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111.マトリョーシカと火葬
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「何とも……勝手な……」
有り得ません。
思わずムムッと眉根が寄りますが、私は悪くない……はず。
秘密箱は100回押したり振ったり、回したりをする羽目になりましたし、カラクリ回数が増える程、中の容量は箱の大きさに比べて小さくなっていきます。
期待した金銀財宝が中に無いのは比較的すぐに察しました。
そして出てきたのはやけに細長い人形。
グルリと検分し、更にその顔と胴をキュポンと開ければまた人形です。
……なめてます?
これはアレです……初代で頂いた、異国のマトリョーシカとかいう人形です。
ちなみにこの国にはそんな名称のついた人形はありません。
それも無駄に高価なんだか、高価でないんだか分かりかねる金の人形、銀の人形、銅の人形、鉄の人形。
お目見えする順番もそれでした。
せめて金だけにして欲しかった。
中身空洞ですよ。
ケチんぼです。
皇帝なんですから、金の延べ棒くらい用意できたでしょう。
そうして出てきたのは、細長い紙。
そこには意味不明の言葉が羅列されています。
これは暗号文です。
勿論、既に解読しました。
それぞれの大きさのマトリョーシカに巻いて、正面に来た文字を読む、比較的簡単な暗号文。
ため息が出そう、というより、出ます。
挙げ句、この人形の顔ときたら……点や線で、怒っていたり、泣いていたり、無になっていたり……あっかんべーをしていたり……喧嘩売ってます?
ちなみにこれまた金、銀、銅、鉄の順です。
「……笑った顔は無いのですね……」
1番描きやすい顔を描かなかったのは、わざとですか?
あの霊廟に飾られた、厳つい顔のオッサンの遺影が頭をよぎります。
「何故……笑わないのですか。
私が貴方の元を去ったのは……」
ミイラ蛇に抱かれた、ミイラ男を見上げ、その顔を垣間見ます。
灯りは手元の火だけですし、長年鎮座しているせいかミイラ蛇共々、塵を被っていてわかりにくい。
しかし思いの外、穏やか。
もっと若かりし頃の陛下の顔は……可愛らしい殿方で、微笑む様は少女のようでしたのに。
「あちきの好きでありなんした女子の顔は、どちらへお隠しになりんした。
オッサン、ミイラ男、老け顔……阿呆……大阿呆……」
ムムムと不貞腐れ、悪態をついてしまいます。
それに私の肩乗り白蛇は、何をどうしたらそのような巨体に成長したのです?
その子と共にそうしているという事は、最期だけでもいくらかは穏やかに逝けたという事でしょうか?
天斌嵐仙高祖の死は、謎とされています。
どの文献にも載っておらず、次代の3番目の皇子に譲位した後、蟄居し、数年後ひっそりと亡くなったと皇室の記録に記されていました。
この寺に来る前、貴妃として閲覧した正式な記録です。
何故に御身がこのような所にあるのです?
何を考えていたのです?
何度目かの、胸の内の問いかけ。
しかしふと、肩にいた黒い小蛇が頭に移動したのを感じ、我に返ります。
「ああ、そうでした。
小蛇ちゃんがいましたね。
ここでこうしていても仕方ありませんし、少ない駄賃ですが、遺言くらいは叶えて差し上げます。
陛下の子孫の嫁になりましたからね、私」
小言を言ってから、古びた松明にあった棒切れを集めてミイラの下に、上にあるだけ敷き詰め、漆塗りの箱もバラしてついでに乗せました。
漆は火が点くと燃焼を早めてくれますからね。
元から火のついていた即席の提灯を火種にし、魔力も幾らか使って火を勢いづかせてやります。
針金を外すのに苦労しました。
火は初めは徐々に、やがて漆効果もあったのか、一気に木々に燃え広がり、2体のミイラは火に包まれました。
横に置いてあった棒切れを新たに針金で纏め、再び提灯にしてから、目の前の火をおすそ分けしてもらいます。
「桜々、ご苦労様でした。
……小香……お別れです」
2代目の私と縁のある者達の亡骸にそう告げて、手を合わせれば、頭から下に伝い降りた小蛇が再び道案内をしてくれるよう。
マトリョーシカと紙は元の金の人形に合体して懐にしまい、背後の熱を感じながらその場を後にします。
決して振り返らずに。
有り得ません。
思わずムムッと眉根が寄りますが、私は悪くない……はず。
秘密箱は100回押したり振ったり、回したりをする羽目になりましたし、カラクリ回数が増える程、中の容量は箱の大きさに比べて小さくなっていきます。
期待した金銀財宝が中に無いのは比較的すぐに察しました。
そして出てきたのはやけに細長い人形。
グルリと検分し、更にその顔と胴をキュポンと開ければまた人形です。
……なめてます?
これはアレです……初代で頂いた、異国のマトリョーシカとかいう人形です。
ちなみにこの国にはそんな名称のついた人形はありません。
それも無駄に高価なんだか、高価でないんだか分かりかねる金の人形、銀の人形、銅の人形、鉄の人形。
お目見えする順番もそれでした。
せめて金だけにして欲しかった。
中身空洞ですよ。
ケチんぼです。
皇帝なんですから、金の延べ棒くらい用意できたでしょう。
そうして出てきたのは、細長い紙。
そこには意味不明の言葉が羅列されています。
これは暗号文です。
勿論、既に解読しました。
それぞれの大きさのマトリョーシカに巻いて、正面に来た文字を読む、比較的簡単な暗号文。
ため息が出そう、というより、出ます。
挙げ句、この人形の顔ときたら……点や線で、怒っていたり、泣いていたり、無になっていたり……あっかんべーをしていたり……喧嘩売ってます?
ちなみにこれまた金、銀、銅、鉄の順です。
「……笑った顔は無いのですね……」
1番描きやすい顔を描かなかったのは、わざとですか?
あの霊廟に飾られた、厳つい顔のオッサンの遺影が頭をよぎります。
「何故……笑わないのですか。
私が貴方の元を去ったのは……」
ミイラ蛇に抱かれた、ミイラ男を見上げ、その顔を垣間見ます。
灯りは手元の火だけですし、長年鎮座しているせいかミイラ蛇共々、塵を被っていてわかりにくい。
しかし思いの外、穏やか。
もっと若かりし頃の陛下の顔は……可愛らしい殿方で、微笑む様は少女のようでしたのに。
「あちきの好きでありなんした女子の顔は、どちらへお隠しになりんした。
オッサン、ミイラ男、老け顔……阿呆……大阿呆……」
ムムムと不貞腐れ、悪態をついてしまいます。
それに私の肩乗り白蛇は、何をどうしたらそのような巨体に成長したのです?
その子と共にそうしているという事は、最期だけでもいくらかは穏やかに逝けたという事でしょうか?
天斌嵐仙高祖の死は、謎とされています。
どの文献にも載っておらず、次代の3番目の皇子に譲位した後、蟄居し、数年後ひっそりと亡くなったと皇室の記録に記されていました。
この寺に来る前、貴妃として閲覧した正式な記録です。
何故に御身がこのような所にあるのです?
何を考えていたのです?
何度目かの、胸の内の問いかけ。
しかしふと、肩にいた黒い小蛇が頭に移動したのを感じ、我に返ります。
「ああ、そうでした。
小蛇ちゃんがいましたね。
ここでこうしていても仕方ありませんし、少ない駄賃ですが、遺言くらいは叶えて差し上げます。
陛下の子孫の嫁になりましたからね、私」
小言を言ってから、古びた松明にあった棒切れを集めてミイラの下に、上にあるだけ敷き詰め、漆塗りの箱もバラしてついでに乗せました。
漆は火が点くと燃焼を早めてくれますからね。
元から火のついていた即席の提灯を火種にし、魔力も幾らか使って火を勢いづかせてやります。
針金を外すのに苦労しました。
火は初めは徐々に、やがて漆効果もあったのか、一気に木々に燃え広がり、2体のミイラは火に包まれました。
横に置いてあった棒切れを新たに針金で纏め、再び提灯にしてから、目の前の火をおすそ分けしてもらいます。
「桜々、ご苦労様でした。
……小香……お別れです」
2代目の私と縁のある者達の亡骸にそう告げて、手を合わせれば、頭から下に伝い降りた小蛇が再び道案内をしてくれるよう。
マトリョーシカと紙は元の金の人形に合体して懐にしまい、背後の熱を感じながらその場を後にします。
決して振り返らずに。
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