週末異世界成り上がり周遊記～バナナはおやつに入りますか？～人造人間と黒猫は、スローライフを夢見るか？

11 恋とか愛とか

11ー5 変化ですか？

　11ー５　変化ですか？

　しばらくマスターは、無言だった。
　俺が電波が悪いのか、とか心配しているとやっと、マスターの声がきこえた。
　「お前がそこにこんなにも早くたどり着くとは思ってもいなかったよ」
　それからジジイは、耳を疑うようなことを話し始めた。
　「その問いを問われるのは魔王が、お前の兄である柴崎　夏樹がよみがえった後のことだろうと思っていた」
　はい？
　俺は、ジジイにもう一度訊ねた。
　「俺は、ほんとはなんのために、何を目的に『アロアナード』に行ってたんだ？」
　「それは」
　マスターが口を開いた。
　「魔王を復活させるため、だ」
　「嘘をつくな！」
　俺は、携帯に向かって怒鳴った。
　「当事者たちから言質をとったんだ！間違いない。やつらは、魔王の一部を封印しているというわけではなかった」
　「それか、彼らが知らされてないのか、な」
　マスターが答えた。
　どういうことだ？
　俺は、  マスターに訊ねた。
　「それは、どういうことだ？」
　 答えろ！
　俺は、願っていた。
　何か、答えてくれ！
　はやく！
　マスターは、答えた。
　「魔王を倒したのは、『アロアナード』の主神であるアンガス神だからな。その子神である連中を倒すことによって魔王の封印が解けるのではないか、と我々は予想したのだ」
　つまり、確信はないのか？
　俺は、はぁっとため息をついた。
　 「つまり、俺は、失敗したってことか？」
　「いや、それは、違う」
　マスターが慌てて答えた。
　「お前は、これまで『アロアナード』での神との戦いの中で変化があった筈だ。そうではないか？薫」
　まあ、確かに。
　俺は、頷いた。
　この数ヵ月で俺は、いろいろ変化した。
　以前の俺ならクラスメートのために合宿なんてしないだろう。
　だが、それがどうしたというんだ？
　マスターが電話越しに頷く様子が伝わってくる。
　「それで？なんか、思い出したとか、記憶に変化があったとか、ないのか？」
　マスターが俺にきいた。
　はい？
　俺は、少しだけ考え込んだ。
　だが、何も、特に異常はない。
　「俺の記憶には、何も異常はない」
　「そうなのか？」
　明らかにがっくりとしたマスターの声に俺は、戸惑っていた。
　いったい、何をマスターは期待していたのか？