秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

文字の大きさ
381 / 491

380.主従逆転〜ルドルフside

しおりを挟む
「よろしいですか、お嬢様。
いくら獣の姿であっても、お嬢様は人です」
「····はい」

 項垂れて素直に人の言葉で返事をする白いイタチ。

「そろそろ人である自覚をお持ち下さい」
「····はい」

 できる専属侍女は椅子に腰かけ、そんなイタチに向かってこんこんと説教している。
どうやら今日は主従が逆転しているようだ。

 傍で聞いてると、会話の内容がおかしい。

 正しい事を言っているはずなんだが、今の状況に内容がどうしてか入ってこない。

 彼女の対面には同じく椅子に腰かけた執事な爺が座っている。

 執事の服を着ていてもわかる····あの執事、かなり鍛えている。
そして間違いなく戦力的に強い。

 それはそうだろう。

 彼は先代グレインビル家当主の頃から、あの家に仕える執事長だ。

 いや、違う。

 確かその昔、鮮血の戦鬼と呼ばれた猛将だったと記憶している。
前線で活躍し、当主と共に辺境の厳しい紛争を収めてきた。

 ただし今現在、当時の面影は全くない。
主に顔が。

 まるで遅くに産まれた孫娘にメロメロにしてやられる好々爺こうこうやだ。
デレデレしまくっている。
やべえ爺にしか見えない。

 そんな爺の揃えた膝の上のクッションに、白いイタチはちょこんと腰かけ、長い背筋を伸ばして顔はとてつもなく神妙な顔····のように見えなくもない。

 イタチの表情判別には自信がないが。

「そしてお嬢様は侯爵令嬢です。
いくらご兄妹とはいえ、イタチの姿であるとはいえ、家族風呂と称して外で露天風呂を楽しむレイヤード様の浴槽にしのびこもうとなさるとは、令嬢として恥をお知り下さい」
「····はい」

 ああ、それで今こうなってるのか。
やっと状況がわかった。

 レイの姿が見えないと思ったら、外にいたのか。
確かにこの宿の部屋についている露天風呂は気持ち良いからな。

 アリー嬢も、さすがにそれは専属侍女が正しいと思うぞ。

 遠目だと東の諸国の正座というものをしているようにも見えなくはない。
獣足の構造像上それは不可能ではあるのだが····雰囲気がそう見せるのか?

 どうでもいいが今回もヒュイルグ国の城で何度も見た、白いイタチに白いイタチの着ぐるみを着せている。
頭にはイタチを模したフードを被り、ちょっと可愛らしい白い毛玉が、何度見ても暴力的な可愛らしいに変貌をとげているから不思議だ。

 自分でも何を言っているかわからないが、俺の顔を弛ませて侍女の説教をこちらに飛ばす危険性をはらんでいる気がしてならない。

 それとなくイタチのつぶらな瞳が時々こちらに向く········狙ってないか?
やめて欲しい····グレインビルの侍女怖い。

「それに何も身に着けずに動くのは、露出狂と同じなのですよ」
「····はい」

 イタチは全身で反省の雰囲気をかもし出してはいるが、まだまだ専属侍女の説教はまないらしい。

 それより獣は何も身に着けないのが普通だから、露出狂というのは····。

「····!!」

 なっ、好々爺から殺気?!
いつの間に戦鬼化した?!

 いや、何も考えていない!
思わずはだかの(?)イタチの姿なんか思い浮かべていない!
着ぐるみバンザイ!

「?」

 何かを感じたらしいイタチが上を見上げれば、瞬時に好々爺が召喚された····グレインビルの執事怖い。

 まあそれはさておき、白いムササビが黒鳥と共に空から降ってきて水没したのを救い上げ····ん?
すくい上げ?
いや、爪を立てて登られる梯子役だったな。

 まあとにかくその後、グレインビルの悪魔弟の雷風呂の脅威を回避してから更に2日が経った。

 もちろん本来のイタチ、いや、アリー嬢も、俺が常にはレイと呼ぶ悪魔も人間だ。

 その翌日いっぱいは予想通りアリー嬢は熱を出したらしく、1度も会えなかった。

 ただ驚いた事に彼女こそが例の行方不明中の留学生達の居場所を知っていた。

 現在絶賛説教中の侍女の案内で、暗くなる前に回収すべく、すぐに向かった。

 他に隣国の第1王子ゼストゥウェルと、この領の次期当主とそれぞれの護衛達も伴ってだ。

 そして真っ暗な洞窟の中に隣国の第3王子とその側近候補は転がっていた。
しかしあの国の王女がいない。

 2人は気を失っているというよりは、何故か爆睡していたから容赦なく叩き起こした。

 しかし問題が起きた。

 2人の、特にここ半年程は断片的な記憶しか無かった。
加えてここに来る前からの王女に関しての記憶は著しく曖昧。

 ただ俺の知るこの数年の中では、2人共かつてないほどすっきりとした顔をしていた。
それも憑き物が落ちたかのような、落ち着いた言動になっている。

 これには第3王子の異母兄であるゼストと共に驚いた。

 そんな彼らの断片的な記憶の中で1つ、はっきりした記憶があるらしい。

 それが白い狸に襲われて頭を噛みつかれた事だった。
噛み痕もしっかり残っていた。

 橙頭の側近候補の方が気持ち酷かった気がするが、ゼストがサッと治癒魔法をかけて痕を消したから今はわからない。

 今日はその事も聞きたかったのだが····。

「お嬢様、反省だけでしたらそこらの山猿でもできます」
「········あい····グスッ」

 あ、イタチが泣き出した。
つぶらな瞳からぽろり、ぽろりと光の粒が転がり落ちる。

 俺が訪ねてくる前からされていた説教に、とうとう耐えられなくなったらしい。

 好々爺が慰めるように頭を撫で始めたが、顔はかなりデレデレしている。
せめてもう少し引き締めてやれよ。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~

季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」 建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。 しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった! (激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!) 理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造! 隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。 辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。 さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。 「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」 冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!? 現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる! 爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...