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1 バナナを食べて異世界無双!?

1ー9 娼館でパーティーですと?

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 1ー9 娼館でパーティーですと?

 草原をひたすらに歩いていくと街道に出た。
 俺たちは、その街道沿いにしばらくとぼとぼと歩いていた。
 日差しはきついし、腹もすいてくる。
 俺は、次回があるなら次は、飲み物や食料をもっと用意するようにしようと決意していた。
 だが、天は俺たちを見捨ててはいなかった。
 見知らぬおっさんが歩いている俺たちに声をかけてきて荷馬車に載せてくれたのだ。
 「あんたたち、すごい健脚だねぇ。ここから街までは歩きだとまだ半日はかかるよ」
 大きなふかふかの犬耳を垂らした犬の獣人らしきおっさんは、笑顔で荷台に乗っている俺たちに話しかけてくる。
 「しかし、こんなところでエルフのカップルに会うなんてなぁ。珍しいな」
 「はぁ」
 俺は、エルフでもなんでもなかったけど適当に話をきいていた。
 犬のおっさんは、ほんとに親切で好い人だった。
 街まで行く途中で俺たちに水とパンまでわけてくれた。
 「ほら、水を飲みな。これも食っとけ。腹減ってるんだろう?」
 「ありがとうございます」
 俺は、水を受け取りごくごくと飲み、パンにもかぶりついた。
 うん。
 なんかパサついてておがくずみたいな味だが背に腹はかえられない。
 俺は、だいぶん前に無理やり食わされたバナナ以外には異世界に来てから何も食ってなかったので腹が減っていたのだ。
 だが、紳士だからな。
 俺は、一応黒江と女にもパンをわけてやった。
 だが、黒江は、猫のふりをしてそっぽ向いているし、女は受け取ってもなんか微妙な顔をしているだけで食おうとしなかった。
 なんだ?
 こいつら、パンが不味いからって人の親切をなんだと思っていやがるんだ?
 俺が女と女の肩にのっている黒江をじっと見ているとやっと女は、パンを一口もぐもぐとほうばった。
 俺は、うんうんと頷く。
 それでいいんだよ。
 不味くっても人様の親切は無にしてはいけないからな。
 それから十分ほどして遠くに街を囲む外壁が見えてきた頃、俺は、体の不調に襲われていた。
 全身が痺れて体に力が入らない。
 これは、もしかしたら脳梗塞かなんかの病気かもしれない。
 俺は、救いを求めて御者台に座っている犬のおっさんの背を見つめていた。
 すると、くるりと振り向いた犬のおっさんがすげぇ冷たい目で俺たちを見るとにたり、と笑った。
 「いやぁ、こんなところで野良のエルフを2匹も見つけられるなんてわしは、運がいい。善行ってやつはしとくもんだな、おい。ちょっとした小遣い稼ぎができるよ。今夜は、娼館でパーティーだな」
 娼館でパーティーだと?
 どういうこと?
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