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2 新しい人、新しい世界

2ー9 悪夢のような昼食

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    朝食の後は、僕らは、それぞれの与えられた仕事を始めた。
    ハヅキ兄さんとナツキ兄さんは、フェンリルとレッドドラゴンになって、辺りの見回りに出掛けたし、カヅキ兄さんは、カピパラじゃなくってプーティになって、村を見回っていた。
     僕は、午前中は、魔石に回路を刻んだり、新しい魔道具の実験をしたりして過ごす。
    あっ、僕には、いつの間にか、『魔道技師』の称号が与えられていた。
    だけど、職業は、無職のままなんだよね。
    僕が集中して時間を忘れているとカヅキ兄さんが僕の部屋へとやってきてドアをノックした。
    「ユヅキ、昼飯の時間だぞ」
     昼御飯は、カヅキ兄さんが作ってくれることが多かった。
    ハヅキ兄さんとナツキ兄さんは、森で外食してくることが多いからな。
    だが、この日は違った。
    台所へ足を踏み入れたとき、僕は、底知れぬ嫌な予感を感じていた。
    なんというか。
     その。
    悪夢のような香りが立ち上っている。
    僕が回れ右をしてそっと立ち去ろうとしたのを、目ざとくオルガが見つけて呼び止めた。
    「ユヅキ、お昼は、オムライスよ」
     おむらいす?
    僕は、台所のテーブルの上に並んでいる黒こげの何かの山をじっと凝視していた。
    うん。
    オルガは、とってもいい子だ。
    気立てはいいし、何より、かわいい。
   猫耳族は、美形が多いらしいのだが、オルガは、その中でも特に、美人になること間違いなしだ。
    オルガは、住んでいた村が戦場になったとき、人間の奴隷商人に捕らえられてしまったのだが、その商人のキャラバンが魔物に襲われたため、運よく逃げられたのだ。
   しかし、そのまま辺りを何日もさ迷っている内にこの森に入ってしまったのだった。
    以来、この村でホブゴブの子供として暮らしている。
   ああ。
    少し、現実逃避してたな。
    オルガは、いい子だけど、料理は、はっきりいって酷い。
    食べられたものではない。
    僕らは、テーブルにつくと木製のスプーンを手にお互いの様子を伺っていた。
   オルガは、満面の笑みを浮かべて、僕たちがそれを口にするのを待っていた。
    僕らが彼女の作ったおむらいすとやらを食べるのを。
    「いただきます!」
     そのとき、フランシスが無邪気にそのオムライスモドキを一口食べた。
    オルガが何かを期待する瞳をフランシスに向けた。が、フランシスは、無言で咀嚼を続けている。
    1分たち、2分、3分・・5分たってもフランシスは、もぐもぐ口を動かし続けていた。
   彼女は、明らかに救いを求める目で僕たちの方を見つめている。
   「オルガ!母ちゃんが呼んでるぞ!」
    台所の窓からホブゴブのとこの末っ子が顔を出してオルガを呼んだ。
   オルガは、ちっと舌打ちすると僕たちに背を向けて駆け出していった。
    僕たちは、ホッと安堵の溜め息を漏らした。
    僕は、はっと気づいて、まだモグモグを続けているフランシスに向かって言った。
   「フランシス、はやく、ぺっして、ぺっ!」
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