塔の上のオメガは、アルファに熱愛される~逃れたいんだが番がそれを許さない~

トモモト ヨシユキ

文字の大きさ
32 / 87
4 狂王の番

4ー2 愛のために

しおりを挟む
 4ー2 愛のために

 冷たい水に浸されるのを感じて俺は、目を開いた。
 口の端から水が流れ落ちる。
 「ん、ぐっ!」
 俺は、咳き込んだ。
 俺を抱き抱えていたオーリが俺の背をさする。
 「大丈夫、か?ミリナルダ」
 俺は、しばらく咳き込んでから濡れている口許を手の甲で拭ってオーリのことを睨み付け掠れた声を出す。
 「大丈夫なわけ、ないだろ……!」
 なんとかオーリの腕から逃れようとする俺を見てふっと口許を緩ませてオーリは、俺の頬にちゅっとキスをする。
 「さすがは、私の妃だな」
 俺は、オーリの胸元を両手で押し退けながら辺りを見回す。
 そこは、塔の中の俺の部屋だった。
 俺は。
 ぼんやりとしている頭をぶんぶんと振る。
 あれからどうなった?
 狂ったみたいに俺は、オーリに抱かれて。
 時間も、何も関係ない。
 ただ、獣みたいにお互いを求めあって。
 そして。
 俺は、手で項に触れた。
 そこは、つきん、と痛んで。
 噛まれたんだ!
 俺は、衝撃に打ちのめされた。
 俺は、もう、この男から逃れられない。
 「ぅっ……くっ……」
 俺がうつむいて涙を流しているのを見てオーリは、俺を抱き寄せる。
 「ああ、泣かないでくれ、ミリナルダ。かなり本気で噛んだから痛むかもしれないが、すぐに傷は癒える」
 優しく俺の背をさするオーリは、あのときの獣とは異なっていて。
 俺の涙は、止まらない。
 嗚咽する俺をあやすように抱いて揺らしながらオーリは、囁いた。
 「大丈夫、もう、心配しなくてもいいんだ。私がついている。もう、お前は、私のたった1人の妃となったのだから」
 妃?
 俺は、涙に濡れた目でオーリを見上げる。
 俺は、この男と塔を出ていくのか?
 ルシー君は?
 俺は、はっとしてオーリに訊ねた。
 「ルシー、ルシー君は?」
 オーリの赤い瞳が鈍く輝く。
 「あれは、死んだ」
 冷たく凍える声に俺は、ぶるっと体が震えた。
 「し、んだ?」
 俺は、信じられなくて。
 「ほんと、に?本当に、死んじゃったの?」
 「本当だ」
 オーリが固く冷えた声で答えた。
 「私が殺した。この手で、な」
 俺は、オーリが差しのべた手をまじまじと見つめて息を飲んだ。
 ルシー君、が死んだ?
 ルシー君が?
 俺は。
 最後に見たルシー君は、残された片目で俺を見つめて。
 そして。
 ルシー君の唇が微かに動いたのを俺は、見たんだ。
 『あいしている』
 俺は、口許を押さえる。
 嗚咽が漏れないように。
 俺がルシー君のために泣くのは、これが最後だろう。
 愛のために泣くのは。

 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~

大波小波
BL
 フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。  端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。  鋭い長剣を振るう、引き締まった体。  第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。  彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。  軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。  そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。  王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。  仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。  仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。  瑞々しい、均整の取れた体。  絹のような栗色の髪に、白い肌。  美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。  第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。  そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。 「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」  不思議と、勇気が湧いてくる。 「長い、お名前。まるで、呪文みたい」  その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

騎士団長の秘密の部屋に匿われています!?

krm
BL
王子なのに魔力が異端!?式典中にまさかの魔力暴走を起こした第三王子アストル。地下室に幽閉されそうになったその時、騎士団長グレンの秘密の部屋にかくまわれることに!けれどそれは、生活感ゼロ、無表情な騎士とふたりきりの、ちょっと不便な隠れ家生活だった。 なのに、どうしてだろう。不器用なやさしさや、ふいに触れる手の温もりが、やけに心に残ってしまう。 「殿下の笑顔を拝見するのが、私の楽しみですので」 「……そんな顔して言われたら、勘違いしちゃうじゃん……」 少しずつ近づいていく二人と、異端の魔力に隠された真実とは――? お堅い騎士×異端の王子の、秘密のかくれ家ラブコメディ♡

【BL】魔王様の部下なんだけどそろそろ辞めたい

のらねことすていぬ
BL
悪魔のレヴィスは魔王様の小姓をしている。魔王様に人間を攫ってきて閨の相手として捧げるのも、小姓の重要な役目だ。だけどいつからかレヴィスは魔王様に恋をしてしまい、その役目が辛くなってきてしまった。耐えられないと思ったある日、小姓を辞めさせてほしいと魔王様に言うけれど……?<魔王×小姓の悪魔>

うそつきΩのとりかえ話譚

沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。 舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

処理中です...