転生したら本でした~スパダリ御主人様の溺愛っぷりがすごいんです~

トモモト ヨシユキ

文字の大きさ
19 / 28

18 誘拐されちゃいました。

しおりを挟む
    俺は、ロイドが『R』シリーズだったことをクリスたちに伝えるために転移ゲートを開こうとした。
    その時、バタバタという騒がしい足音がきこえてきて、俺は、耳をすました。
    「何者だ!」
     ロザの声がきこえた。
  「ここをユウレスカ様の居城と知ってのことか?」
   キィンと刃を交える音が聞こえる。
   ヤバくない?
  俺は、ロザのもとへと急ごうとドアを開いた。
    「っ!」
    目の前に見知らぬ男が立っていてた。男は、俺を見てニヤリと笑った。 
    「これは。ユウレスカ姫ですな?おかげで探す手間が省けた」
    「ユウレスカ様!」
     ロザが男たちに押さえつけられている。俺は、ロザの方に向かおうとして男に阻まれた。
   「おっと、あなたのお相手は、この私ですよ、ユウレスカ様」
    俺は、雷撃の魔法で男を倒そうとしたが魔法は、発動しなかった。
   なんで?
   俺は、もう一度、雷撃の魔法を展開しようとした。
   しかし、魔法は、発動しなかった。
  なんでだ?
   呆然とする俺に男がにやっと笑った。
  「あなたは、特別な魔法使いだってきいてますが、私たちにその力は、通じませんよ、ユウレスカ様」
    男が懐からチェーンのついた蒼い魔石を取り出して俺に見せた。
   「これがあれば、あなたの力は、封じられるってことです。さあ、わかったら、大人しくしてください。我々も、商品に怪我をさせたくはない」
    商品?
   男が俺に触れようとしたのを見たロザが叫んだ。
   「やめなさい!その方に触れるな!」
    「うるさい女だ」
    男が呟いて、他の連中に押さえつけられているロザに向かって手をかざした。俺は、男の手にしがみついていた。
   「俺が行けばいいんだろう?ロザに手を出すな!」
    「おや、騎士道精神ですか?」
    男がにやっと笑って、頷いた。
  「では、縛らせていただきますよ、ユウレスカ様」
      男が蒼い魔石の編み込まれた縄で俺の手足を縛っていった。ロザが逃れようとするのを男たちが押さえつける。
    「酷いことするな!」
     「わかってますよ、ユウレスカ姫。あなたが大人しく従ってくれさえすれば、我々は、あの女には、何もしません」
    男は、俺を縛り上げると、肩に担ぎ上げた。ロザが叫ぶ。
   「ユウレスカ様!」
    「この女、うるさいな」
    ロザを押さえつけている男が腕を振り上げてロザを殴った。俺は、声をあげた。
   「ロザ!」
    ロザは、ぐったりとして動かなくなった。
   男たちは、俺を担いで離宮から出ると、外に用意されていた馬車に俺を積み込んで走り出した。
    
      男は、馬車に乗ると俺に目隠しをした。
   「一応ね。逃げられれはしないがね」
    「誰の命令でこんなことを?」
    俺は、きいた。男は、笑った。
   「すぐに、わかるだろう」
    男は、いい、それきり黙り込んでしまった。
   かなり、長い時間、俺は、馬車で揺られていた。
   ここは、たぶん、王宮の外だ。
  黙り込んでいた男が不意に、口を開いた。
  「しかし、あなたも、いい根性してる。女装して王宮に潜り込んでいるなんて、バレたら死罪だ」
    「これは・・いろいろ事情があって」
    俺が言うと、男が低く笑った。
   「まあ、男を知らないわけじゃなさそうだし、あなたのような少年を好む客もたくさんいるからね」
   マジか?
   俺は、なんとか逃れられないかと縛られた手足を動かそうとした、だが、きつく縛られた手足は、身動ぎもできなかった。
    「無駄ですよ、ユウレスカ姫。やめておきなさい。怪我するだけだ」
    男は、それっきり黙り込んで、二度と、俺に話しかけはしなかった。
   俺は、暗闇の中で感覚を封じられて、かつて、ダンジョンに封じられていたときのことを思い出していた。
    誰かはわからないけど。
   俺は、思っていた。
   俺を拐うように命じた奴は、俺の正体を知っている?
   だからこそ、俺の力を封じることができたのだろう。
   俺は、思った。
   まさか、ロイドが?
   俺は、頭をぐるぐるさせていた。
  その間にも、馬車は、駆け続けた。
   やっと、馬車が止まったときには、俺は、ぐったりと疲れはてていた。
    「大丈夫か?姫様」
    男が言って、俺を助け起こし、俺の口に水筒をあてがい、水を流し込んできた。水は、生ぬるかったけど、俺は、ごくごくと飲み下した。
    水を飲んで、少し、元気が出た俺は、男にきいた。
   「もう、アジトに着いたのか?」
    「ああ」
     男は、俺の目隠しを取り去って言った。
   「さあ、終点だ。ユウレスカ姫」
   男は、俺を抱き上げると馬車から下ろした。
   すでに夜は明けていて、辺りは、明るくなっていた。
   馬車は、大きな商館らしき屋敷の前に停められていた。
   「ここは、この国1の奴隷商のお屋敷さ。あなたは、これから、ここで商品として扱われるんだ」
    男は、言った。
   マジか。
   俺は、縛られたまま屋敷の門を潜り、中へと運ばれた。
   「届いたのか、ギル」
    男の主人らしき太った中年男が現れて、俺をじろじろと値踏みするように眺めて、ニヤリと笑った。
    「これがユウレスカ姫、か」
   「ええ、そうです。旦那様」
   「連れてこい。先程からお客様がお待ちかねだ」
   ギルと呼ばれた男は、俺を抱いたまま主人の後に従った。
   男は、俺を贅を凝らした広間へと連れていくとそこの毛足の長い絨毯のひかれた床の上へと下ろした。
   「すぐに、お前のご主人様が見えられるからな、ユウレスカ姫」
    俺は、男の言葉に背筋がぞっとした。
   男は、くふふっと下卑た笑いを漏らした。
   すぐに、高い足音が聞こえてきて、ドアが開かれた。
   誰か。
  人が入ってくる。
  「久しぶりだな」
   その声をきいて、俺は、びくっと体を強ばらせた。
   俺は、ゆっくりと顔をあげて、その男を見上げた。
   青みがかった銀髪に、凍えるような冷たいアイスブルーの瞳。
   男は、ずっと行方不明だったルイス・ガーゴリウスだった。
   「あ・・あっ・・」
    俺は、みいられたようにルイスから目が離せなくなっていた。
   ルイスは、その場に膝をついて俺を覗き込み、手を伸ばしてくると、俺の頬へと触れた。
     「再び会える日を待ち焦がれていたぞ、ヨシュア、いや、ユウだったか?」
   ルイスは、含み笑いを漏らした。
   「どうでもいいことだな。どうせ、記憶を消し去り、まっさらな状態に戻すのだからな」
    ええっ?
    俺は、目を見開いてルイスのことを見つめていた。
   ルイスは、俺の額に手をかざすと魔法を展開した。
  光が。
  俺のことを包み込む。
  「いや・・だ!」
   俺は、涙が頬を伝うのを感じた。
  全てを忘れさせられるのは、嫌だ!
  封印を解かれてからのこと。
  クリスや、ディエントス、アルカイドと過ごした日々。
   そして。
   アーク。
   俺は、目を閉じた。
   アークのこと、忘れたくない!
  「抵抗するな。苦しむだけだぞ」
   ルイスが言った。
   俺は、頭を振った。
  「嫌、だ!もう、お前の道具になるのは、いや・・だ・・!」
    突然、灯りが消え、辺りが真っ暗になった。
  「なんだ?」
   誰かの手が、俺の体に触れ、俺を抱き上げた。
   「だ、誰?」
    「静かに」
    その声は、俺にそう言うと、俺を抱いたまま駆け出した。
   屋敷の外に出て、月明かりの下で見たその男は、フードを深く被っていてよく顔が見えなかった。
   男は、俺を抱いたまま町外れにある廃屋まで逃れると、そこで俺を下ろし縄をナイフで切り、俺を解放した。
   「ありがと・・」
    俺は、礼を言ったが、男は、無言だった。
  誰、だ?
   俺は、手を伸ばしてローブの裾をひいた。
   少しだけ、男の顔が見えた。
   「・・ロイド?」
   その男は、ロイドだった。
   「なんであんたが、俺を助けてくれたんだ?」
   「お前にまた、世界を壊されたくはない」
    ロイドが冷たく言った。
   「それに、お前がいなくなれば、殿下が悲しむ」
   「またまた、そんな、冷たいこと言っちゃってさ」
    背後から声がして俺たちは、振り向いた。
   そこには、金髪の少年の姿があった。
   「ティル?」
    ティルは、にこにこっと微笑んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。 魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・ なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️ エブリスタにも、掲載しています。

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。 

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

王子殿下が恋した人は誰ですか

月齢
BL
イルギアス王国のリーリウス王子は、老若男女を虜にする無敵のイケメン。誰もが彼に夢中になるが、自由気ままな情事を楽しむ彼は、結婚適齢期に至るも本気で恋をしたことがなかった。 ――仮装舞踏会の夜、運命の出会いをするまでは。 「私の結婚相手は、彼しかいない」 一夜の情事ののち消えたその人を、リーリウスは捜す。 仮面を付けていたから顔もわからず、手がかりは「抱けばわかる、それのみ」というトンデモ案件だが、親友たちに協力を頼むと(一部強制すると)、優秀な心の友たちは候補者を五人に絞り込んでくれた。そこにリーリウスが求める人はいるのだろうか。 「当たりが出るまで、抱いてみる」 優雅な笑顔でとんでもないことをヤらかす王子の、彼なりに真剣な花嫁さがし。 ※性モラルのゆるい世界観。主人公は複数人とあれこれヤりますので、苦手な方はご遠慮ください。何でもありの大人の童話とご理解いただける方向け。

異世界転生したと思ったら、悪役令嬢(男)だった

カイリ
BL
16年間公爵令息として何不自由ない生活を送ってきたヴィンセント。 ある日突然、前世の記憶がよみがえってきて、ここがゲームの世界であると知る。 俺、いつ死んだの?! 死んだことにも驚きが隠せないが、何より自分が転生してしまったのは悪役令嬢だった。 男なのに悪役令嬢ってどういうこと? 乙女げーのキャラクターが男女逆転してしまった世界の話です。 ゆっくり更新していく予定です。 設定等甘いかもしれませんがご容赦ください。

ラスボス推しなので! 魔王の破滅フラグ折って溺愛されます!??

モト
BL
ゲーマーである“ホツ”は、大ハマリ中のオンラインゲーム内に召喚されてしまう。推しであるラスボスに出会い、切磋琢磨、彼の破滅フラグを折ろうとする。……が、如何せんホツはただの一般人。魔法も使えなければ、家が大好きなただのゲーマー。体力もあまりない。 推しからはすぐに嫁認定されます。 推しに推されて??モフモフ……ふぁわ、ねこちゃん……モフモフ…………。 不憫なラスボスの境遇、破滅フラグを折る為にホツがしてきたことは。 何故、ホツは楽観的なのにひたすらに彼を守ろうとするのか、違和感はラストに。ムーンライトノベルズでも投稿しております。 一日2回更新です

薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない

くまだった
BL
アーノルド公爵公子に気に入られようと常に周囲に人がいたが、没落しかけているレイモンドは興味がないようだった。アーノルドはそのことが、面白くなかった。ついにレイモンドが学校を辞めてしまって・・・ 捻くれ傲慢公爵→→→→→貧困薄幸没落子爵 最後のほうに主人公では、ないですが人が亡くなるシーンがあります。 地雷の方はお気をつけください。 ムーンライトさんで、先行投稿しています。 感想いただけたら嬉しいです。

処理中です...