282 / 491
7―2
281.名残惜しいお別れ
しおりを挟む
「そもそも君に隙があるから反逆者が力をつけた。
アリアチェリーナも拐われた。
違うか?」
「お前····どこまで····」
「固めるのに今ある己の力では不足と?
アリアチェリーナはあの時君にちゃんと教育しただろ?」
背筋を伸ばし、久々にそれらしい顔を作り、男っぽく言葉にも気合を入れる。
あまり他人に思い入れがない今の僕にはやや難しい。
それでもそこの王族2人ははっとしたから、まあまあ成功したのかな?
「それに僕が君と同じ立場で価値観も同じだと思っているのか?
僕にはそもそも大事なものはない。
国や人、弱みだらけの君とは違う。
だって本来の僕にはしがらみがないんだ。
気まぐれに誰かと関わっても、それは心を傾けるほどの事ではない。
持たざる僕には君達が国王や王子であるという立場すら、何の脅威でもない。
そもそも僕は何かしてあげようと思うほど君達への義理も興味も全くないんだけどな?」
きっぱり言い切ると国王が少しショックを受けた顔をした。
意味がわからない。
ん?!
あ、あれ、隣のバルトス義兄様も?!
レイヤード義兄様は僕の背中に顔をグリグリこすりつけ始めた?
どうし····あ、ち、違うよ?!
義兄様達は大事だし、いつも僕の側にいてくれるよね!
心は傾くどころか垂直に突き立ってるから!!
旅人の僕はって意味だからね!
ね!!
慌てて後ろ手にレイヤード義兄様の背中をポンポンポンポンして、もう片方の手でバルトス義兄様の頭をよしよしよしよしする。
良かった、持ち直してくれた。
ただね、この体になってからはアリアチェリーナの時のような国王達への怒りもないんだから、不思議だよね。
家族に対しての愛情は全く衰えてないんだけど、やっぱり脳の機能的な情報処理の仕方のせいかな?
当時と同じような僕らしい周囲への興味の無さには他人事のように感心する。
「ああ、勘違いしてるのか?
僕には君への善意も悪意もないよ。
でも態度によっては不快には思うけど、それは当然だろう。
それとね、僕は既に医師ではない。
だから君達患者やその家族に信用される必要性も、不安感を払拭したり生きる質の向上を共に考えてあげる必要性もない。
君は間違った認識の上に立っているけれど、それでいいのか?」
「なる、ほど」
どうして国王はそんなに苦々しそうな顔になるんだろう?
王子は僕の真意を確かめようとしてるのかな。
ただ黙って僕の目を見続けているね。
「どちらにしても今日会ったばかりの他人に、立場を使って都合よく教えて貰おうなんてしてないでくれないか。
不愉快だ。
それに地道に自分達ができる事を積み重ねてこそ、土台の崩れにくい確かな発展があるものだよ。
もちろん信用もそうだ。
それにそういうズルをすれば、結局過ぎた知識や技術を御せずに無駄な犠牲が増えるよ?
僕の国だって知識や技術があるが故に戦争を起こして甚大な被害を広げた国もある。
医療でもそれ以外の分野でもね」
元は人を救い、人を豊かにする為の力は時に戦争の兵器になる。
己の分を弁えなければ、それは最終的に自国すらも貧しくさせた。
「魅力的な力があれば使おうとするし、その力があれば気が大きくるのが人の性だ。
結果自国も大きな損失を被るんだよ。
国が廃れる要因の1つってそういう事だろう。
仮にアリアチェリーナが僕と同程度の知識を持っていても、君達には間違いなく制御できないんだから意味がない。
知らないからこそお互い安全でいられるのに、何を重要とするんだ?」
はっとした顔をしてももう遅い。
「もちろん君達の立場やしがらみに縛られない僕をその立場やしがらみで縛ろうとしても無駄だし、僕が不快に感じればそっぽを向くだけだ」
そうして僕はレイヤード義兄様の膝から立ち上がる。
「用意できたよー」
ガチャ、とタイミング良く寝室のドアが開いてロギが顔を出す。
相変わらず赤髪のこの青年は無駄に爽やかだ。
「名残惜しいけど」
もちろんそれはこのいくらか残るデザート達。
食べきれなかった。
今のアリアチェリーナの体じゃ····残りをたいらげるのは無理だよねえ。
同じく立ち上がった義兄様達がこの体では最後だからか交互に抱きしめてくれる。
「あ····」
「旅人、殿」
何かを言おうとした国王と、僕を呼び止めようとする王子が立ち上がったけど、無視だ。
「僕への何かしらの言葉は不要だけど、治療費はちゃんとアリアチェリーナに払っておいて。
材料費と手間賃くらいは払いなよ。
それから今後つまらない事でアリアチェリーナを危険に晒したら、彼女を大好きなあれこれに殺されるだろうから気をつけて。
相互不干渉でいる事がお互いにとって1番安全だよ」
僕を大好きな人達は僕の知る兵器と比べても遜色ないくらい殺傷能力が高いからね。
王族達がどんな顔をしているかにも大して興味は起こらない。
目線が近くなった義兄様達をよしよしして、そのまま振り返らずにロギと中に入った。
※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
カクヨムをはじめいくつかのサイトにて先行投稿していたお話と、加筆修正して投稿していたこちらのお話が追いついてしまいました。
次回からは同時投稿になるので誤字脱字がババッと増えるかもしれません。
教えて下さると有り難いです。
毎日更新が難しくなってくるかと思いますが、比較的更新頻度は多めで1日に複数投稿してたりもします。
また今日から新作を投稿します。
1話目はこの後すぐに。
こちらは最近カクヨム、なろうにてノリと勢いで投稿し始めた為、設定等が甘めです。
今のところはこれまでの作品の中でも評価が高い気がします。
加筆修正が終わり次第順次投稿していく予定です。
タイトルは【稀代の悪女と呼ばれた天才魔法師は天才と魔法を淑女の微笑みでひた隠す~だって無才無能の方が何かとお得でしょ?】です。
しばらくは毎日複数話投稿していきます。
よろしければご覧下さい。
アリアチェリーナも拐われた。
違うか?」
「お前····どこまで····」
「固めるのに今ある己の力では不足と?
アリアチェリーナはあの時君にちゃんと教育しただろ?」
背筋を伸ばし、久々にそれらしい顔を作り、男っぽく言葉にも気合を入れる。
あまり他人に思い入れがない今の僕にはやや難しい。
それでもそこの王族2人ははっとしたから、まあまあ成功したのかな?
「それに僕が君と同じ立場で価値観も同じだと思っているのか?
僕にはそもそも大事なものはない。
国や人、弱みだらけの君とは違う。
だって本来の僕にはしがらみがないんだ。
気まぐれに誰かと関わっても、それは心を傾けるほどの事ではない。
持たざる僕には君達が国王や王子であるという立場すら、何の脅威でもない。
そもそも僕は何かしてあげようと思うほど君達への義理も興味も全くないんだけどな?」
きっぱり言い切ると国王が少しショックを受けた顔をした。
意味がわからない。
ん?!
あ、あれ、隣のバルトス義兄様も?!
レイヤード義兄様は僕の背中に顔をグリグリこすりつけ始めた?
どうし····あ、ち、違うよ?!
義兄様達は大事だし、いつも僕の側にいてくれるよね!
心は傾くどころか垂直に突き立ってるから!!
旅人の僕はって意味だからね!
ね!!
慌てて後ろ手にレイヤード義兄様の背中をポンポンポンポンして、もう片方の手でバルトス義兄様の頭をよしよしよしよしする。
良かった、持ち直してくれた。
ただね、この体になってからはアリアチェリーナの時のような国王達への怒りもないんだから、不思議だよね。
家族に対しての愛情は全く衰えてないんだけど、やっぱり脳の機能的な情報処理の仕方のせいかな?
当時と同じような僕らしい周囲への興味の無さには他人事のように感心する。
「ああ、勘違いしてるのか?
僕には君への善意も悪意もないよ。
でも態度によっては不快には思うけど、それは当然だろう。
それとね、僕は既に医師ではない。
だから君達患者やその家族に信用される必要性も、不安感を払拭したり生きる質の向上を共に考えてあげる必要性もない。
君は間違った認識の上に立っているけれど、それでいいのか?」
「なる、ほど」
どうして国王はそんなに苦々しそうな顔になるんだろう?
王子は僕の真意を確かめようとしてるのかな。
ただ黙って僕の目を見続けているね。
「どちらにしても今日会ったばかりの他人に、立場を使って都合よく教えて貰おうなんてしてないでくれないか。
不愉快だ。
それに地道に自分達ができる事を積み重ねてこそ、土台の崩れにくい確かな発展があるものだよ。
もちろん信用もそうだ。
それにそういうズルをすれば、結局過ぎた知識や技術を御せずに無駄な犠牲が増えるよ?
僕の国だって知識や技術があるが故に戦争を起こして甚大な被害を広げた国もある。
医療でもそれ以外の分野でもね」
元は人を救い、人を豊かにする為の力は時に戦争の兵器になる。
己の分を弁えなければ、それは最終的に自国すらも貧しくさせた。
「魅力的な力があれば使おうとするし、その力があれば気が大きくるのが人の性だ。
結果自国も大きな損失を被るんだよ。
国が廃れる要因の1つってそういう事だろう。
仮にアリアチェリーナが僕と同程度の知識を持っていても、君達には間違いなく制御できないんだから意味がない。
知らないからこそお互い安全でいられるのに、何を重要とするんだ?」
はっとした顔をしてももう遅い。
「もちろん君達の立場やしがらみに縛られない僕をその立場やしがらみで縛ろうとしても無駄だし、僕が不快に感じればそっぽを向くだけだ」
そうして僕はレイヤード義兄様の膝から立ち上がる。
「用意できたよー」
ガチャ、とタイミング良く寝室のドアが開いてロギが顔を出す。
相変わらず赤髪のこの青年は無駄に爽やかだ。
「名残惜しいけど」
もちろんそれはこのいくらか残るデザート達。
食べきれなかった。
今のアリアチェリーナの体じゃ····残りをたいらげるのは無理だよねえ。
同じく立ち上がった義兄様達がこの体では最後だからか交互に抱きしめてくれる。
「あ····」
「旅人、殿」
何かを言おうとした国王と、僕を呼び止めようとする王子が立ち上がったけど、無視だ。
「僕への何かしらの言葉は不要だけど、治療費はちゃんとアリアチェリーナに払っておいて。
材料費と手間賃くらいは払いなよ。
それから今後つまらない事でアリアチェリーナを危険に晒したら、彼女を大好きなあれこれに殺されるだろうから気をつけて。
相互不干渉でいる事がお互いにとって1番安全だよ」
僕を大好きな人達は僕の知る兵器と比べても遜色ないくらい殺傷能力が高いからね。
王族達がどんな顔をしているかにも大して興味は起こらない。
目線が近くなった義兄様達をよしよしして、そのまま振り返らずにロギと中に入った。
※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
カクヨムをはじめいくつかのサイトにて先行投稿していたお話と、加筆修正して投稿していたこちらのお話が追いついてしまいました。
次回からは同時投稿になるので誤字脱字がババッと増えるかもしれません。
教えて下さると有り難いです。
毎日更新が難しくなってくるかと思いますが、比較的更新頻度は多めで1日に複数投稿してたりもします。
また今日から新作を投稿します。
1話目はこの後すぐに。
こちらは最近カクヨム、なろうにてノリと勢いで投稿し始めた為、設定等が甘めです。
今のところはこれまでの作品の中でも評価が高い気がします。
加筆修正が終わり次第順次投稿していく予定です。
タイトルは【稀代の悪女と呼ばれた天才魔法師は天才と魔法を淑女の微笑みでひた隠す~だって無才無能の方が何かとお得でしょ?】です。
しばらくは毎日複数話投稿していきます。
よろしければご覧下さい。
0
あなたにおすすめの小説
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~
季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」
建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。
しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった!
(激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!)
理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造!
隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。
辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。
さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。
「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」
冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!?
現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる!
爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる