448 / 491
9
447.妹の真意〜レイヤードside
しおりを挟む
「まだアリー嬢と顔を合わせないのか?
レイの存在に気づいてからは、ずっと落ち着かない様子だし、今だって……」
お節介にも、隣のルドがそんな事を言ってくる。
確かに想い人となった僕の可愛いイタチのアリーが、眠った今でも必死にしがみついているからね。
そう言いたくなる気持ちもわからなくはないけど、余計なお世話だ。
「見ないでくれるかな。
減る」
「「減る」」
冷たく言い捨てれば、目の前のゼストとジャスパーのボソリと呟く声が揃う。
ジャスパーの方は、このイタチが妹だなんて知らなかったはずだ。
脳内でどう変換されているのかは気になるな。
「いや、それくらい……」
「僕の可愛いイタチにモフられた挙げ句、尻尾を触られて悶絶してたらしいルドに、とやかく言う資格はない」
「いや、あれは不可抗力で…、」
「ふん、まあそれはいいよ。
そうだね……僕の可愛いイタチは、そろそろ連れて帰りたいところではある」
チラリとザルハード国側の人間となる、目の前の2人の反応を見れば、引き留めたいという表情だ。
特にジャスパーは、その気持ちが強く表情に出ている。
本来の立場でいくなら、ゼストこそが引き留めておこうとすべきだろうけど、そうしないのはやっぱりこいつも妹に惚れているからかな。
そもそも今のその引き留めたいって顔は、単なる恋慕のようにも感じる。
あまり強くは自覚していないようだけど。
彼とも付き合いは長いから、この子を政治的な意味で巻きこもうとする程の腹黒さが、少しもないのはわかっている。
妹がジャスパーをゼストの側近にするべく、それとなく動いたのは、正解だったみたいだ。
最も、こういう時の為だったのかもしれないと、考えなくもない。
彼の妹共々、兄妹をこの国から1度出し、妹をジャガンダ国、兄のジャスパーをアドライド国でそれぞれ養子として迎え入れられるよう、手を打ったのは、僕の可愛いアリーだ。
養子先は、どちらも自国で有名な貴族だった。
何年か経った今、彼の妹はアドライド国に王太子妃となる、シズカ姫付きの女官になって入国した。
兄のジャスパーは、ザルハード国王太子となったゼスト付きの正式な側近となり、アドライド国の隣国へと戻った。
アリーからすれば、何年も前に与えた小さな恩。
けれどこの兄妹からすれば、とてつもなく大きな恩へと成長しているはず。
計算高く動くジャスパーも、その大きな恩があるが故に、表情はともかく、言葉にまではしようとしない。
それとも、グレインビルの機嫌を損ねる方がマイナスになるって気づいているから?
まあ、どちらもか。
そこでふと、思い当たる。
この子はどうして、そう動いたんだろうか?
何年も先を見越して動いたのだと、種が1番良い形で芽吹くように撒いたのだと、今だからわかる。
その気はなくとも、この中で誰よりも計算高く腹黒いこの妹は、無意識的に他人を駒として扱う。
そうしないのは、せいぜいが僕達家族くらい。
逆を言えば、この子は常に僕達家族の安全を優先して動く癖がある。
後顧の憂いは、なるべく取り去りつつ、家族に色々な力を与えてきている。
まだ幼く、体も今よりずっと脆いあの時も、先を見越してヒュイルグ国にエヴィン=ヒュイルグという種を撒いた。
結果、妹の元専属侍女__ココの死以降にあの国絡みで、うちの領民は怪我1つしていない。
そしてグレインビル領は、アドライド国内でも屈指の富を得ると共に、戦力以外の名声と、他領、そして他国との繋がりも手にするまでに成長している。
戦力が必要の無い時代になったとしても、国王ですら、大きく干渉できない程に。
そこまで考えて、ふと、小さな閃きのような何かが、引っかかる。
そもそもこの子は、何の為に今の配置になるよう、駒を動かしてきたんだろう?
「レイ?」
ルドが黙りこむ僕を、訝しげに呼ぶ。
目の前の2人も、そのすぐ後ろのリューイの視線も、今は無視。
妹がそう動く理由……僕は何を考えて……そう、そうだ。
戦力が必要の無い時代になったとしても、国王ですら、大きく干渉できない所で引っかかって……いや、違う。
国王が大きく干渉できないように、国王自体の権力を牽制できるように、動いていたんだ。
レイの存在に気づいてからは、ずっと落ち着かない様子だし、今だって……」
お節介にも、隣のルドがそんな事を言ってくる。
確かに想い人となった僕の可愛いイタチのアリーが、眠った今でも必死にしがみついているからね。
そう言いたくなる気持ちもわからなくはないけど、余計なお世話だ。
「見ないでくれるかな。
減る」
「「減る」」
冷たく言い捨てれば、目の前のゼストとジャスパーのボソリと呟く声が揃う。
ジャスパーの方は、このイタチが妹だなんて知らなかったはずだ。
脳内でどう変換されているのかは気になるな。
「いや、それくらい……」
「僕の可愛いイタチにモフられた挙げ句、尻尾を触られて悶絶してたらしいルドに、とやかく言う資格はない」
「いや、あれは不可抗力で…、」
「ふん、まあそれはいいよ。
そうだね……僕の可愛いイタチは、そろそろ連れて帰りたいところではある」
チラリとザルハード国側の人間となる、目の前の2人の反応を見れば、引き留めたいという表情だ。
特にジャスパーは、その気持ちが強く表情に出ている。
本来の立場でいくなら、ゼストこそが引き留めておこうとすべきだろうけど、そうしないのはやっぱりこいつも妹に惚れているからかな。
そもそも今のその引き留めたいって顔は、単なる恋慕のようにも感じる。
あまり強くは自覚していないようだけど。
彼とも付き合いは長いから、この子を政治的な意味で巻きこもうとする程の腹黒さが、少しもないのはわかっている。
妹がジャスパーをゼストの側近にするべく、それとなく動いたのは、正解だったみたいだ。
最も、こういう時の為だったのかもしれないと、考えなくもない。
彼の妹共々、兄妹をこの国から1度出し、妹をジャガンダ国、兄のジャスパーをアドライド国でそれぞれ養子として迎え入れられるよう、手を打ったのは、僕の可愛いアリーだ。
養子先は、どちらも自国で有名な貴族だった。
何年か経った今、彼の妹はアドライド国に王太子妃となる、シズカ姫付きの女官になって入国した。
兄のジャスパーは、ザルハード国王太子となったゼスト付きの正式な側近となり、アドライド国の隣国へと戻った。
アリーからすれば、何年も前に与えた小さな恩。
けれどこの兄妹からすれば、とてつもなく大きな恩へと成長しているはず。
計算高く動くジャスパーも、その大きな恩があるが故に、表情はともかく、言葉にまではしようとしない。
それとも、グレインビルの機嫌を損ねる方がマイナスになるって気づいているから?
まあ、どちらもか。
そこでふと、思い当たる。
この子はどうして、そう動いたんだろうか?
何年も先を見越して動いたのだと、種が1番良い形で芽吹くように撒いたのだと、今だからわかる。
その気はなくとも、この中で誰よりも計算高く腹黒いこの妹は、無意識的に他人を駒として扱う。
そうしないのは、せいぜいが僕達家族くらい。
逆を言えば、この子は常に僕達家族の安全を優先して動く癖がある。
後顧の憂いは、なるべく取り去りつつ、家族に色々な力を与えてきている。
まだ幼く、体も今よりずっと脆いあの時も、先を見越してヒュイルグ国にエヴィン=ヒュイルグという種を撒いた。
結果、妹の元専属侍女__ココの死以降にあの国絡みで、うちの領民は怪我1つしていない。
そしてグレインビル領は、アドライド国内でも屈指の富を得ると共に、戦力以外の名声と、他領、そして他国との繋がりも手にするまでに成長している。
戦力が必要の無い時代になったとしても、国王ですら、大きく干渉できない程に。
そこまで考えて、ふと、小さな閃きのような何かが、引っかかる。
そもそもこの子は、何の為に今の配置になるよう、駒を動かしてきたんだろう?
「レイ?」
ルドが黙りこむ僕を、訝しげに呼ぶ。
目の前の2人も、そのすぐ後ろのリューイの視線も、今は無視。
妹がそう動く理由……僕は何を考えて……そう、そうだ。
戦力が必要の無い時代になったとしても、国王ですら、大きく干渉できない所で引っかかって……いや、違う。
国王が大きく干渉できないように、国王自体の権力を牽制できるように、動いていたんだ。
0
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
元社畜悪役令嬢、辺境のボロ城を全自動ボタニカル美容スパに大改造して引きこもる ~前世コスメで冷徹公爵を完治させたら溺愛されました~
季未
恋愛
「貴様のような悪逆非道な女は、極寒の辺境へ追放だ!」
建国記念の夜会で王太子から婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢シャルロッテ。
しかし、彼女の中身は前世でブラック企業に殺された過労で過労死したマーケターだった!
(激務の王妃ルート回避!? しかも辺境は誰にも邪魔されないブルーオーシャン! 最高のフリーランス生活の始まりじゃない!)
理不尽な追放を究極のホワイト・スローライフへのパスポートだと歓喜した彼女は、あてがわれた辺境のボロ城を、前世の「DIY・スマートホーム知識」と「土・水魔法」を駆使して爆速で大改造!
隙間風の吹く部屋は、一瞬で「床暖房完備の全自動温水スパ」へ。
辺境に自生する雑草からは「極上ボタニカルコスメ」を開発し、自らも絶世の美女へと変貌していく。
さらに「お前には干渉しない」と白い結婚を突きつけてきたはずの、呪いで顔に火傷を負った氷の公爵に特製マッサージと美肌治療を施したところ……。
「お前が作ったこの空間と、お前自身が……俺のすべてだ」
冷徹だったはずの公爵様が、極上の癒やし空間と彼女の手技で完全に骨抜きにされ、異常なまでの過保護・溺愛モードに突入!?
現代マーケティングと美容チートで辺境を超高級スマート・リゾートへと再生させ、かつて自分を追放した王太子たちを大後悔させる!
爽快&極甘な、異世界リゾート経営×溺愛ファンタジー、堂々開幕!
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる