もう準備はできたかな?」
にこにこと爽やかな笑顔で彼らを静観する赤髪の青年とは違い、黒髪の彼はまじまじと自分を見つめるレイに、恐らく初対面だろうが特に挨拶もなく確認する。
「うん、僕の可愛いアリーから指示された通りにしてあるよ」
「ふふ、ありがとう。
····って、えっ」
「兄上、邪魔!」
レイ、お前もか?!
レイの言葉に微笑んだ彼の手をグッと引いたかと思うと、ぞんざいな口調と共にパチリと兄の両腕を攻撃して自分の方へと移動させ、今度は自分が抱き抱えた。
「ちっ、記念すべき初顔合わせを邪魔するな」
「兄上の方こそ中で大公の準備しなきゃいけないでしょ。
ほら、早く」
「くっ、覚えてろ!」
「いや、だからさすがに抱っこは····」
軽い小競り合いと捨て台詞を残して奥に消えるバルトス殿と、間違いなく不測の事態に陥っている様子で言外に降ろせと言う黒髪の彼。
平然としているのはレイくらいだ。
いや、そんな事よりも、病床に伏している大公が何故ここに?!
そういえば昨夜はレイもどこかに出かけていたようだが、何をしに?
「初めまして、旅人さん。
重くないし、準備で君の初めてを兄上に奪われのに、駄目なのかな?」
「「言い方」」
思わずのツッコミが再び国王と被った。
「ええ····もう、可愛いんだから」
「可愛いのかよ」
「感性がアリー嬢····」
戸惑いつつも受け入れたらしい彼の言葉に思い思いのツッコミを入れる俺達。
レイは旅人と呼ぶ彼をの抱っこを全く譲るつもりはない。
まるでよく見る妹にするかのような抱っこだ。
対して旅人は旅人で件の妹のようによしよしと頭を撫でる。
互いに見つめ合って微笑み合っているが、男同士だ。
なのに何故····。
「何だ、この光景····」
「無駄に女顔だから」
違和感がほとんどない、不思議。
「準備はできた!
ほら、旅人さんを放せ!」
軽装となったバルトス殿が奥の寝室から忌々しそうに舌打ちして顔を覗かせた。
「それじゃ、オイラは適当に魔力を注いで準備しておくね」
「うん。
その子の事、よろしくね」
「任せてよ」
憂いを浮かべる旅人に、赤髪の男はさわやかに言い切ってソファに座った。
「さ、行こうか」
「待ってくれ、レイ。
何故大公がその部屋にいる?
部屋の中を確認したい」
何となくヒュイルグ国王と何かを企んでいるのだけはわかり、中の確認を申し出る。
だがため息を吐いたレイは物っ凄く嫌そうだ。
「駄目に····」
「あ、ちょっと待って」
レイの言葉を旅人が静止する。
レイに抱かれたまま俺の方を見てにこりと微笑んだ。
何だろう。
雰囲気がどことなく心の妹に似ていないか?
「ね、君アリアチェリーナの手術を手伝った子でしょ」
「えっ、いや、それは」
待ってくれ!
それは秘密にすると約束したんだぞ?!
「あ、返事はいいんだ。
君も手伝って」
「えっ?!」
お気軽に誘ってきた旅人の言葉に戸惑う。
「待て!
それなら俺が!」
「それは駄目だよ。
国王でしょ、君?
もし途中から誰かが乱入した場合、どうするの?
止めるなら立場のある君が適任だよ?
それに家族の手術は何かあった時に冷静さを欠くから、手伝わせるつもりもないよ」
すかさず国王が手を上げるが、それは旅人がきっぱりと拒否した。
確かに俺が転移を失敗していなくなった時点で兄上が突撃訪問してこないとも限らない。
兄上はバルトス殿の行動をいくらかは把握しているはずだ。
それに未知なる事への好奇心は人一倍強い方だ。
まともに止められるとしたら、この国の最高権力者である国王しかいない。
ただ、不穏な言葉が····。
「今····手術、と····」
あの洞窟でも惨劇を思い出す。
今でも忘れた頃にふと見る悪夢。
まさか····。
「君、あの時最後まで手伝ったんだよね?
今度のは多分その時のものより難易度高くてね。
そういうのに耐性ある人があと1人いてくれると各自がそれぞれに1番の役割に集中できていいなって思うんだ。
駄目かな?
あ、もちろん吐くときは他所で吐いてきてね」
吐くの前提で話してないか?
それにおかしいぞ。
ヘラリと笑う旅人の顔は何故か悪魔の微笑みに見えた。
だが状況的に心臓の手術だと思うが、見ておきたい気持ちもある。
もしかしたら将来役立てられる事もあるかもしれない。
「わかった」
「助かるよ」
話がまとまると旅人はレイを優しく一撫でした。
レイも微笑んで無言で部屋に入って行く。
レイ、抱っこはしたままなのか。
部屋に入れば、まずは着替えを指示される。
中は寝室だからか大きめのベッドがあり、その隣に高さのある簡易ベッドがあった。
そこに横たわっていたのが大公だろう。
いつぞやのシルのように顔が白い布で覆われているから憶測だ。
大公を観察しながら服を着替える。
視界の隅ではやっとレイから降ろされたのが映った。
「えーっと、そろそろ下ろして?
もう準備はできたかな?」
にこにこと爽やかな笑顔で彼らを静観する赤髪の青年とは違い、黒髪の彼はまじまじと自分を見つめるレイに、恐らく初対面だろうが特に挨拶もなく確認する。
「うん、僕の可愛いアリーから指示された通りにしてあるよ」
「ふふ、ありがとう。
····って、えっ」
「兄上、邪魔!」
レイ、お前もか?!
レイの言葉に微笑んだ彼の手をグッと引いたかと思うと、ぞんざいな口調と共にパチリと兄の両腕を攻撃して自分の方へと移動させ、今度は自分が抱き抱えた。
「ちっ、記念すべき初顔合わせを邪魔するな」
「兄上の方こそ中で大公の準備しなきゃいけないでしょ。
ほら、早く」
「くっ、覚えてろ!」
「いや、だからさすがに抱っこは····」
軽い小競り合いと捨て台詞を残して奥に消えるバルトス殿と、間違いなく不測の事態に陥っている様子で言外に降ろせと言う黒髪の彼。
平然としているのはレイくらいだ。
いや、そんな事よりも、病床に伏している大公が何故ここに?!
そういえば昨夜はレイもどこかに出かけていたようだが、何をしに?
「初めまして、旅人さん。
重くないし、準備で君の初めてを兄上に奪われのに、駄目なのかな?」
「「言い方」」
思わずのツッコミが再び国王と被った。
「ええ····もう、可愛いんだから」
「可愛いのかよ」
「感性がアリー嬢····」
戸惑いつつも受け入れたらしい彼の言葉に思い思いのツッコミを入れる俺達。
レイは旅人と呼ぶ彼をの抱っこを全く譲るつもりはない。
まるでよく見る妹にするかのような抱っこだ。
対して旅人は旅人で件の妹のようによしよしと頭を撫でる。
互いに見つめ合って微笑み合っているが、男同士だ。
なのに何故····。
「何だ、この光景····」
「無駄に女顔だから」
違和感がほとんどない、不思議。
「準備はできた!
ほら、旅人さんを放せ!」
軽装となったバルトス殿が奥の寝室から忌々しそうに舌打ちして顔を覗かせた。
「それじゃ、オイラは適当に魔力を注いで準備しておくね」
「うん。
その子の事、よろしくね」
「任せてよ」
憂いを浮かべる旅人に、赤髪の男はさわやかに言い切ってソファに座った。
「さ、行こうか」
「待ってくれ、レイ。
何故大公がその部屋にいる?
部屋の中を確認したい」
何となくヒュイルグ国王と何かを企んでいるのだけはわかり、中の確認を申し出る。
だがため息を吐いたレイは物っ凄く嫌そうだ。
「駄目に····」
「あ、ちょっと待って」
レイの言葉を旅人が静止する。
レイに抱かれたまま俺の方を見てにこりと微笑んだ。
何だろう。
雰囲気がどことなく心の妹に似ていないか?
「ね、君アリアチェリーナの手術を手伝った子でしょ」
「えっ、いや、それは」
待ってくれ!
それは秘密にすると約束したんだぞ?!
「あ、返事はいいんだ。
君も手伝って」
「えっ?!」
お気軽に誘ってきた旅人の言葉に戸惑う。
「待て!
それなら俺が!」
「それは駄目だよ。
国王でしょ、君?
もし途中から誰かが乱入した場合、どうするの?
止めるなら立場のある君が適任だよ?
それに家族の手術は何かあった時に冷静さを欠くから、手伝わせるつもりもないよ」
すかさず国王が手を上げるが、それは旅人がきっぱりと拒否した。
確かに俺が転移を失敗していなくなった時点で兄上が突撃訪問してこないとも限らない。
兄上はバルトス殿の行動をいくらかは把握しているはずだ。
それに未知なる事への好奇心は人一倍強い方だ。
まともに止められるとしたら、この国の最高権力者である国王しかいない。
ただ、不穏な言葉が····。
「今····手術、と····」
あの洞窟でも惨劇を思い出す。
今でも忘れた頃にふと見る悪夢。
まさか····。
「君、あの時最後まで手伝ったんだよね?
今度のは多分その時のものより難易度高くてね。
そういうのに耐性ある人があと1人いてくれると各自がそれぞれに1番の役割に集中できていいなって思うんだ。
駄目かな?
あ、もちろん吐くときは他所で吐いてきてね」
吐くの前提で話してないか?
それにおかしいぞ。
ヘラリと笑う旅人の顔は何故か悪魔の微笑みに見えた。
だが状況的に心臓の手術だと思うが、見ておきたい気持ちもある。
もしかしたら将来役立てられる事もあるかもしれない。
「わかった」
「助かるよ」
話がまとまると旅人はレイを優しく一撫でした。
レイも微笑んで無言で部屋に入って行く。
レイ、抱っこはしたままなのか。
部屋に入れば、まずは着替えを指示される。
中は寝室だからか大きめのベッドがあり、その隣に高さのある簡易ベッドがあった。
そこに横たわっていたのが大公だろう。
いつぞやのシルのように顔が白い布で覆われているから憶測だ。
大公を観察しながら服を着替える。
視界の隅ではやっとレイから降ろされたのが映った。
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