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467.魅了の魔具〜エリュシウェルside
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「困ったわね」
「妃殿下?」
母上と……この声は、教皇か?
途絶えていた意識が浮上する。
けれどどうしてか、体が動かない。
手の指どころか、瞼すらも……。
頭痛と吐き気、寒気に襲われながら、何があったのかを反芻して、やっと今の自分の状況を理解した。
コッヘ……助けられなくて……すまない。
今の症状は、完全に魔力枯渇だ。
過呼吸になって、どうしてか獣人の、それも女性に変装した悪魔兄弟の1人に、袋を出されて泣きながら口元に当てて……そこから記憶がない。
あれからどれくらい経ったのか……。
『コッヘル=ネルシスの遺体は、心配しなくて良いよ。
それに君の方も、ゆっくり休めるようにしておいてあげる』
確かそんな言葉を聞いた記憶が、微かにある。
「どうしてエリュウには、この魔力が浸透していかないのかしら。
直接触れさせれば……」
額に固く、冷たい何かが置かれる感触。
途端、グワンと頭が揺れる感覚に襲われるも、一瞬で治まる。
あの揺れは、母上から逃げる直前に感じた感覚に良く似ていた。
「それが王女殿下からの?」
「そう、だけれど……弾かれたわ?」
「あの方が与えた、他者を魅了する……。
どれ、私にも使わせよ」
「ちょっ……」
母上の抗議の声と、押しのけられたような気配。
それからすぐ、瞼の向こうに翳りを感じた。
教皇が額の辺りに手をかざしたのがわかる。
しかし今度は何の異常も感じなかった。
「チッ、壊したんじゃないだろうな」
「ふざけないで!
触らないでちょうだい!」
「何をする!」
2人が揉み合い、魔具だろう額のそれに互いに手をかざし合い、どちらかの手が直接触れ……。
「「あ」」
__コトン、パキッ。
2人の声が重なり、下に落ちたそれが、割れる。
「なっ、嘘でしょう?!
どうしてくれるの!
壊れたじゃない!」
「はあ?!
貧しい平民だったお前が、教皇である私のせいにするとは、何事か!」
「私は聖女で、今や王の妃よ!
あんたこそ、汚い手でのし上がったくせに!
大体、外国に行けばそっちこそ、ただの平民じゃない!」
今度は、口汚く罵り合う。
しかしその内容に、眉根を寄せる。
もちろん本当に動いたわけではないが。
どういう意味だ?
母上は、生家となった公爵家に養子入りする前は、元子爵令嬢だったのでは……。
「とにかく!
壊したのは貴方よ!
あの王女に言って、新しい魅了の魔具をもらってきて!
貴方だってのし上がるのに、私にこの魔具で邪魔な人間を廃除させていたでしょう!
グレインビルの妖精姫を魅了できなかったら、貴方に責任を問いますから!」
暫く罵りあった後、バタバタとこの国の側妃とは思えない騒々しい足取りで出て行く母上。
その言葉に、愕然とする。
母上の元から逃げ出した時に感じた、あの揺れる感覚。
あれは私を魅了しようとしたのか……。
それに……あの王女、だと?
あの洞窟で白い狸に噛じられるまで、私は間違いなく王女に魅了魔法で操られていた。
もちろん側近のコッヘも。
あの魔法は母上が使った魔具とは、比べ物にならない矯正力があったのは言うまでもないが、更に魅了の魔具を渡したのが、王女。
しかも母上の話から推察すれば、私より年下のかの王女は、何十年も前から母上達と知り合いだったかのような……。
一体、ミシェリーヌ=イグドゥラシャとは何者なのだ……。
「くそ!
忌々しい!」
__ガン!
忌々しげに吐き捨てた教皇は、私の横たわるベッドを蹴った。
母上もそうだったが、この男も随分と感情的になっている。
幼い頃から教会に通い、教皇とも長い付き合いだが、時折、不遜な態度を取る事はあっても、今のように明らかな不敬を働かれた事はなかった。
もちろんこのような物言いもされた事はない。
あまりにも人が変わり過ぎている。
一体、何が起こっているのだ……。
頭の中は、理解しきれない状況に呆然としているのに、体はやはり少しも動かせない。
しかしこの状況に焦る事はなく、むしろ僅かばかりの安堵さえ覚える。
どうやったのかはわからないが、微かに覚えている、あの言葉。
間違いなく悪魔がこの体に、何かしらの保護魔法か、もしくは魔具を仕こんでいる。
※※後書き※※
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
子供達が夏休み入った関係で少しバタついている為、来月末まで更新頻度が落ちるかもしれません(;・∀・)
「妃殿下?」
母上と……この声は、教皇か?
途絶えていた意識が浮上する。
けれどどうしてか、体が動かない。
手の指どころか、瞼すらも……。
頭痛と吐き気、寒気に襲われながら、何があったのかを反芻して、やっと今の自分の状況を理解した。
コッヘ……助けられなくて……すまない。
今の症状は、完全に魔力枯渇だ。
過呼吸になって、どうしてか獣人の、それも女性に変装した悪魔兄弟の1人に、袋を出されて泣きながら口元に当てて……そこから記憶がない。
あれからどれくらい経ったのか……。
『コッヘル=ネルシスの遺体は、心配しなくて良いよ。
それに君の方も、ゆっくり休めるようにしておいてあげる』
確かそんな言葉を聞いた記憶が、微かにある。
「どうしてエリュウには、この魔力が浸透していかないのかしら。
直接触れさせれば……」
額に固く、冷たい何かが置かれる感触。
途端、グワンと頭が揺れる感覚に襲われるも、一瞬で治まる。
あの揺れは、母上から逃げる直前に感じた感覚に良く似ていた。
「それが王女殿下からの?」
「そう、だけれど……弾かれたわ?」
「あの方が与えた、他者を魅了する……。
どれ、私にも使わせよ」
「ちょっ……」
母上の抗議の声と、押しのけられたような気配。
それからすぐ、瞼の向こうに翳りを感じた。
教皇が額の辺りに手をかざしたのがわかる。
しかし今度は何の異常も感じなかった。
「チッ、壊したんじゃないだろうな」
「ふざけないで!
触らないでちょうだい!」
「何をする!」
2人が揉み合い、魔具だろう額のそれに互いに手をかざし合い、どちらかの手が直接触れ……。
「「あ」」
__コトン、パキッ。
2人の声が重なり、下に落ちたそれが、割れる。
「なっ、嘘でしょう?!
どうしてくれるの!
壊れたじゃない!」
「はあ?!
貧しい平民だったお前が、教皇である私のせいにするとは、何事か!」
「私は聖女で、今や王の妃よ!
あんたこそ、汚い手でのし上がったくせに!
大体、外国に行けばそっちこそ、ただの平民じゃない!」
今度は、口汚く罵り合う。
しかしその内容に、眉根を寄せる。
もちろん本当に動いたわけではないが。
どういう意味だ?
母上は、生家となった公爵家に養子入りする前は、元子爵令嬢だったのでは……。
「とにかく!
壊したのは貴方よ!
あの王女に言って、新しい魅了の魔具をもらってきて!
貴方だってのし上がるのに、私にこの魔具で邪魔な人間を廃除させていたでしょう!
グレインビルの妖精姫を魅了できなかったら、貴方に責任を問いますから!」
暫く罵りあった後、バタバタとこの国の側妃とは思えない騒々しい足取りで出て行く母上。
その言葉に、愕然とする。
母上の元から逃げ出した時に感じた、あの揺れる感覚。
あれは私を魅了しようとしたのか……。
それに……あの王女、だと?
あの洞窟で白い狸に噛じられるまで、私は間違いなく王女に魅了魔法で操られていた。
もちろん側近のコッヘも。
あの魔法は母上が使った魔具とは、比べ物にならない矯正力があったのは言うまでもないが、更に魅了の魔具を渡したのが、王女。
しかも母上の話から推察すれば、私より年下のかの王女は、何十年も前から母上達と知り合いだったかのような……。
一体、ミシェリーヌ=イグドゥラシャとは何者なのだ……。
「くそ!
忌々しい!」
__ガン!
忌々しげに吐き捨てた教皇は、私の横たわるベッドを蹴った。
母上もそうだったが、この男も随分と感情的になっている。
幼い頃から教会に通い、教皇とも長い付き合いだが、時折、不遜な態度を取る事はあっても、今のように明らかな不敬を働かれた事はなかった。
もちろんこのような物言いもされた事はない。
あまりにも人が変わり過ぎている。
一体、何が起こっているのだ……。
頭の中は、理解しきれない状況に呆然としているのに、体はやはり少しも動かせない。
しかしこの状況に焦る事はなく、むしろ僅かばかりの安堵さえ覚える。
どうやったのかはわからないが、微かに覚えている、あの言葉。
間違いなく悪魔がこの体に、何かしらの保護魔法か、もしくは魔具を仕こんでいる。
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