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297.絵本〜ギディアスside
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「本自体に何か魔法がかかっているのかもしれない」
本を開いた途端に鮮明に思い出すなんて、本来はあり得ない。
逸る気持ちを抑えるのに何とはなしに呟いて、手にした本をパタンと閉じた。
そのまま流れるように奥にある机に向かう。
心なしか足早になってしまうのは、ほんの少しわくわくしているからかもしれない。
王族専用の書庫だから設置してある机はせいぜいが並んで座って2人までのスペースだ。
椅子を引いて腰かけ、息を吐いてから机の上でもう1度ゆっくりと開いた。
ーーーー
孤王は古の王の1人。
孤王は古王達の全てを知り、故に畏怖される比類なき王。
孤王は最強で、最凶。
孤王は世界で1人で、独りで、孤り。
孤王は調整者で、転換者。
孤王は終末に生まれて、産まれる。
孤王は選ばれた身代わりの欠陥品。
孤王は愛を宿して、愛を得ない。
孤王は宿す愛の為に奪われる。
世界を支えられるのは、孤王の犠牲だけ。
役目を終えた孤王はその果てに何を見る?
絶望?
死?
怒り?
孤王・・・・何も期待しないあなたに、この世界の愛を。
ーーーーー
たった数ページの、今はもう使われなくなった亡国の文字で書きつづられた絵本。
何の為に書かれた絵本かも今ではわからない。
絵本の中にはいくつかの絵が描かれている。
まず、初めのページ。
明るい太陽と水面が描かれている。
水面には円を描くように7本の剣が突き刺さっていて、全ての剣の柄には王冠が引っかけられている。
剣の刀身の色は赤、青、緑、茶、銀、黒、金。
そして円の中央にクリーム色のローブを羽織って立つ人物。
これが孤王だろうか?
フードを目深に被っているせいで髪の色や種族はわからない。
露出する肌の部分は黒く塗られていて表情も描かれていない。
白く分厚い本を胸に抱えていて、足元から7つの影が剣に向かって延びている。
それぞれの影の色は剣と同じ色だ。
抱えた本の真ん中に紫の丸い····石のような何かが····埋め込まれているという事だろうか?
そして次のページ。
背景が赤く塗られている。
仰向けに倒れた孤王に5色の剣が突き刺さり、流れる血で水が朱に染まっている。
刺さっていない黒い剣は孤王の影と同化しようとしている?
金の剣は孤王が刃の部分を握っている。
朱色の水は流れて何かに注がれているようだが、その部分が何者かに削り取られていてわからない。
前のページで抱えていた本はどこにも見当たらない。
そして最後のページ。
背景は夜かな。
丸い満月とアリリアによく似た満開の、小花の咲き誇る木が描かれていた。
私の知るアリリアの花よりももっと白く、小さい。
地面はその花弁が落ち、薄桃色の絨毯のようだ。
その木を下から見上げている後ろ姿の孤王のローブの縁にも、小さなその花が模様のように描かれている。
見つめる視線の先には折れたような枝。
孤王の周りには7つの丸い珠が見守るように囲んで浮いていて、色は剣の色と同じだ。
いや、もう1つ。
右肩に紫の丸い珠が乗っている。
ふう、と息を吐く。
見れば書かれている内容も、描かれた絵も思い出した。
そっと本を閉じ、鑑定魔法をかけてみたけれど、何故か跳ね返された。
表紙に両手を置き、微量の魔力を流して残滓を探る。
するとほんの少しの小さな綻びを見つけた。
そこへゆっくりと、慎重に、細く魔力を流してみる。
自分の魔力を綻び部分から本全体に薄く纏わせてから、再び鑑定魔法をかけてみた。
「これは····闇属性の忘却魔法?
保存魔法はかかっていなかったのかな。
いや、かけられなかった?
相互作用かな」
殆どの本には劣化を防止するのに保存魔法をかけてあるけれど····。
ぶつぶつと独り言を言いながら本の魔法が発動しないように先にかかっている本の魔力を自分の纏わせた魔力で覆いつつ、再びゆっくりと本を開いてみる。
どうやら書かれている文字にも、描かれている絵にも忘却魔法が細かくかけられているようだ。
「中の内容に特に変化は····いや、最後のページにに何か····これは····」
文字のような、記号のような。
私の知らない何かが浮かび上がっている。
懐から紙と万年筆を取り出して書き写した。
「何て読むんだろう?」
念の為に本のそれにも魔力を纏わせてみたけれど、ただの文字か記号かを書いているだけのようだ。
浮かび上がった原理は不明だけど、闇属性の魔法を抑えたから認識できたのかもしれない。
ひとまず本を閉じて纏わせた魔力を本の綻び部分から抜き取るように、ゆっくりと引き上げていく。
失敗すれば中の文字や絵が消えてしまう場合もある。
とにかく最後まで気を抜かず、慎重にする。
自分の全ての魔力を本から引き上げた後、本を元の場所へ戻してもう1度座った。
目を瞑り、暫く中の内容を反芻してみる。
「どうやら今度は覚えているみたいだ」
ほっと安堵する。
記憶が確かなら、以前は見て本棚に戻した時点で忘れてしまったように思う。
それにしても1番不思議なのは、何故すっかり忘れていたあの絵本を、あのタイミングで思い出したかだ。
本を開いた途端に鮮明に思い出すなんて、本来はあり得ない。
逸る気持ちを抑えるのに何とはなしに呟いて、手にした本をパタンと閉じた。
そのまま流れるように奥にある机に向かう。
心なしか足早になってしまうのは、ほんの少しわくわくしているからかもしれない。
王族専用の書庫だから設置してある机はせいぜいが並んで座って2人までのスペースだ。
椅子を引いて腰かけ、息を吐いてから机の上でもう1度ゆっくりと開いた。
ーーーー
孤王は古の王の1人。
孤王は古王達の全てを知り、故に畏怖される比類なき王。
孤王は最強で、最凶。
孤王は世界で1人で、独りで、孤り。
孤王は調整者で、転換者。
孤王は終末に生まれて、産まれる。
孤王は選ばれた身代わりの欠陥品。
孤王は愛を宿して、愛を得ない。
孤王は宿す愛の為に奪われる。
世界を支えられるのは、孤王の犠牲だけ。
役目を終えた孤王はその果てに何を見る?
絶望?
死?
怒り?
孤王・・・・何も期待しないあなたに、この世界の愛を。
ーーーーー
たった数ページの、今はもう使われなくなった亡国の文字で書きつづられた絵本。
何の為に書かれた絵本かも今ではわからない。
絵本の中にはいくつかの絵が描かれている。
まず、初めのページ。
明るい太陽と水面が描かれている。
水面には円を描くように7本の剣が突き刺さっていて、全ての剣の柄には王冠が引っかけられている。
剣の刀身の色は赤、青、緑、茶、銀、黒、金。
そして円の中央にクリーム色のローブを羽織って立つ人物。
これが孤王だろうか?
フードを目深に被っているせいで髪の色や種族はわからない。
露出する肌の部分は黒く塗られていて表情も描かれていない。
白く分厚い本を胸に抱えていて、足元から7つの影が剣に向かって延びている。
それぞれの影の色は剣と同じ色だ。
抱えた本の真ん中に紫の丸い····石のような何かが····埋め込まれているという事だろうか?
そして次のページ。
背景が赤く塗られている。
仰向けに倒れた孤王に5色の剣が突き刺さり、流れる血で水が朱に染まっている。
刺さっていない黒い剣は孤王の影と同化しようとしている?
金の剣は孤王が刃の部分を握っている。
朱色の水は流れて何かに注がれているようだが、その部分が何者かに削り取られていてわからない。
前のページで抱えていた本はどこにも見当たらない。
そして最後のページ。
背景は夜かな。
丸い満月とアリリアによく似た満開の、小花の咲き誇る木が描かれていた。
私の知るアリリアの花よりももっと白く、小さい。
地面はその花弁が落ち、薄桃色の絨毯のようだ。
その木を下から見上げている後ろ姿の孤王のローブの縁にも、小さなその花が模様のように描かれている。
見つめる視線の先には折れたような枝。
孤王の周りには7つの丸い珠が見守るように囲んで浮いていて、色は剣の色と同じだ。
いや、もう1つ。
右肩に紫の丸い珠が乗っている。
ふう、と息を吐く。
見れば書かれている内容も、描かれた絵も思い出した。
そっと本を閉じ、鑑定魔法をかけてみたけれど、何故か跳ね返された。
表紙に両手を置き、微量の魔力を流して残滓を探る。
するとほんの少しの小さな綻びを見つけた。
そこへゆっくりと、慎重に、細く魔力を流してみる。
自分の魔力を綻び部分から本全体に薄く纏わせてから、再び鑑定魔法をかけてみた。
「これは····闇属性の忘却魔法?
保存魔法はかかっていなかったのかな。
いや、かけられなかった?
相互作用かな」
殆どの本には劣化を防止するのに保存魔法をかけてあるけれど····。
ぶつぶつと独り言を言いながら本の魔法が発動しないように先にかかっている本の魔力を自分の纏わせた魔力で覆いつつ、再びゆっくりと本を開いてみる。
どうやら書かれている文字にも、描かれている絵にも忘却魔法が細かくかけられているようだ。
「中の内容に特に変化は····いや、最後のページにに何か····これは····」
文字のような、記号のような。
私の知らない何かが浮かび上がっている。
懐から紙と万年筆を取り出して書き写した。
「何て読むんだろう?」
念の為に本のそれにも魔力を纏わせてみたけれど、ただの文字か記号かを書いているだけのようだ。
浮かび上がった原理は不明だけど、闇属性の魔法を抑えたから認識できたのかもしれない。
ひとまず本を閉じて纏わせた魔力を本の綻び部分から抜き取るように、ゆっくりと引き上げていく。
失敗すれば中の文字や絵が消えてしまう場合もある。
とにかく最後まで気を抜かず、慎重にする。
自分の全ての魔力を本から引き上げた後、本を元の場所へ戻してもう1度座った。
目を瞑り、暫く中の内容を反芻してみる。
「どうやら今度は覚えているみたいだ」
ほっと安堵する。
記憶が確かなら、以前は見て本棚に戻した時点で忘れてしまったように思う。
それにしても1番不思議なのは、何故すっかり忘れていたあの絵本を、あのタイミングで思い出したかだ。
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