秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

文字の大きさ
442 / 491

441.恐すぎる〜エリュシウェルside

しおりを挟む
「エリュウ、グレインビル侯爵令嬢は必ずあなたが娶るの。
ミシェリーヌ王女がいても、いなくても正妃でなくて構わない。
側妃でいいのよ」
「……何故グレインビル嬢に、そこまでこだわるのですか」

 当然のように母上けら言い放たれた言葉が、不快だ。

 母上はこの国の側妃であり、外見は蜂蜜色の髪に、青い目。
この国の生まれのはずなのに、肌は透き通るように白く、少女のような可愛らしい外見をしている。

 そんな母を過去の俺は、誰よりも美しく、優しく、慈愛に溢れた尊敬すべき人だと信じていた。
身の程知らずにも、母を王妃の器すらも備えた人だと口にした事すらあった。

 もちろん実の母親だ。
愛されている。
ずっとそう信じていたのだ。

 なのに留学して、悪魔のような男から与えられた、手痛い経験。
強制的に体験させられてからは、その事にすら疑問に感じるようになった。

 俺は嘘の中で生かされてきたのではないのか、と。

 余談だが、隣国には悪魔が2人住んでいる。
その上に魔王が君臨する、恐ろしい国だ。
3人共に美しいが、心底恐ろしい。

 その3人が愛してやまない、外見だけならこれまでの人生で見た、全ての女性の中でも最上級に可愛らしく、将来は傾国の美女にすらなりそうな妖精姫。

 しかし少女の中身は過激だ。
その上、時折りどうしてだか、無性に踏みつけて欲しくなるような、抗い難い性癖を己に自覚させる女王様。
見えない鞭を振るっているかのような錯覚を与える、あの3人の家族だと納得する、もはや女帝という言葉が相応しい少女。

 別の意味で恐ろしい。

 まあとにかく、そんな存在達と接した上、時間と距離を置き、改めて実の母を客観的に見てみれば、外見からして違和感を持つ。
俺が物心ついた頃から、姿が全く変わっていない。

 異母兄の実母となる王妃と比べれば、その差は歴然と……いや、王妃が老化しているとか、そんな話ではないのだ。
年と共に、その年齢なりの美しさと艶っぽさが…………何だか墓穴を掘っていく気がする。
深掘りは止めておこう。

 そんな母は、良く言えば若々しさを保っている。
だが率直に言えば……得体が知れない。
そう感じるのは、息子として親不孝に当たるのだろうか。

 元々子爵令嬢だった母は20年程前、若くして聖女候補となり、やがて教会から聖女の認定を受けた。
その後、次代の聖女に代を譲り、教皇の推薦によって侯爵家の養子に、そして翌年、ザルハード国王の側妃となった。

 聖女だった母を養子に迎えた上に、王家に嫁いだ事。
そして王子となる俺が産まれた事。
教会から、光の精霊王の加護を与えられた王子と認定され、発表がなされた事。

 それら全てが特別で、あの家の大きな後ろ盾となった。
事業に追い風を吹かせた侯爵家は、国への貢献が認められて陞爵し、公爵となる。

 そして公爵家であった王妃の生家。
第1王子よりも優秀とされた、第2王子が病没。
その後すぐ、両親となる当主夫妻が事故で亡くなる。
公爵家を継いだ王妃の兄君も、年々体が弱っていく病を患い、結果、何年も前に侯爵へと降爵。
当主は今、領地に籠もって王妃とは何年も顔を会わせていないと聞く。

 今日はそんな背景を持つ王妃、並びに側妃、そして教皇が女帝……じゃない、グレインビル嬢と共に茶会に参加すると聞いていた。

 当初は側妃とグレインビル嬢だけの予定だったらしい。
しかし彼女は王妃の参加を、身分制度から求めた。

 にも関わらず、恐らくはそれに反発した母と、グレインビル嬢を気に入らない教皇によって騙し、王妃抜きでの茶会を催した。

 結果、彼女は直前で姿を消してしまったらしい。
1週間以内に実現しないなら、帰国するとつげて。

 正直これ以上グレインビルを、明らかなこちらの不手際が元で、怒らせるの止めろ。
あの一家の恐ろしさを知らない母達が、むしろ恐すぎる。

 それはともかく、結局王妃は呼んだようで何よりだが、茶会の内容を聞いて、身の毛がよだつ感覚に陥った。

 母親である王妃を心配したんだろう。
途中から異母兄が乱入。

 その後、何をどうやたったら、危険なミシェリーヌ=イグドゥラシャ第2王女という爆弾が投下されたりするのだ?!
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

悪役令嬢戦記:死ぬしかない悪役令嬢に転生したので、無双を目指す事にしました。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」オンリーです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...