太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する

嵐華子

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4.

87.凄腕殺人集団と決まる妻心〜暁嵐side

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「それで、化粧でわざと平凡な顔にしていたと?」

 見慣れた方の顔で俺達を迎え入れた小娘に、腹黒が改めて問う。

「モグ……左様……モグ……れすよ、モグモグ」
「食べながら喋るな。
どれだけ食べるつもりだ」

 ユーは初めて見ただろう、粗末な小屋が物珍しいからか、キョロキョロと辺りを見回していた。
が、小娘を抱えて走り去り、藍の衣を纏う片鬼に通された奥を見て、固まる。

 他の青緑達は着替えや片づけに消えている。

 1つ言うなら、普段は人目があれば、必ず皇貴妃としての振る舞いを心がける妻なのだ。
そうしないのは小娘への警戒心が、幾らか薄らいでいるからだ。

 その上、小娘の周りには軽く見積もっても、10人分はあろうかとする、様々な料理が並べられていた。

「ゴクン。
あれだけ長時間舞えば、お腹も空きます。
ああ、そこらへんにどうぞお座り下さい。
皆様もお腹が空いているなら、適当につまんでかまいませんよ。
毒見は私が食べている物から手をつけるなり、気にしないなりして好きに判断なさって下さい。
うちの料理人が朝から腕によりをかけて作ったのです」
「それで1人足りなかったのですね」

 小娘が外部から呼んだ使用人が少ないのもあって、どうやら腹黒もそれとなく気づいていたらしい。

「左様です。
育ち盛りはお腹がすぐに減りますから、ングング、ゴクン。
それから、素の顔はご覧になった通りの絶世の美少女です。
惚れるまでならともかく、何かしらの実力行使は迷惑なので、止めて下さいね」

 ほかほかと湯気を出す肉饅頭を両手に、いけしゃあしゃあと宣うと、再びモグモグし始める小娘。

 余計な一言に、最愛の妻が俺の顔色を窺うようにチラリと見たではないか。
事実無根だ。
イラッとしてしまう。

「誰が惚れるか。
そもそも自分で言うな。
饅頭寄こせ。
…………美味いな」
コン爺は秘伝のジャンを求めてあらゆる地を放浪し、食に精通するようになりましたからね。
そこらの薬師よりも余程優秀ですよ。
もちろん料理人ですけれど」

 合間に咀嚼しながらだから、幾らか聞き取りづらいが、これ程に美味い料理だ。
空腹ならば尚の事、我慢できぬのは致し方ないかもしれない。

 もちろん俺は、口の中の物を飲みこんでから話すがな。

 ユーも腹黒もそんな俺達に感化されたのか、近くの物を無言でつまみ始めた。

「そなたの使用人達の中で、1番まともに思える経歴だな。
というか、私はユー一筋だ。
だが他の者に知られても面倒だから、そのまま隠しておけ。
あの顔が危険なのは理解してやる」

 それ程に、美しく、14と思えぬ妖艶美を備えていた事は認めてやる。

「もちろんです。
鬼達だけでなく、コン爺を止めるのが1番骨が折れますから」
「……料理人じゃなかったのか」

 おい、雲行きが怪しい会話になったぞ?

「食に精通したからこそ、無味無臭な上に時限付きで効力を発揮する、解毒不可能な毒をも作ってしまえます。
鬼達と共謀されたら、いくら私でも止められませんよ?
証拠を残さない完全殺人が完成しますし、そうなると彼らは拷問しても口を割りません。
そもそも証拠はとっくに隠滅された後になるでしょうから」
「まともなのはおらぬのか。
どんな凄腕殺人集団で脇を固めておるのだ」

 その言葉にユーが再び警戒し、手にした箸をそっと置いて、皇貴妃の仮面を被ってしまった。

「心配せずとも、顔で堕ちる殿方もいれば、愛でるだけで心まで堕ちない殿方もございます」
「待て、誤解させるな。
そなたの顔を愛でた覚えもない。
ユー、濡れ衣だ」
「……」

 無言無表情で、俺の顔をジトリと見やる妻に慌てる。
やましい事は何もないのに、慌てさせられる理不尽。

 しかし俺の様子に、クスクスと口元を隠してユーが笑い始めた。

「ユ、ユー?」
「わかっております。
そう、わかっておりましたのに……」

 自嘲する妻を相変わらずモグモグしながら、じっと見ていた小娘は、どこか安堵した微笑みを浮かべた。

「お心は決まったのですね」
「ええ。
私は夫と添い遂げます。
ですから、そうなれるよう力を貸して欲しいの」
「もちろんでございます」

 その言葉に、小娘はまるで花が咲いたような笑みを浮かべて快く了承した。
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