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344.調子にのったイタチの末路
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「アリーが紹介してくれた方と今度会うわ。
アリーにも会いたがっているから、その日は体調が良ければ一緒に食事をしましょう」
ジェン様ってば、またのぼせ始めたらしい。
お顔が薄っすら赤くなってきてる。
アドバイザーになってすぐ、そういう事の先駆者的な僕の知り合いにお手紙出してたんだ。
ただ忙しい人だから、もし時間ができそうならそっちからジェン様に連絡してあげてって言ってたんだ。
一応身分的には向こうが上だし、上の人が許可をしないのに下の人からコンタクト取るのはしない方がいいんだ。
今度会うって事は、ひとまずはまとまったんだね。
「もちろんです!
ふふふ、久しぶりに会うから楽しみ」
去年の夏頃から会ってなかったけど、お手紙でやりとりはしてたんだよ。
「あら、何だか妬けちゃうわ。
今は私のアドバイザーだって忘れないで?」
そう言って細いけど、多分剣も握って鍛えてる形の良い人差し指がニーアの肩にぶら下がってるイタチな僕のオデコをちょいちょいっと撫でて、下顎もくいくいっと撫でる。
僕達だいぶ打ち解けたでしょ。
もうスーパーモデルは僕に人見知りはしなくなってるよ。
「んふふ、擽ったい!」
「はあ、もう、何なの。
萌え殺されそう。
抱っこして撫で回したい····ああ、あわ良くば····」
僕のイタチの愛らしさにメロメロみたいだね。
今度は僕の細長い体に手を伸ばし····。
「申し訳ございません」
「あら」
僕を首に引っかけたニーアが一歩下がる。
「ニーア?」
「そろそろ入られませんと、いくら体を毛皮とポンチョで覆っていても冷えてしまいます」
は!
そうだ!
ちらりと視線を下に落とす。
まず目に入ったのは白くてつるんとした石で作った石灰棚を模したいくつもの浴槽。
真ん中に階段を作ってて、浴槽は左右に分かれて大きさも形もランダムに作ってる。
浴槽自体は浅いよ。
小さい子供でも溺れるのは難しいと思う。
全体的に浴槽の形は楕円形が多いかな。
階段は滑りにくくするのに枕木もちゃんと設置したんだね。
浴槽は魔法で鍾乳石を加工して作ったって聞いたけど、どうやったんだろうね?
魔法ってこういう時は便利だ。
源泉から引いてきた温泉が滝のように左右の1番上の浴槽に注ぎ込んでる。
上の浴槽から溢れた温泉が徐々に下の浴槽に落ちていって、最後は川へ流してるんだ。
コンセプトはあちらの世界で僕が入った秘境の天然温泉だよ。
秘境っていっても人気で知名度もまあまあ高かったけどね。
補助的に左右の1番端っこの浴槽の横からも熱めの温水が注がれてる。
向こう側よりこちら側の高さはのほうが高いんだ。
それは元々がこの廃村が山の麓にあった事と、川を挟んで向こう側が丘のようになってた地形を利用したから。
元は小高い山が連なってたんだろうけど、隣国とまだまだ紛争をおこしてた時に見通しを良くしようと削って整地したんだって。
向こうの浴槽は3つ。
真ん中に四角い人工的なとっても広い浴槽と、左右にその半分くらいの広さの浴槽を設置中だ。
真ん中は深そう。
人属の成人男性の胸下くらいの深さかな。
僕なら間違いなく顔が半分浸かっちゃう。
立ち湯タイプだね。
他の浴槽は腰くらい。
後は完成してからのお楽しみだ。
こっちのお湯の温度は上の段ほど熱く、下の段になるほどぬるくなるから、好みの温度で好きな浴槽に浸かれるよ。
ほら、人種って本当に様々でしょう。
獣人属に人属に魔人属。
更にそこから細かく分かれていくと、最適温度なんて合わせていられないもの。
「あれ、よく見たら浴槽の底が黒い?」
「そうなの。
溶岩プレートを加工して、底に敷き詰めたのよ」
「ふふふ、体が温まりそう」
向こう側は目に見えてプレートを使っているのがわかるけど、こっちにも使ってたんだ。
お湯が白濁タイプだからかよく見ないと気づかなかった。
「ニーア、洗浄、洗浄、早く、早く」
「かしこまりました」
もう待てない!
温泉が僕を手招きしている!
そんな僕をニーアはさっと綺麗にして、優しく肩から下ろしてくれた。
「お嬢様、いつの間に」
「あら」
2人が驚くのも無理はない。
僕の着ぐるみの紐は既に解いていたんだから。
イタチなのを良いことに、着地と同時に着ぐるみを脱いで数段下に走ってポチャンと飛びこんだ。
ふっふっふ。
忍者のように一瞬で脱いだ僕って凄いでしょ!
こんな事もあろうかと、こっそり1人で練習した甲斐があったよ。
魔法があればかけ湯はいらないから、これまた便利だよね。
睨んだ通り、やっぱりこの辺りの浴槽の温度がちょうどいい。
イタチボディに1番上の浴槽は熱すぎる。
「ぷはっ!
気持ちいい!」
1度潜って顔を上げた瞬間叫ぶ。
「お嬢様····」
「元気よく泳ぐイタチ····イイ」
いつも無表情がデフォルトなのニーアがどことなく呆れてるように見えるのは気のせいだ。
そういう事にしておこう。
ジェン様は途中からカタコトになってまたお鼻押さえてしゃがんじゃった。
大丈夫かな?
なんて思いながらもできたばかりの浴槽を犬かきならぬ、イタチかきで泳ぎまくった。
で、最後はのぼせてダウン。
はしゃぎすぎた。
帰りはニーアの左肩に言葉そのまま引っかけられて帰った。
····その後、1週間ベッドで過ごした。
調子にのり過ぎた。
アリーにも会いたがっているから、その日は体調が良ければ一緒に食事をしましょう」
ジェン様ってば、またのぼせ始めたらしい。
お顔が薄っすら赤くなってきてる。
アドバイザーになってすぐ、そういう事の先駆者的な僕の知り合いにお手紙出してたんだ。
ただ忙しい人だから、もし時間ができそうならそっちからジェン様に連絡してあげてって言ってたんだ。
一応身分的には向こうが上だし、上の人が許可をしないのに下の人からコンタクト取るのはしない方がいいんだ。
今度会うって事は、ひとまずはまとまったんだね。
「もちろんです!
ふふふ、久しぶりに会うから楽しみ」
去年の夏頃から会ってなかったけど、お手紙でやりとりはしてたんだよ。
「あら、何だか妬けちゃうわ。
今は私のアドバイザーだって忘れないで?」
そう言って細いけど、多分剣も握って鍛えてる形の良い人差し指がニーアの肩にぶら下がってるイタチな僕のオデコをちょいちょいっと撫でて、下顎もくいくいっと撫でる。
僕達だいぶ打ち解けたでしょ。
もうスーパーモデルは僕に人見知りはしなくなってるよ。
「んふふ、擽ったい!」
「はあ、もう、何なの。
萌え殺されそう。
抱っこして撫で回したい····ああ、あわ良くば····」
僕のイタチの愛らしさにメロメロみたいだね。
今度は僕の細長い体に手を伸ばし····。
「申し訳ございません」
「あら」
僕を首に引っかけたニーアが一歩下がる。
「ニーア?」
「そろそろ入られませんと、いくら体を毛皮とポンチョで覆っていても冷えてしまいます」
は!
そうだ!
ちらりと視線を下に落とす。
まず目に入ったのは白くてつるんとした石で作った石灰棚を模したいくつもの浴槽。
真ん中に階段を作ってて、浴槽は左右に分かれて大きさも形もランダムに作ってる。
浴槽自体は浅いよ。
小さい子供でも溺れるのは難しいと思う。
全体的に浴槽の形は楕円形が多いかな。
階段は滑りにくくするのに枕木もちゃんと設置したんだね。
浴槽は魔法で鍾乳石を加工して作ったって聞いたけど、どうやったんだろうね?
魔法ってこういう時は便利だ。
源泉から引いてきた温泉が滝のように左右の1番上の浴槽に注ぎ込んでる。
上の浴槽から溢れた温泉が徐々に下の浴槽に落ちていって、最後は川へ流してるんだ。
コンセプトはあちらの世界で僕が入った秘境の天然温泉だよ。
秘境っていっても人気で知名度もまあまあ高かったけどね。
補助的に左右の1番端っこの浴槽の横からも熱めの温水が注がれてる。
向こう側よりこちら側の高さはのほうが高いんだ。
それは元々がこの廃村が山の麓にあった事と、川を挟んで向こう側が丘のようになってた地形を利用したから。
元は小高い山が連なってたんだろうけど、隣国とまだまだ紛争をおこしてた時に見通しを良くしようと削って整地したんだって。
向こうの浴槽は3つ。
真ん中に四角い人工的なとっても広い浴槽と、左右にその半分くらいの広さの浴槽を設置中だ。
真ん中は深そう。
人属の成人男性の胸下くらいの深さかな。
僕なら間違いなく顔が半分浸かっちゃう。
立ち湯タイプだね。
他の浴槽は腰くらい。
後は完成してからのお楽しみだ。
こっちのお湯の温度は上の段ほど熱く、下の段になるほどぬるくなるから、好みの温度で好きな浴槽に浸かれるよ。
ほら、人種って本当に様々でしょう。
獣人属に人属に魔人属。
更にそこから細かく分かれていくと、最適温度なんて合わせていられないもの。
「あれ、よく見たら浴槽の底が黒い?」
「そうなの。
溶岩プレートを加工して、底に敷き詰めたのよ」
「ふふふ、体が温まりそう」
向こう側は目に見えてプレートを使っているのがわかるけど、こっちにも使ってたんだ。
お湯が白濁タイプだからかよく見ないと気づかなかった。
「ニーア、洗浄、洗浄、早く、早く」
「かしこまりました」
もう待てない!
温泉が僕を手招きしている!
そんな僕をニーアはさっと綺麗にして、優しく肩から下ろしてくれた。
「お嬢様、いつの間に」
「あら」
2人が驚くのも無理はない。
僕の着ぐるみの紐は既に解いていたんだから。
イタチなのを良いことに、着地と同時に着ぐるみを脱いで数段下に走ってポチャンと飛びこんだ。
ふっふっふ。
忍者のように一瞬で脱いだ僕って凄いでしょ!
こんな事もあろうかと、こっそり1人で練習した甲斐があったよ。
魔法があればかけ湯はいらないから、これまた便利だよね。
睨んだ通り、やっぱりこの辺りの浴槽の温度がちょうどいい。
イタチボディに1番上の浴槽は熱すぎる。
「ぷはっ!
気持ちいい!」
1度潜って顔を上げた瞬間叫ぶ。
「お嬢様····」
「元気よく泳ぐイタチ····イイ」
いつも無表情がデフォルトなのニーアがどことなく呆れてるように見えるのは気のせいだ。
そういう事にしておこう。
ジェン様は途中からカタコトになってまたお鼻押さえてしゃがんじゃった。
大丈夫かな?
なんて思いながらもできたばかりの浴槽を犬かきならぬ、イタチかきで泳ぎまくった。
で、最後はのぼせてダウン。
はしゃぎすぎた。
帰りはニーアの左肩に言葉そのまま引っかけられて帰った。
····その後、1週間ベッドで過ごした。
調子にのり過ぎた。
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