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364.臣下の礼と贈り物
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『····ああ····いや、そうか、シェリの言う通りだ。 シェリ····可愛く賢い····俺の姫』
アレの声の気持ち悪さばかりに目がいって、すっかり忘れてた。
第3王子の姿は従兄様の背中にくっついてて見てなかったけど、彼の声は熱に浮かされたような、ぼうっとしたものじゃなかったかな?
『ああ····シェリは····優しいですね』 『ふっ····そうだな』
そうだ、《バッチ来い電撃君(改)》にやられて気絶しちゃったあの従者っぽい彼も同じように熱に浮かされたような声だった。
あれ、もしかして····。
「アリー?
黙ってしまって、どうしましたの?」
「具合が悪くなったのかしら?」
はっ、アジアンビューティーと艶女に心配されちゃってる?!
「いえ、平気でしてよ。
それよりそろそろ連れが気になりますので、お暇させていただいてよろしいかしら?」
「ああ、そうね。
とても有意義な時間は過ぎるのが本当に早いわ。
突然時間を取らせていただいて申し訳なかったわ」
「いいえ。
私も1度お会いしたいと思っておりましたもの。
この国でのあの2人の後ろ盾である私の人となりが姫様のお眼鏡にかない、正式に女官として身近に迎え入れるのでしたら、彼女達の事をこれからもよろしくお願い致しますわ」
「····気づいていたのね」
「遠く離れた他国での輿入れに慎重になのは当然の事ですもの。
特に連れて行く者に注意を払わなければ、時に命に関わります。
私の家族ではなく私個人とお会いになる理由があるとすれば、それくらいしかございませんわ。
ですが私はあくまでこの国の辺境を守るグレインビル侯爵家の人間だという事をお忘れなく」
「彼女達を使ってあなたに取り入る事も、逆にあなたが私に取り入る事もない、と?」
「はい。
私は彼女達をカイヤ会長に預ける際の後ろ盾。
それから後にジャガンダ国で養女となったのは私の思惑ではありませんし、彼女達の努力と意志によるものも大きいはず。
ただ、駒としてお使いになる時にはくれぐれも扱いにご注意なさって?
特に片方は私の愛してやまない母の血縁者ですもの」
「····叔母様にも同じ事を言われたわ。
あの2人をこの国に共に連れてきて使う時、本当に注意しないといけないのは最初の後ろ盾だと。
とても優秀な者達だもの。
それにどれほど努力してきたのかはよくわかるわ。
あなたの言葉を心にとどめて側に置くとするわ」
「ありがとうございます」
そう言って、立ち上がり、改めてこの国の臣下の礼を取る。
「遅くなりましたが、我が国の王太子、ギディアス殿下とジャガンダ国の一の姫、シズカ姫のご婚約に、アリアチェリーナ=グレインビルより歓迎と慶びの意をお伝え申し上げます。
今後の両国の発展を心より願っておりますわ」
「そなたの祝辞、しかと受け取りました。
面を上げて。
両国の架け橋となれるよう尽力しましょう」
目が合い、微笑みを交わす。
そうだ……。
「必要な時が来るかもしれませんから、こちらをお贈りしますわ」
この服にも仕込んでおいたマジックポケットから手の平より小さな箱を取り出す。
すっと前に出た熊属のお姉さんにそれを渡せば、お姉さんがまずは中を検分してから姫様に差し出した。
「これは?」
「最新の絶対ガード君(改)です」
「……どなたが名づけたの?」
「んふふ、私です!」
「そ、そう……そういえば、ネーミングセンスがどうとか言って……」
何だろう?
小声だからよく聞こえなかった。
「ア、アリー、効果をご説明して差し上げて?
ね?」
残念な何かのように僕を見る姫様に、どうしてだかレイチェル様が焦ったように促すぞ?
まあいいや。
「そちらは内からも外からも攻撃をガードしてくれるレイヤード兄様の作ってくれた魔具ですの!
うちの兄様はとても、とっても魔具作りのセンスがあって、この国で3本の指にはいるくらいに格好いいんです!
お顔は父様に似ていて、あ、バルトス兄様は母様似です。
もちろん3本のうちの2本は父様、バルトス兄様で、うちの国1番の眉目秀麗な3人……」
「アリー、魔具の、説明を、なさって?」
艶女が僕の説明のこれからという良い所を遮る。
「え、ここからがうちの家族の素晴らしい所……」
「ダメよ。
あなた丸1日でも家族の事なら話せるでしょう」
「全て語るなら最低1週間から必要ですよ?」
「魔具の、説明を、なさって?」
うーん、頑張って1時間以内に短縮しようと思ってたけど、艶女の凄んだお顔の迫力に気圧されちゃった。
「ふふふ、叔母、いえ、カイヤの言っていた通り、家族の事が大好きなのを全く隠さないのね」
「もちろん!」
「あら、とっても良い笑顔だわ。
でもフォンデアス令息達をそろそろ迎えに行くのでしょう?」
「あ、そういえば」
すっかり忘れてた。
アレの声の気持ち悪さばかりに目がいって、すっかり忘れてた。
第3王子の姿は従兄様の背中にくっついてて見てなかったけど、彼の声は熱に浮かされたような、ぼうっとしたものじゃなかったかな?
『ああ····シェリは····優しいですね』 『ふっ····そうだな』
そうだ、《バッチ来い電撃君(改)》にやられて気絶しちゃったあの従者っぽい彼も同じように熱に浮かされたような声だった。
あれ、もしかして····。
「アリー?
黙ってしまって、どうしましたの?」
「具合が悪くなったのかしら?」
はっ、アジアンビューティーと艶女に心配されちゃってる?!
「いえ、平気でしてよ。
それよりそろそろ連れが気になりますので、お暇させていただいてよろしいかしら?」
「ああ、そうね。
とても有意義な時間は過ぎるのが本当に早いわ。
突然時間を取らせていただいて申し訳なかったわ」
「いいえ。
私も1度お会いしたいと思っておりましたもの。
この国でのあの2人の後ろ盾である私の人となりが姫様のお眼鏡にかない、正式に女官として身近に迎え入れるのでしたら、彼女達の事をこれからもよろしくお願い致しますわ」
「····気づいていたのね」
「遠く離れた他国での輿入れに慎重になのは当然の事ですもの。
特に連れて行く者に注意を払わなければ、時に命に関わります。
私の家族ではなく私個人とお会いになる理由があるとすれば、それくらいしかございませんわ。
ですが私はあくまでこの国の辺境を守るグレインビル侯爵家の人間だという事をお忘れなく」
「彼女達を使ってあなたに取り入る事も、逆にあなたが私に取り入る事もない、と?」
「はい。
私は彼女達をカイヤ会長に預ける際の後ろ盾。
それから後にジャガンダ国で養女となったのは私の思惑ではありませんし、彼女達の努力と意志によるものも大きいはず。
ただ、駒としてお使いになる時にはくれぐれも扱いにご注意なさって?
特に片方は私の愛してやまない母の血縁者ですもの」
「····叔母様にも同じ事を言われたわ。
あの2人をこの国に共に連れてきて使う時、本当に注意しないといけないのは最初の後ろ盾だと。
とても優秀な者達だもの。
それにどれほど努力してきたのかはよくわかるわ。
あなたの言葉を心にとどめて側に置くとするわ」
「ありがとうございます」
そう言って、立ち上がり、改めてこの国の臣下の礼を取る。
「遅くなりましたが、我が国の王太子、ギディアス殿下とジャガンダ国の一の姫、シズカ姫のご婚約に、アリアチェリーナ=グレインビルより歓迎と慶びの意をお伝え申し上げます。
今後の両国の発展を心より願っておりますわ」
「そなたの祝辞、しかと受け取りました。
面を上げて。
両国の架け橋となれるよう尽力しましょう」
目が合い、微笑みを交わす。
そうだ……。
「必要な時が来るかもしれませんから、こちらをお贈りしますわ」
この服にも仕込んでおいたマジックポケットから手の平より小さな箱を取り出す。
すっと前に出た熊属のお姉さんにそれを渡せば、お姉さんがまずは中を検分してから姫様に差し出した。
「これは?」
「最新の絶対ガード君(改)です」
「……どなたが名づけたの?」
「んふふ、私です!」
「そ、そう……そういえば、ネーミングセンスがどうとか言って……」
何だろう?
小声だからよく聞こえなかった。
「ア、アリー、効果をご説明して差し上げて?
ね?」
残念な何かのように僕を見る姫様に、どうしてだかレイチェル様が焦ったように促すぞ?
まあいいや。
「そちらは内からも外からも攻撃をガードしてくれるレイヤード兄様の作ってくれた魔具ですの!
うちの兄様はとても、とっても魔具作りのセンスがあって、この国で3本の指にはいるくらいに格好いいんです!
お顔は父様に似ていて、あ、バルトス兄様は母様似です。
もちろん3本のうちの2本は父様、バルトス兄様で、うちの国1番の眉目秀麗な3人……」
「アリー、魔具の、説明を、なさって?」
艶女が僕の説明のこれからという良い所を遮る。
「え、ここからがうちの家族の素晴らしい所……」
「ダメよ。
あなた丸1日でも家族の事なら話せるでしょう」
「全て語るなら最低1週間から必要ですよ?」
「魔具の、説明を、なさって?」
うーん、頑張って1時間以内に短縮しようと思ってたけど、艶女の凄んだお顔の迫力に気圧されちゃった。
「ふふふ、叔母、いえ、カイヤの言っていた通り、家族の事が大好きなのを全く隠さないのね」
「もちろん!」
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