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360.成長した妹〜ガウディードside
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「本日はアリアチェリーナ様のご要望でジャガンダ国のコース料理をご用意致しました。
食べにくければ、ナイフやフォークでお召し上がり下さい」
あの後初めましての体で俺達男性陣も挨拶をすれば、レイチェル嬢に促されるままに向かい合ってテーブルに着いた。
イリャス=ハヤカワと名乗った兎属の少女がそう切り出したと同時に、アリーの執事長と専属侍女が給仕を始める。
どうやら用意は目の前に座るジャガンダ側のこの2人、給仕はアリー側で会食を行うらしい。
遠国のコース料理の給仕をテキパキこなすこの使用人達の能力がハイスペック過ぎないか。
まあそれは今に始まった事じゃない。
グレインビル邸で働く使用人達だ。
今さら驚かないぞ。
それよりも目の前に座る彼女達だ。
直前まで秘密にされていた事といい、内々というよりはむしろお忍びのような形を取っている気がする。
そこでふと、あの王太子の婚約話が頭をかすめる。
噂は色々と出回っていても、なかなか確信を得るような情報が入ってこないんだ。
情報管理をかなり厳重にされているのは間違いない。
けれど、もしかして····。
『今日を逃すとまともに会う機会はずっと先になる人なんだけど、今は事前に誰とは言えないんだ』
どこか申し訳無さそうにぎりぎりまで誰と会うのか教えてもらえず、今も赤の他人として接しているのは····。
「これからお出しする料理はジャガンダ国でお客様をおもてなしする際の、昔からあるコース料理の1つです。
ですがお客様とのひと時を楽しむ為のものですので、ジャガンダ国の礼儀作法はお考えいただく必要はございません。
まずは小さめのお膳をお出しした後、スープやいくつかのメイン料理、甘味とお茶へと続きます。
お茶はジャガンダ国で流通している抹茶をお出しする予定です」
ディア=タチバナと名乗った、自分と血の繋がりを感じさせる顔立ちの彼女が隣の少女の言葉を補足している間にも、お膳は俺達に行き渡る。
「美味しそう。
お2人共私のリクエストを聞いて頂いてありがとうございます」
「「とんでもございません」」
料理を前にわくわくした表情を見せるアリーに、目の前の2人は揃って柔らかな微笑みで謙遜の意を示す。
「従兄様はカフェの経営者として常に新しい事に挑戦していますの。
今ではアデライド国のカフェ文化の先駆者的な経営者として有名ですのよ」
「まあ。
それはとても····とても努力されてらっしゃるのですね」
「····ありがとう、ございます」
いつも何かしら貴重な情報をもたらしてくれるアリーにそう言われて悪い気はしない。
けれど真正面に座る、昔から良く知る彼女の茶色の目が懐かしむように、どこか誇らしげに細められて感慨深く紡がれた言葉に、目頭が熱くなりそうだ。
初対面の者として礼を伝えようとしたけど、一瞬言葉がつまりそうになってしまった。
どちらともなく目が合い、お互い昔のように笑う。
「コード伯爵令息はお父君もよく褒めてらっしゃるくらいに勤勉で向上心をお持ちですから、学園の卒業後にきっと国をまたいだご活躍をされますわ」
「左様ですか。
きっと昔から勤勉で、努力家で、優しい方なのだと確信しております。
今後のご活躍を私もお祈りしております」
「····あなたも、これからのご活躍はもちろん、なによりご健勝でいらっしゃるのを心から願っております」
確か彼の妹は病弱だったと聞いている。
目の前の少女は見た限りでは健康的だから、それを克服できたみたいだ。
元々は没落貴族として生きてきたから、貴族としての礼儀礼節は学べない日々をすごしていたんじゃないだろうか。
今のこの少女は貴族然としていて、間違いなく多大なる努力によって身につけた所作だとわかる。
それくらい迷いのない自信を持った言動だ。
「レイチェル様はもちろん、お2人もこの国の文化を作り出す方々なのは間違いありませんのよ。
当然にあまり知られていない遠国のジャガンダ国の文化にも触れる機会がある方がよろしいかと思いますわ。
特にジャガンダ国の文化はこの数年はもちろん、これからは今よりもっと増えるはずですもの。
事前にジャガンダ国のおもてなし文化に接しておけば、きっとあらゆる場で話題にできましてよ」
言外にジャガンダ国の礼儀作法も知っておけと言いたいんだろう。
それにしても····。
ディア、クラウディア。
妹は俺の知るあの頃とは比べものにならないくらいに成長したんだな。
所作の一つ一つが洗練され、口調も以前の甘えた令嬢とは違う、ジャガンダ国の礼儀にのっとった話し方を崩していない。
カイヤ直々に色々と矯正してくれているという話は本当だったようだ。
そして恐らくカイヤとアリーの2人が矯正に合格を出したから、どういう経緯かはわからないがジャガンダ国の貴族の養女となり、この国に戻った。
このままこの国に留まるかどうかは、恐らく後見役だと言っていた斜め向かいのレイチェル嬢の判断も含まれているんじゃないだろうか。
彼女は社交界の花と呼ばれ、ファッションの街ブルグルと囁かれ始めている自領の広告塔だ。
当然この国だけでなく近隣諸国の貴族としての礼儀作法には精通している。
過去に王家へ嫁ぎ、降嫁もされている我が国の歴史ある筆頭公爵家のご令嬢方とも交流があるのは伊達ではない。
食べにくければ、ナイフやフォークでお召し上がり下さい」
あの後初めましての体で俺達男性陣も挨拶をすれば、レイチェル嬢に促されるままに向かい合ってテーブルに着いた。
イリャス=ハヤカワと名乗った兎属の少女がそう切り出したと同時に、アリーの執事長と専属侍女が給仕を始める。
どうやら用意は目の前に座るジャガンダ側のこの2人、給仕はアリー側で会食を行うらしい。
遠国のコース料理の給仕をテキパキこなすこの使用人達の能力がハイスペック過ぎないか。
まあそれは今に始まった事じゃない。
グレインビル邸で働く使用人達だ。
今さら驚かないぞ。
それよりも目の前に座る彼女達だ。
直前まで秘密にされていた事といい、内々というよりはむしろお忍びのような形を取っている気がする。
そこでふと、あの王太子の婚約話が頭をかすめる。
噂は色々と出回っていても、なかなか確信を得るような情報が入ってこないんだ。
情報管理をかなり厳重にされているのは間違いない。
けれど、もしかして····。
『今日を逃すとまともに会う機会はずっと先になる人なんだけど、今は事前に誰とは言えないんだ』
どこか申し訳無さそうにぎりぎりまで誰と会うのか教えてもらえず、今も赤の他人として接しているのは····。
「これからお出しする料理はジャガンダ国でお客様をおもてなしする際の、昔からあるコース料理の1つです。
ですがお客様とのひと時を楽しむ為のものですので、ジャガンダ国の礼儀作法はお考えいただく必要はございません。
まずは小さめのお膳をお出しした後、スープやいくつかのメイン料理、甘味とお茶へと続きます。
お茶はジャガンダ国で流通している抹茶をお出しする予定です」
ディア=タチバナと名乗った、自分と血の繋がりを感じさせる顔立ちの彼女が隣の少女の言葉を補足している間にも、お膳は俺達に行き渡る。
「美味しそう。
お2人共私のリクエストを聞いて頂いてありがとうございます」
「「とんでもございません」」
料理を前にわくわくした表情を見せるアリーに、目の前の2人は揃って柔らかな微笑みで謙遜の意を示す。
「従兄様はカフェの経営者として常に新しい事に挑戦していますの。
今ではアデライド国のカフェ文化の先駆者的な経営者として有名ですのよ」
「まあ。
それはとても····とても努力されてらっしゃるのですね」
「····ありがとう、ございます」
いつも何かしら貴重な情報をもたらしてくれるアリーにそう言われて悪い気はしない。
けれど真正面に座る、昔から良く知る彼女の茶色の目が懐かしむように、どこか誇らしげに細められて感慨深く紡がれた言葉に、目頭が熱くなりそうだ。
初対面の者として礼を伝えようとしたけど、一瞬言葉がつまりそうになってしまった。
どちらともなく目が合い、お互い昔のように笑う。
「コード伯爵令息はお父君もよく褒めてらっしゃるくらいに勤勉で向上心をお持ちですから、学園の卒業後にきっと国をまたいだご活躍をされますわ」
「左様ですか。
きっと昔から勤勉で、努力家で、優しい方なのだと確信しております。
今後のご活躍を私もお祈りしております」
「····あなたも、これからのご活躍はもちろん、なによりご健勝でいらっしゃるのを心から願っております」
確か彼の妹は病弱だったと聞いている。
目の前の少女は見た限りでは健康的だから、それを克服できたみたいだ。
元々は没落貴族として生きてきたから、貴族としての礼儀礼節は学べない日々をすごしていたんじゃないだろうか。
今のこの少女は貴族然としていて、間違いなく多大なる努力によって身につけた所作だとわかる。
それくらい迷いのない自信を持った言動だ。
「レイチェル様はもちろん、お2人もこの国の文化を作り出す方々なのは間違いありませんのよ。
当然にあまり知られていない遠国のジャガンダ国の文化にも触れる機会がある方がよろしいかと思いますわ。
特にジャガンダ国の文化はこの数年はもちろん、これからは今よりもっと増えるはずですもの。
事前にジャガンダ国のおもてなし文化に接しておけば、きっとあらゆる場で話題にできましてよ」
言外にジャガンダ国の礼儀作法も知っておけと言いたいんだろう。
それにしても····。
ディア、クラウディア。
妹は俺の知るあの頃とは比べものにならないくらいに成長したんだな。
所作の一つ一つが洗練され、口調も以前の甘えた令嬢とは違う、ジャガンダ国の礼儀にのっとった話し方を崩していない。
カイヤ直々に色々と矯正してくれているという話は本当だったようだ。
そして恐らくカイヤとアリーの2人が矯正に合格を出したから、どういう経緯かはわからないがジャガンダ国の貴族の養女となり、この国に戻った。
このままこの国に留まるかどうかは、恐らく後見役だと言っていた斜め向かいのレイチェル嬢の判断も含まれているんじゃないだろうか。
彼女は社交界の花と呼ばれ、ファッションの街ブルグルと囁かれ始めている自領の広告塔だ。
当然この国だけでなく近隣諸国の貴族としての礼儀作法には精通している。
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