65 / 67
7 王子様と俺
7ー4 番
しおりを挟む
7ー4 番
蟻の魔物に壁際に追い詰められているルリオス王子を見て俺は、やれやれ、と肩をすくめた。
これでちょっとは、自分のふがいなさを思い知ったかな?
俺が魔法で魔物を攻撃しようとしたそのとき、ルリオス王子の前に黒い影が立ちふさがった。
それは、長い黒髪を腰まで伸ばした獣人だった。
美しい、神が玉から掘り出した彫刻のような肉体をおしげもなくさらしているその男の頭には猫耳がついている。
長い尻尾をルリオス王子の腰に巻き付けて背後にかばいつつ、その獣人は、蟻の魔物の足を片手で掴んで引きちぎった。
辺りに魔物の発する甲高い悲鳴のような声が響く。
「ふん。魔物風情が生意気な」
その男は、手を前に差し出した。
「目障りだ。消えろ」
ごぅっと黒い炎が燃え上がり魔物を一瞬で焼き付くした。
俺は、その獣人に魔法杖を向けた。
「お前、何者だ?」
「我か?」
黒髪の獣人がにぃっと笑ってルリオス王子を抱き寄せる。
「我は、ルリオスの番。この者を傷つけるものは、全て、我が倒す!」
「ルリオス王子の番?」
魔物を倒してルリオス王子のもとに駆けつけたライナスさんが剣先を獣人に向けるとルリオス王子が手を伸ばして制する。
「待って!この子は、敵じゃないから!」
俺たちは、蟻の魔物の群れを狩りつくすとしばらくそこで休憩することにした。
水の入った水筒に口をつけてぐびっと水を飲みながらディナとライナスさんがちらちらと獣人を見ている。
獣人は、フィオールに渡されたマントをまとっているだけで相変わらずほぼほぼ裸でルリオス王子を抱き締めている。
「まさか、あなたがルリオス王子と知り合いだったとは」
驚きを隠せないフィオールを俺は、じっと見つめていた。
「フィオール様は、この獣人をご存知なのですか?」
「ご存知も何も」
フィオールが俺に応じる。
「この方は、魔王様の第一子にして次期王ともくされている王太子、ルシエル・エール・ロートレック殿下だ」
はいぃっ?
俺は、その獣人を思わず二度見してしまった。
この猫耳の獣人が王太子殿下?
「確か、数年前から行方知れずになられているとお聞きしていたが、その王太子殿下がなぜ、ルリオス様の側に?」
ライナスさんがきくとルシエル王太子殿下が口を開いた。
「我が番を見つけたからその側を離れたくなかったのだ」
ぎゅうっとルリオス王子を抱き締めたまま、愛おしげに微笑むルリオス王太子殿下を見てフィオールが深いため息をつく。
「どれだけ我々がお探ししていたと思っておられるのですか」
「我は、ずっと王宮にいたのに気付かんお前たちがバカなのだ」
ルシエル王太子殿下がべっと舌を出す。
蟻の魔物に壁際に追い詰められているルリオス王子を見て俺は、やれやれ、と肩をすくめた。
これでちょっとは、自分のふがいなさを思い知ったかな?
俺が魔法で魔物を攻撃しようとしたそのとき、ルリオス王子の前に黒い影が立ちふさがった。
それは、長い黒髪を腰まで伸ばした獣人だった。
美しい、神が玉から掘り出した彫刻のような肉体をおしげもなくさらしているその男の頭には猫耳がついている。
長い尻尾をルリオス王子の腰に巻き付けて背後にかばいつつ、その獣人は、蟻の魔物の足を片手で掴んで引きちぎった。
辺りに魔物の発する甲高い悲鳴のような声が響く。
「ふん。魔物風情が生意気な」
その男は、手を前に差し出した。
「目障りだ。消えろ」
ごぅっと黒い炎が燃え上がり魔物を一瞬で焼き付くした。
俺は、その獣人に魔法杖を向けた。
「お前、何者だ?」
「我か?」
黒髪の獣人がにぃっと笑ってルリオス王子を抱き寄せる。
「我は、ルリオスの番。この者を傷つけるものは、全て、我が倒す!」
「ルリオス王子の番?」
魔物を倒してルリオス王子のもとに駆けつけたライナスさんが剣先を獣人に向けるとルリオス王子が手を伸ばして制する。
「待って!この子は、敵じゃないから!」
俺たちは、蟻の魔物の群れを狩りつくすとしばらくそこで休憩することにした。
水の入った水筒に口をつけてぐびっと水を飲みながらディナとライナスさんがちらちらと獣人を見ている。
獣人は、フィオールに渡されたマントをまとっているだけで相変わらずほぼほぼ裸でルリオス王子を抱き締めている。
「まさか、あなたがルリオス王子と知り合いだったとは」
驚きを隠せないフィオールを俺は、じっと見つめていた。
「フィオール様は、この獣人をご存知なのですか?」
「ご存知も何も」
フィオールが俺に応じる。
「この方は、魔王様の第一子にして次期王ともくされている王太子、ルシエル・エール・ロートレック殿下だ」
はいぃっ?
俺は、その獣人を思わず二度見してしまった。
この猫耳の獣人が王太子殿下?
「確か、数年前から行方知れずになられているとお聞きしていたが、その王太子殿下がなぜ、ルリオス様の側に?」
ライナスさんがきくとルシエル王太子殿下が口を開いた。
「我が番を見つけたからその側を離れたくなかったのだ」
ぎゅうっとルリオス王子を抱き締めたまま、愛おしげに微笑むルリオス王太子殿下を見てフィオールが深いため息をつく。
「どれだけ我々がお探ししていたと思っておられるのですか」
「我は、ずっと王宮にいたのに気付かんお前たちがバカなのだ」
ルシエル王太子殿下がべっと舌を出す。
63
あなたにおすすめの小説
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
刺されて始まる恋もある
神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
君さえ笑ってくれれば最高
大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。
(クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け)
異世界BLです。
俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。
黒茶
BL
超鈍感すぎる真面目男子×謎多き親友の異世界ファンタジーBL。
※このお話だけでも読める内容ですが、
同じくアルファポリスさんで公開しております
「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」
と合わせて読んでいただけると、
10倍くらい楽しんでいただけると思います。
同じ世界のお話で、登場人物も一部再登場したりします。
魔法と剣で戦う世界のお話。
幼い頃から王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢のラルフだが、
魔法の名門の家系でありながら魔法の才能がイマイチで、
家族にはバカにされるのがイヤで夢のことを言いだせずにいた。
魔法騎士になるために魔法騎士学院に入学して出会ったエルに、
「魔法より剣のほうが才能あるんじゃない?」と言われ、
二人で剣の特訓を始めたが、
その頃から自分の身体(主に心臓あたり)に異変が現れ始め・・・
これは病気か!?
持病があっても騎士団に入団できるのか!?
と不安になるラルフ。
ラルフは無事に専属護衛騎士になれるのか!?
ツッコミどころの多い攻めと、
謎が多いながらもそんなラルフと一緒にいてくれる頼りになる受けの
異世界ラブコメBLです。
健全な全年齢です。笑
マンガに換算したら全一巻くらいの短めのお話なのでさくっと読めると思います。
よろしくお願いします!
婚約破棄された公爵令嬢アンジェはスキルひきこもりで、ざまあする!BLミッションをクリアするまで出られない空間で王子と側近のBL生活が始まる!
山田 バルス
BL
婚約破棄とスキル「ひきこもり」―二人だけの世界・BLバージョン!?
春の陽光の中、ベル=ナドッテ魔術学院の卒業式は華やかに幕を開けた。だが祝福の拍手を突き破るように、第二王子アーノルド=トロンハイムの声が講堂に響く。
「アンジェ=オスロベルゲン公爵令嬢。お前との婚約を破棄する!」
ざわめく生徒たち。銀髪の令嬢アンジェが静かに問い返す。
「理由を、うかがっても?」
「お前のスキルが“ひきこもり”だからだ! 怠け者の能力など王妃にはふさわしくない!」
隣で男爵令嬢アルタが嬉しげに王子の腕に絡みつき、挑発するように笑った。
「ひきこもりなんて、みっともないスキルですわね」
その一言に、アンジェの瞳が凛と光る。
「“ひきこもり”は、かつて帝国を滅ぼした力。あなたが望むなら……体験していただきましょう」
彼女が手を掲げた瞬間、白光が弾け――王子と宰相家の青年モルデ=リレハンメルの姿が消えた。
◇ ◇ ◇
目を開けた二人の前に広がっていたのは、真っ白な円形の部屋。ベッドが一つ、机が二つ。壁のモニターには、奇妙な文字が浮かんでいた。
『スキル《ひきこもり》へようこそ。二人だけの世界――BLバージョン♡』
「……は?」「……え?」
凍りつく二人。ドアはどこにも通じず、完全な密室。やがてモニターが再び光る。
『第一ミッション:以下のセリフを言ってキスをしてください。
アーノルド「モルデ、お前を愛している」
モルデ「ボクもお慕いしています」』
「き、キス!?」「アンジェ、正気か!?」
空腹を感じ始めた二人に、さらに追い打ち。
『成功すれば豪華ディナーをプレゼント♡』
ステーキとワインの映像に喉を鳴らし、ついに王子が観念する。
「……モルデ、お前を……愛している」
「……ボクも、アーノルド王子をお慕いしています」
顔を寄せた瞬間――ピコンッ!
『ミッション達成♡ おめでとうございます!』
テーブルに豪華な料理が現れるが、二人は真っ赤になったまま沈黙。
「……なんか負けた気がする」「……同感です」
モニターの隅では、紅茶を片手に微笑むアンジェの姿が。
『スキル《ひきこもり》――強制的に二人きりの世界を生成。解除条件は全ミッション制覇♡』
王子は頭を抱えて叫ぶ。
「アンジェぇぇぇぇぇっ!!」
天井スピーカーから甘い声が響いた。
『次のミッション、準備中です♡』
こうして、トロンハイム王国史上もっとも恥ずかしい“ひきこもり事件”が幕を開けた――。
BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる