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319.源泉とできる執事長と専属侍女
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「うわあ····これが、源泉かあ」
ポコポコと湧いているのは源泉。
もくもくしているのは湯気だ。
辺りは温泉ならではの硫黄の香りが漂っている。
かなりの湯量が複数から湧いていて、白濁した熱湯の大きな泉みたいになっている。
お湯質は多分酸性かな?
火山性の温泉だと思う。
他にもう1つ源泉があるらしいから、後日そっちにも行ってみよっと。
「お嬢様、あまり覗きこむと危ないですよ」
「えへへ、セバスチャン。
あれ、用意できてる?」
泉を覗きこむ僕に注意を促すのはグレインビル邸のできる執事長、セバスチャン。
「もちろんでございます。
浸せばよろしいので?」
「うん!
温泉卵にするの!」
「はあ、何とお可愛らしいお顔か。
今すぐこの爺めが浸しましょうぞ」
セバスチャンが執事服姿で背負っていた大槍を手にしてガッと泉近くの地面に突き刺す。
レイヤード義兄様が何年も前にセバスチャンの還暦のお祝いに贈ったマジックバックから麻袋を取り出して紐を槍の柄の部分に括りつけた。
何で執事長が大槍を背負ってるのかと思ってたけど、こういう事だったんだね。
「お嬢様、お待ちの間はこちらでお待ちになりますか?」
そう提案してきたのはできる専属侍女のニーアだよ。
木陰に敷物を敷いて、それが飛んで行かないように色々入ってる籠を重しにして待機してる。
「そうだね。
従兄様達もそろそろ追いつくだろうから、少しお昼寝しておこうかな」
「「かしこまりました」」
僕の言葉にできる2人は頷いてくれた。
僕達は今ファムント領の火山に来ているんだ。
ちなみに従兄様が邸に来た翌日にグレインビル領を出て、今が5日目。
一昨日からファムント侯爵邸にお泊りしてるんだ。
昨日は丸1日ゆっくりして、今日はルドルフ王子と同い年の次期当主候補のお姉様の案内で物見遊山がてら従兄様と僕とを邸から1番近い源泉に連れて来てくれてる。
ここに来る許可をもぎ取る事はできたけど、義兄様達はお仕事が忙しいし、義父様も領主でしょ?
家族の誰かに付き添いをお願いするとなると調整に時間がかかるんだ。
そちらのお仕事をしなきゃいけない。
それに僕の体調がいつ崩れるかもわからないから、思い立ったが吉日とばかりにすぐに旅支度して出ちゃった。
もちろん義父様は渋ってたんだけどね。
グレインビル邸の執事長、セバスチャンとニーアがあの場で同行を表明してくれた事で渋々だけど許可してくれたよ。
先代のグレインビル侯爵だったお祖父様が現役でバリバリ当主してた頃からずっと仕えてくれてたセバスチャンが珍しく後押ししてくれたのは心強かった。
セバスチャンは義父様が少年の頃から面倒を見てくれてたらしくて、あまり強くは出られない唯一といってもいいくらい貴重な人材なんだ。
もちろん許可してくれた理由はいくつかあるんだけど、大きな理由は2つだと思う。
1つは冬に思いの外僕の体調が不安定になって痩せてしまった事。
といっても秋頃まではヒュイルグ国に渡航する前の体重に戻っていたんだよ。
でもそれ以上増える前に、冬に体調を崩してまた痩せちゃったんだ。
もちろん帰国直後よりは増えてるけどね。
ただ、ほんの少し背が伸びているのに体重がそれはまずいって邸の使用人達も含めて皆が心配してるみたい。
セバスチャンが付き添ってでも僕の後押ししてくれたのは、きっと湯治に期待してるんだと思う。
あちらの世界ならもう定年退職してても不思議じゃないくらいの年齢のお爺ちゃんなのに、心配かけて申し訳ない。
それともう1つは従兄様の絶妙にあざと可愛いお顔じゃないかと僕は推測している。
あの日、義父様にお願いする従兄様のお顔はとっても義母様に似ていたもの。
「お嬢様、お加減は変わりありませんか?」
「もちろん。
途中まではディープ君が乗せてくれてたし、小道はセバスチャンが抱っこしてくれたもの」
敷布に座って用意されてたクッションにポフリと横になると、ニーアが心配そうに尋ねてくる。
この旅で僕のお供をしてくれてるのはこの2人の他にお馬さん3兄妹と御者をしてくれてるお馬の師匠がいるよ。
急げばお馬さん3兄妹と馬車の性能で2日もかからない道のりを丸々3日かけて来たからね。
もちろん少し疲れたけど、昨日は1日ゆっくりしたから体調はいいんだ。
グレインビル領から出る時は従兄様と馬車を別々に走らせて来たんだけど、今日はうちのお馬さんや馬車を使ってるから半日馬車移動してても皆元気だったよ。
途中からは山道になったからさすがに馬車は待機させて小道に入るまではお馬さん3兄妹にそれぞれ乗馬して登ったんだ。
ちなみに従兄様とお姉様は長女の背中に乗ったんだ。
僕はセバスチャンと長男に、ニーアは荷物と一緒に次女の背中に跨ってたよ。
小道に入ってからはくねくね細い山道を徒歩になったから、僕はセバスチャンに抱っこされて移動、ニーアは荷物を持って移動した。
で、細い山道は各自のペースで歩くのが大事だからと執事服と侍女服を着たこの2人が、僕と荷物をそれぞれ抱えて自分のペースでスタスタ前進。
単身で歩いてる従兄様とお姉様をいつの間にか振り切って先に着いてしまったけど、まだしばらく来なさそう。
で、温泉卵を作り始めたのが今ってわけ。
※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
いつもご覧いただきありがとうございます。
お気に入り登録にはいつも感謝しています。
これからしばらく投稿時間がランダムになりそうです。
同時進行中の他の作品もストック無しでほぼ毎日投稿しているので、出来た物から順次投稿していきます。
なるべく毎日投稿できるように頑張りますが、できない時は申し訳ありません。
ポコポコと湧いているのは源泉。
もくもくしているのは湯気だ。
辺りは温泉ならではの硫黄の香りが漂っている。
かなりの湯量が複数から湧いていて、白濁した熱湯の大きな泉みたいになっている。
お湯質は多分酸性かな?
火山性の温泉だと思う。
他にもう1つ源泉があるらしいから、後日そっちにも行ってみよっと。
「お嬢様、あまり覗きこむと危ないですよ」
「えへへ、セバスチャン。
あれ、用意できてる?」
泉を覗きこむ僕に注意を促すのはグレインビル邸のできる執事長、セバスチャン。
「もちろんでございます。
浸せばよろしいので?」
「うん!
温泉卵にするの!」
「はあ、何とお可愛らしいお顔か。
今すぐこの爺めが浸しましょうぞ」
セバスチャンが執事服姿で背負っていた大槍を手にしてガッと泉近くの地面に突き刺す。
レイヤード義兄様が何年も前にセバスチャンの還暦のお祝いに贈ったマジックバックから麻袋を取り出して紐を槍の柄の部分に括りつけた。
何で執事長が大槍を背負ってるのかと思ってたけど、こういう事だったんだね。
「お嬢様、お待ちの間はこちらでお待ちになりますか?」
そう提案してきたのはできる専属侍女のニーアだよ。
木陰に敷物を敷いて、それが飛んで行かないように色々入ってる籠を重しにして待機してる。
「そうだね。
従兄様達もそろそろ追いつくだろうから、少しお昼寝しておこうかな」
「「かしこまりました」」
僕の言葉にできる2人は頷いてくれた。
僕達は今ファムント領の火山に来ているんだ。
ちなみに従兄様が邸に来た翌日にグレインビル領を出て、今が5日目。
一昨日からファムント侯爵邸にお泊りしてるんだ。
昨日は丸1日ゆっくりして、今日はルドルフ王子と同い年の次期当主候補のお姉様の案内で物見遊山がてら従兄様と僕とを邸から1番近い源泉に連れて来てくれてる。
ここに来る許可をもぎ取る事はできたけど、義兄様達はお仕事が忙しいし、義父様も領主でしょ?
家族の誰かに付き添いをお願いするとなると調整に時間がかかるんだ。
そちらのお仕事をしなきゃいけない。
それに僕の体調がいつ崩れるかもわからないから、思い立ったが吉日とばかりにすぐに旅支度して出ちゃった。
もちろん義父様は渋ってたんだけどね。
グレインビル邸の執事長、セバスチャンとニーアがあの場で同行を表明してくれた事で渋々だけど許可してくれたよ。
先代のグレインビル侯爵だったお祖父様が現役でバリバリ当主してた頃からずっと仕えてくれてたセバスチャンが珍しく後押ししてくれたのは心強かった。
セバスチャンは義父様が少年の頃から面倒を見てくれてたらしくて、あまり強くは出られない唯一といってもいいくらい貴重な人材なんだ。
もちろん許可してくれた理由はいくつかあるんだけど、大きな理由は2つだと思う。
1つは冬に思いの外僕の体調が不安定になって痩せてしまった事。
といっても秋頃まではヒュイルグ国に渡航する前の体重に戻っていたんだよ。
でもそれ以上増える前に、冬に体調を崩してまた痩せちゃったんだ。
もちろん帰国直後よりは増えてるけどね。
ただ、ほんの少し背が伸びているのに体重がそれはまずいって邸の使用人達も含めて皆が心配してるみたい。
セバスチャンが付き添ってでも僕の後押ししてくれたのは、きっと湯治に期待してるんだと思う。
あちらの世界ならもう定年退職してても不思議じゃないくらいの年齢のお爺ちゃんなのに、心配かけて申し訳ない。
それともう1つは従兄様の絶妙にあざと可愛いお顔じゃないかと僕は推測している。
あの日、義父様にお願いする従兄様のお顔はとっても義母様に似ていたもの。
「お嬢様、お加減は変わりありませんか?」
「もちろん。
途中まではディープ君が乗せてくれてたし、小道はセバスチャンが抱っこしてくれたもの」
敷布に座って用意されてたクッションにポフリと横になると、ニーアが心配そうに尋ねてくる。
この旅で僕のお供をしてくれてるのはこの2人の他にお馬さん3兄妹と御者をしてくれてるお馬の師匠がいるよ。
急げばお馬さん3兄妹と馬車の性能で2日もかからない道のりを丸々3日かけて来たからね。
もちろん少し疲れたけど、昨日は1日ゆっくりしたから体調はいいんだ。
グレインビル領から出る時は従兄様と馬車を別々に走らせて来たんだけど、今日はうちのお馬さんや馬車を使ってるから半日馬車移動してても皆元気だったよ。
途中からは山道になったからさすがに馬車は待機させて小道に入るまではお馬さん3兄妹にそれぞれ乗馬して登ったんだ。
ちなみに従兄様とお姉様は長女の背中に乗ったんだ。
僕はセバスチャンと長男に、ニーアは荷物と一緒に次女の背中に跨ってたよ。
小道に入ってからはくねくね細い山道を徒歩になったから、僕はセバスチャンに抱っこされて移動、ニーアは荷物を持って移動した。
で、細い山道は各自のペースで歩くのが大事だからと執事服と侍女服を着たこの2人が、僕と荷物をそれぞれ抱えて自分のペースでスタスタ前進。
単身で歩いてる従兄様とお姉様をいつの間にか振り切って先に着いてしまったけど、まだしばらく来なさそう。
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