塔の上のオメガは、アルファに熱愛される~逃れたいんだが番がそれを許さない~

トモモト ヨシユキ

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9ー6 最後の情け

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 9ー6 最後の情け

 「最後のお情けをいただきたく」
 俺は、オーリの剣を握ったままその切っ先を自分の喉に向けた。
 ぴりっと痛みが走り、喉元に生ぬるいものが流れるのがわかる。
 俺は、一気に貫いた。
 ごぼっと口に血が流れ込んで。
 口許から流れる血に汚れた俺をオーリが信じられないものを見るような目をして見下ろしていた。
 「あ、い、して、ます」
 俺は、もう、言葉にならない言葉を溢した。
 目を閉じるが熱い涙が流れ落ちる。
 愛している。
 俺は、オーリを愛している。
 最初から望んだことではなかったけれど、それでも俺は、オーリを愛した。
 どこにもいけないのは、番だからではない。
 俺の魂が、ここを離れることを拒んだのだ。
 「はやく!治癒師を!」
 アルメタス元騎士団長の声が聞こえた。
 俺は、力なく崩れ落ちる。
 オーリが慌てて俺を抱き締めた。
 ああ。
 服が汚れちゃう。
 俺は、口許に笑みを漂わせていた。
 オーリの腕に抱かれて死ねるなんて。
 なんて僥倖。
 「ミリナルダ!」
 オーリの呼ぶ声が聞こえたけど、もう、オーリの姿が見えない。
 「死ぬな!死ぬことは許さん!」
 許されなくても。
 俺は、遠くで思っていた。
 俺は、死ぬのだ。
 
 「おや、もう、そんな時間だったのか?」
 白い部屋で白い影が俺を見下ろしているのが見えた。
 「お前は、まだ、死なない筈なのに?」
 白い影は、しきりに首を傾げている。
 「どういうわけなのかな?」
 「俺が」
 俺は、白い影に応じた。
 「それを望んだのです」
 「本当に?」
 白い影がはぁっとため息をつく。
 「今度こそ、うまくいったと思ったのに。また、最初からやり直しか」
 白い影が不満げに俺を見て訊ねた。
 「でも、それでいいの?ほんとに悔いはない?」
 俺は、頭を振った。
 悔いなんてないし!
 俺は、確かに、あの孤独で横暴な王を愛した。
 そして。
 深く愛されたのだ。
 もう、これ以上のものは、いらない。
 欲しくはない。
 不意に俺の胸元から光が溢れ出た。
 「この光、は?」
 白い光に満たされて辺りは、うっすらと滲んで消えていく。
 「ほら!いったことじゃない!」
 白い影が慌てて俺に告げた。
 「世界の柱である君が消えたらこの世界はなくなってしまうんだよ?」
 いや。
 そんなこと、言われても!
 俺の中をあの世界で生きてきた記憶がよぎっていく。
 塔でルシー君と暮らしていた頃。
 ルシー君を殺されて、無理矢理、拐われたこと。
 それから。
 オーリに愛されて生きてきた。
 俺も。
 オーリを愛していた。

 
 
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