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6 夜の女神の都

6ー4 癒されたい!

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 6ー4 癒されたい!

 「どうされたんですか?ご主人様」
 週末に訪れた異世界で俺は、ルゥに心配されていた。
 「なんか、お疲れの様ですが」
 「大丈夫だ。ほっといてくれ」
 俺は、連日のバカどもとの付き合いに疲れきっていた。
 だって、あいつら小学校もまともにでてないんじゃね?ってぐらいバカだし。
 よく、こんなんで高校に入学できたよな、って俺がきくと、蒔苗姉は、笑顔で答えた。
 「教育委員会の偉い人と親が知り合いだから」
 マジかよ?
 日本の教育界は、どうなってんだ?
 田中 メイコは、そんな蒔苗姉弟を小馬鹿にした様な目で見ていたが、こいつも学力的には蒔苗姉弟とそんなに変わりがない。
 とにかくこいつらをなんとかしないと俺に安らぎの日々は戻ってこない。
 だから、俺は、こいつらのために山を張りまくった。
 そして、それを必死に覚え込ませた。
 その結果、こいつらは、首の皮一枚でなんとか赤点をとらずにすんだというわけだった。
 このことで一番ホッとしていたのは俺自身だった。
 これでもう、こいつらから解放される。
 もともと週末は、家の事情でこいつらとの付き合いはお断りしていたんだが、平日は、その限りではなかった。
 毎日のように奴らは、俺の部屋に上がり込んできた。
 マジ、勘弁してくれよ!
 ああ。
 誰か、俺を癒してくれ。
 俺は、風呂敷でマンガ本をくるみながらため息をついた。
 荷物を背負うと俺は、店を出た。
 自転車にまたがる俺に前のカゴに乗り込んだ黒江が話しかけた。
 「気を抜くな、薫。今が正念場だぞ」
 「わかっている」
 俺は、ムッとして頷いた。
 ルゥに確認したことによると明日に祭りをひかえてすでに大神官は、街の聖堂に入ったらしい。
 俺は、なんとか大神官に会って魔王の封じられた肉体について聞き出さなくてはならないのだ。
 俺は、いつものように貸本屋として客のもとを回っていった。
 みな、いつもより浮かれていて、楽しげだった。
 最後に教団の聖堂へとたどり着いた時には、すでに辺りは暗くなっていた。
 まずい。
 もうすぐ帰らなくてはいけない。
 黒江が囁いた。
 「いそげ!薫」
 俺は、黙ったまま頷いた。
 
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