転生したら『無職』でした~モフモフお兄さんたちに囲まれてスローライフのつもりが商人無双しています~

トモモト ヨシユキ

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6 それぞれの選ぶ未来

6ー7 ヒーロー

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   「夢か・・」
    僕は、マリアンヌの方へとショートケーキののった皿を差し出して、笑った。
   「夢なら覚めないでほしいな。とにかく、このケーキを食べるまでは」
    「そうね」
     彼女は、くすっと笑ってフォークを手に取ると言った。
    「いただきます」
     彼女は、白い生クリームの上に置かれた赤いイチゴを手で摘まんで口に放り込んだ。
    「甘い」
     「これは、この世界にあったナーダの実を改良して作ったものだよ。もともとイチゴによく似た実だったんだけど、これだけ美味しくするのはなかなか大変だったんだ。君に一番に食べて欲しくって」
     「こんなにかわいくて、美味しいケーキなんて初めて。いえ、この世界では、ってことだけど」
    「そうだろ?」
     僕は、彼女の言葉に頷いた。
   この世界には、お菓子はあまりない。
   だから、僕は、王都に作ったカフェで様々なスウィーツを提供している。
     甘いものは、いい。
    心が穏やかになる。
    「このケーキは、カスケード王国の王都のカフェで出してみようと思って」
    「いいんじゃない?」
    マリアンヌが一口ケーキをほうばった。
   「うん。おいしい」
     僕らは、それからしばらくの間、どうということもない世間話をしながらケーキとお茶を楽しんだ。
    「覚えてる?ユヅキくん」
    マリアンヌが僕を覗き込んだ。
    「前世で、わたしたちがまだ子供だった頃、ユヅキくんが初めてわたしにくれたお菓子のこと」
    「覚えてるよ」
     僕は、懐かしく思い出していた。
    あのとき、僕は、言霊使いの師匠のもとで修行中でお菓子なんて食べることがなかった。
    もちろん、友達なんて1人もいなかった。
   それでも、僕は、時々見かける近所の女の子が気になっていたんだ。
    それは、長い黒髪が綺麗な女の子だった。
    僕は、その子の気を引きたくって懸命にクッキーを作ったんだ。
   だけど、初めて作ったクッキーは、酷い出来だった。
    堅焼き煎餅みたいなクッキーを僕は、ドキドキしながらその子に差し出した。
    彼女は、ニッコリと笑って、僕に代わりに甘い飴玉をくれたんだ。
   「君は、天使みたいにかわいかったな」
    「あら、そんなことを言っても、何も出ないわよ」
    マリアンヌがお茶の入ったカップ越しに僕を見て微笑んだ。
   「あなたの方がかわいかった。昔も、今も」
    「言わないで」
     僕は、少し、ムッとして言った。
   うん。
   僕は、男なんだし、かわいいなんて誉め言葉にはならないよ。
    「女の子みたいだってよくからかわれたよ」
    「わたしは」
    マリアンヌが言った。
    「一度もそんな風には思わなかったな」
    「マリアンヌ」
     「いつも、あなたはみんなを守って戦っていた」
    マリアンヌは、ハチミツ茶を飲み干した。
   「わたしたちのヒーローだもの、ユヅキくんは」
    
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