太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する

嵐華子

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3.

24.女官達に膝を着かせる事が出来ただろうか〜玉翠side

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「何なのですか、あの貴妃は」

 人払いをして3人だけになってから、この国の丞相であり愛する夫の無二の親友にして幼馴染でもある風晨光フォン チャンガンに静かに詰め寄る。

 胸の内は荒れ狂っていても、それを見せる訳にはいかない。

「それには全く同感だ」
「なかなかの逸材でしょう、皇貴妃」

 夫も不機嫌な様子だけれど、この腹黒は全くもって楽しそう。

 睨みつけそうになるのを抑えるだけでも自分を褒めたくなる。

「少なくともあの貴妃は皇帝の寵愛を得ようなどとは微塵も考えていらっしゃいませんし、何より此度はお2人の失態では?
正直あの惨状には絶句しましたよ」

 悪びれる事なく指摘してくる様のなんと憎らしいことか。

 恐らく陛下もそう感じ、悪態でも吐こうと口を開きかけ、しかし腹黒の方が先制撃を仕掛けてきた。 

「何より昨夜からの陛下の行動にも問題はありましたよ?
皇貴妃にも明日は必ず陛下があの貴妃の元へ行くように説得しておいて欲しいとお願いしておりましたが?
あの貴妃に関してだけは実際に初夜で何もせずともあの宮に1度だけ足を運ぶという最低限の責任を果たして欲しい。
この数ヶ月ずっと伝えてきておりました。
さすれば他の貴妃同様、だたそこに在るだけのお飾りの妃でいらっしゃったのですから」
「「それは……」」

 夫婦そろってこの正論には言葉を詰まらせてしまう。

「加えて皇貴妃。
もうお気づきですね。
貴女の事もあの貴妃は既に見透かしているはずです。
貴女がした事も、しなかった事も」

 これには唇を噛む。

 あの者は幼いながらも、この腹黒が貴妃に据えるだけに留まらず肩を持つだけの事はあるのだと認めるしかない。

 そもそもが入宮前からこうなる事を、いえ、それ以上の事も予測して先手を打っていたに違いない。
もしや腹黒から何らかの情報を得て入れ知恵をされていたのではとすら考えてしまう。

「申し上げておきますが、私は手も口も出していなければ、何も入れ知恵もしておりませんよ。
全てはあの貴妃が自らの力で情報収集を行い、推察し、規格外の事をやってのけていらっしゃるだけ。
私もしれっと持参金を国家予算1年分も納めるなどとは予想もしてませんでしたから」

 清々しい程の笑顔で勘違いを指摘されてしまったわ。
だとすれば、ますます油断ならないという事になる。

 そもそも持参金を国家予算に匹敵するほど納めたなど、報告を受けてはいなかった。
額が額だし本来ならあって然るべきなのに……いや、本来なら私自ら確認すべきだったのもわかっている。
たかが田舎の伯家と侮り過ぎた。

 これだと確実に後宮の長としての皇貴妃たる責任を果たせていなかった事を有耶無耶にはできないばかりか、あの者次第で更なる追求をされてしまう。

 私の立場が今以上に危うくなりかねない。

ユー
晨光チャンガン、何の事だ?」
「それは……」
「丞相!」

 思わず彼の言葉葉を遮ってしまう。

 陛下を見やれば……もう隠し立てはできないと悟る。

「暫し陛下と2人にして……私が自分で話すわ」

 腹黒は私にとっても長らくの付き合いとなる。
共に陛下を支えてきて、気心も知れた者の1人で、私の胸の内をよく知っている。

 もう随分と前から陛下にそれを曝せと言われてきたものの、どうしても決心がつかなかった。

 それ程に私は陛下を愛し過ぎ、陛下も私を愛し過ぎた。

 子ができていればきっと違っていた。

 先に入宮していた2人の貴妃達との関係も今のように命を奪い合うような仲にまで発展しなかったかもしれない。
そもそも貴妃達の生家が娘を入宮させる事も防げたはず。

 何よりも私自身が嫉妬に身を焦がす事もなかった。
女官達が主を想って行う言動に目をつぶり、己の地位を守るだなどという愚行も犯さず、今や完全に統制しきれていない。

『そろそろこの場にいる私を睨む女官達も理解しておくべきではない?
少なくとも先ほどの破落戸のようになれば、お前達自身が危なくなると何故想像できないのかしら?
特にお前は皇貴妃に長らく仕える、皇貴妃が信を置く女官では?
破落戸の時と違い、ここはもう私の宮なのよ?』

 あの者と女官達とのやり取りを思い出して焦燥に駆られる。
逆の立場であったなら、私があの者のように仮にも皇帝の寵愛を受ける皇貴妃に仕え、傲慢になっていた女官達に膝を着かせる事が出来ただろうか。
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