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54.鬼婆達と礼服
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「さあ、コニー様。
脱いで下さい」
「お、お止しに……」
ジリジリと、にじり寄るガルム様。
心なしか、愉悦に歪んだお顔ですわ……。
「駄目だよ、ガルム」
「ファビ……」
「私がやる」
「!?」
何故かガルム様と交代して、どこか楽しげに私を部屋の角に追い詰めるファビア様。
――トン……。
ああ、ファビア様が両手で壁ドン、いえ、壁トンを!?
顔面が熱くなるのを感じながら、思わず胸の前で腕を交差してうつむいてしまう。
「ほら、ちゃんと胸を出して?」
ひいぃぃぃ!
ファビア様、片手で二重顎をクイッと!?
それに言い方!
言い方が悪すぎますわ!
「コニー様、男は諦めが肝心ですぞ」
「はぅわぁ!」
ガルム様の言葉に、おかしな叫びが口から飛び出ましたわ!
うぐぅ、そうですのね!
男とは、漢にならねばならぬ事も……。
「そうだよ?
マルクの男前な所を見せて欲しいな」
「ま、またそんな顔を……」
本日、何度目かの上目遣いが、とってもキュートですわね、ファビア様!
至近距離からの攻撃に、淑女な心がバキュンと撃たれて、瀕死ですわ!
でも……でもでもでもでも!
「ガルム様!
こちらにいらっしゃいまし!」
マルク渾身のスタートダッシュで、未だに片手を壁に突いたファビア様の脇を、空いた方の腕側からすり抜ける。
「おや?」
「ええ!?」
ガシッとガルム様の殿方らしい手首を掴み、驚くファビア様を残して客室へと向かった。
※※※※
「で、そろそろ贈られた礼服は着られそうかい?」
優しげに尋ねるリリ婆。
「当初は腹も尻もパツパツだったもんね!」
ミカ婆は快活に……その通りですけれど、もう少し言葉を選んで下さいまし。
「もちろん私達が揃って協力してやったんだ。
少しはマシになってんだろうね、マル坊」
睨むのはお止しになって、エリー婆。
「ど、どうにか?」
マズイですわ。
目が左右にバッシャバッシャ泳いでいる自覚がありますわ!
「「「……はあ」」」
一斉にため息!?
バルハマダム三人衆は、こんな時も息ぴったりですのね!?
ファビア様の素敵可愛い攻めから逃れ、ガルム様と客室に籠もった私は、大人しく服を脱いだ。
もちろん裸体ではない。
太もも丈のダボッとしたおパンツに、くたびれたインナーシャツ姿。
そうして内ポケットからメジャーを出したガルム様に、体のあちこちのサイズを測られたのだった。
ファビア様一行が翌日に邸を経ち、暫くして贈られてきたのが、何着もの下着と普段着、そして礼服。
ファビア様自身の商会で作ってくれたらしい。
ファビア様直筆の手紙には、【先行投資】【返却不可】の文字が。
恐らくマナー講師を引き受けたから、身だしなみに気を遣えと言いたいのだ。
慌ててセーターを編んで贈り返した。
ちなみに五本指靴下と足袋靴下は、ファビア様の足のサイズがわからなかった為に断念した。
業務提携しているファビア様なら、淑女時代の婚約者のように気持ち悪がる事もない……と、信じたい。
そうして贈られた何着もの服に袖を通した時だ。
問題が起こった。
どうして肝心の礼服が、一回り小さいんですの!?
サイズを測り間違ったかと思えば、下着と普段着は計測時のサイズで、ぴったりだった。
なのに礼服だけは、腹肉と尻肉が主張しやがりましたわ!
つまりは、服のボタンや尻の縫い目が弾けそう……。
これは、冬越し後に予定している、マナー講師始動までに……痩せろと言いたいに違いない。
強制的ダイエットの神が降臨した瞬間ですわね。
しかし運動ならともかく、食生活の改善は難しい。
何せマルクは元々、不摂生。
私は元々、女伯爵。
互いの記憶を照らし合わせても、まともな食事を作れない!
女伯爵時代の記憶に、調理済みの食事の知識はあれど、調理の知識など殆どない。
もちろん直ぐ様、バルハマダム三人衆を頼ったのは、言うまでもなく。
私の提案するダイエット料理を、マダム達に再現してもらいつつ、マダム達の激励を受けながら運動を頑張って一月。
腹肉と尻肉が萎んだ実感はあれど、漢らしく礼服に袖を通す勇気は……。
「マル坊……」
「今すぐ……」
「着といで!」
バレましたわ!
贈られた直後に試着して以来、袖を通していないのが、ダイエットの鬼婆達に、バレましたわぁぁぁ!
「はいぃぃぃ!」
そうして鬼気迫る鬼婆達から逃げるように、スタートダッシュを決めた私。
エイヤッと礼服に袖を通したのだった。
脱いで下さい」
「お、お止しに……」
ジリジリと、にじり寄るガルム様。
心なしか、愉悦に歪んだお顔ですわ……。
「駄目だよ、ガルム」
「ファビ……」
「私がやる」
「!?」
何故かガルム様と交代して、どこか楽しげに私を部屋の角に追い詰めるファビア様。
――トン……。
ああ、ファビア様が両手で壁ドン、いえ、壁トンを!?
顔面が熱くなるのを感じながら、思わず胸の前で腕を交差してうつむいてしまう。
「ほら、ちゃんと胸を出して?」
ひいぃぃぃ!
ファビア様、片手で二重顎をクイッと!?
それに言い方!
言い方が悪すぎますわ!
「コニー様、男は諦めが肝心ですぞ」
「はぅわぁ!」
ガルム様の言葉に、おかしな叫びが口から飛び出ましたわ!
うぐぅ、そうですのね!
男とは、漢にならねばならぬ事も……。
「そうだよ?
マルクの男前な所を見せて欲しいな」
「ま、またそんな顔を……」
本日、何度目かの上目遣いが、とってもキュートですわね、ファビア様!
至近距離からの攻撃に、淑女な心がバキュンと撃たれて、瀕死ですわ!
でも……でもでもでもでも!
「ガルム様!
こちらにいらっしゃいまし!」
マルク渾身のスタートダッシュで、未だに片手を壁に突いたファビア様の脇を、空いた方の腕側からすり抜ける。
「おや?」
「ええ!?」
ガシッとガルム様の殿方らしい手首を掴み、驚くファビア様を残して客室へと向かった。
※※※※
「で、そろそろ贈られた礼服は着られそうかい?」
優しげに尋ねるリリ婆。
「当初は腹も尻もパツパツだったもんね!」
ミカ婆は快活に……その通りですけれど、もう少し言葉を選んで下さいまし。
「もちろん私達が揃って協力してやったんだ。
少しはマシになってんだろうね、マル坊」
睨むのはお止しになって、エリー婆。
「ど、どうにか?」
マズイですわ。
目が左右にバッシャバッシャ泳いでいる自覚がありますわ!
「「「……はあ」」」
一斉にため息!?
バルハマダム三人衆は、こんな時も息ぴったりですのね!?
ファビア様の素敵可愛い攻めから逃れ、ガルム様と客室に籠もった私は、大人しく服を脱いだ。
もちろん裸体ではない。
太もも丈のダボッとしたおパンツに、くたびれたインナーシャツ姿。
そうして内ポケットからメジャーを出したガルム様に、体のあちこちのサイズを測られたのだった。
ファビア様一行が翌日に邸を経ち、暫くして贈られてきたのが、何着もの下着と普段着、そして礼服。
ファビア様自身の商会で作ってくれたらしい。
ファビア様直筆の手紙には、【先行投資】【返却不可】の文字が。
恐らくマナー講師を引き受けたから、身だしなみに気を遣えと言いたいのだ。
慌ててセーターを編んで贈り返した。
ちなみに五本指靴下と足袋靴下は、ファビア様の足のサイズがわからなかった為に断念した。
業務提携しているファビア様なら、淑女時代の婚約者のように気持ち悪がる事もない……と、信じたい。
そうして贈られた何着もの服に袖を通した時だ。
問題が起こった。
どうして肝心の礼服が、一回り小さいんですの!?
サイズを測り間違ったかと思えば、下着と普段着は計測時のサイズで、ぴったりだった。
なのに礼服だけは、腹肉と尻肉が主張しやがりましたわ!
つまりは、服のボタンや尻の縫い目が弾けそう……。
これは、冬越し後に予定している、マナー講師始動までに……痩せろと言いたいに違いない。
強制的ダイエットの神が降臨した瞬間ですわね。
しかし運動ならともかく、食生活の改善は難しい。
何せマルクは元々、不摂生。
私は元々、女伯爵。
互いの記憶を照らし合わせても、まともな食事を作れない!
女伯爵時代の記憶に、調理済みの食事の知識はあれど、調理の知識など殆どない。
もちろん直ぐ様、バルハマダム三人衆を頼ったのは、言うまでもなく。
私の提案するダイエット料理を、マダム達に再現してもらいつつ、マダム達の激励を受けながら運動を頑張って一月。
腹肉と尻肉が萎んだ実感はあれど、漢らしく礼服に袖を通す勇気は……。
「マル坊……」
「今すぐ……」
「着といで!」
バレましたわ!
贈られた直後に試着して以来、袖を通していないのが、ダイエットの鬼婆達に、バレましたわぁぁぁ!
「はいぃぃぃ!」
そうして鬼気迫る鬼婆達から逃げるように、スタートダッシュを決めた私。
エイヤッと礼服に袖を通したのだった。
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