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20 戻ってこい!
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戦の準備が始まり、アークとクリスは、王都に戻って、忙しく過ごしていた。
俺は、世話役兼護衛のロザとクーナの山城に取り残されていた。
そんなある日、クーナの山城へと思わぬ客が訪れた。
一人は、褐色の肌に、金の髪の少女で、もう一人は、銀髪に銀色の瞳の少年だった。
彼らは、それぞれディエントスとアルカイドを訪ねてきたのだった。
褐色の肌の少女は、ディエントスの側近のエルフでリッカという名で、銀髪の少年は、アルカイドの仲間の精霊でエリという名だった。
リッカは、執事のお仕着せを着たディエントスを前に言った。
「ディエントス様、そろそろお遊びは止めて、お戻りください。今、人間たちは、戦の最中です。今こそ、魔王軍が攻め込むべき時ではないですか」
マジで?
俺は、ディエントスをちらっと見た。ディエントスは、にやりと笑った。
「それも、なかなか面白そうだな」
まずいって、それは!
俺は、ディエントスに言い放った。
「そんなことしたら、この召喚の術を永遠に解いてやらないからな!」
「なんだと?この裏切り者め!」
なぜか、リッカに俺は、裏切り者呼ばわりされた。
最初から、俺は、こっち側だって。
エリも、頷いた。
「ほんとに。精霊王を人間のもとに召喚するとは、許しがたい裏切りです!」
「なんでだよ?」
「あなたも、本の精霊でしょ?」
マジで?
俺、精霊だったの?
「とにかく」
二人が声を揃えて言った。
「お二人を返してもらいたい」
「ええっ?」
俺は、少し、考えてから、ディエントスたちにきいてみた。
「戻りたい?」
「まあ、戻りたいか、戻りたくないかといえば、戻りたいかな」
二人は、答えた。
「しかし、今は、人間界の動きが興味深いので、もうしばらくここで過ごしてもいい」
ディエントスがそう言ったら、アルカイドも答えた。
「ディがそう言うなら、私も残りたいな」
「はい?」
エリが、信じられないという表情できいた。
「本気ですか?アルカイド様?」
「本気だ」
アルカイドは、答えた。
「私は、もう少し、ディと一緒に暮らしたい」
「マジですか?」
ディエントスもまんざらじゃなさそうで、その二人の様子を見た、リッカとエリは、とりあえず、それぞれの国へと帰ることになった。
二人は、ぶつぶつ、文句を言いながら山城を後にした。
「信じられない!」
「マジで、むかつく!」
というわけで、当分、ディエントスとアルカイドは、俺のサーバントを続けることとなった。
「よかったです。魔王が、戻ると言わなくって」
ロザが、お茶を運びながら言った。
なぜか、いまだにメイド姿のロザは、俺にお茶のカップを差し出しながら言った。
「この上、魔王軍とまで戦うことになれば、いくら我がアストラル王国であっても無事ではすまないでしょうからね」
「そうだな」
俺は、ロザにきいた。
「クリスたちは?」
「ええ、父王様も説得され、近いうちにネシウス公国へと出陣されるようです」
「俺、行かなくってもいいの?」
「それは」
ロザが口ごもった。
「アーク魔導師団長が、あなたは、おいていく、と」
「アークが?」
「ええ」
ロザが言った。
「あなたがかつて、無理矢理、エドランに戦わされたことで、いまだに傷ついていることを考えると、アーク魔導師団長は、あなたを戦わせたくないと仰って」
「マジで?」
俺は、アークの思いやりが嬉しかった。
嬉しかったけど。
俺は、クリスやアークたちのために、戦うって、平和のための剣になるって決めてるんだ!
「俺、王都に行ってくる!」
「ユウ?」
俺は、王都への転移ゲートを開いた。
「アーク!」
「ユウ?」
俺は、アークのもとに駆け寄って行った。
アークは、動揺を隠せなかった。
「なんで、ここに?」
「だって」
俺は、アークに言ってやった。
「俺たちは、生きるも一緒、死ぬも一緒だって、誓ったじゃないか。なんで、俺だけ、かやの外なんだよ!」
「でも、俺は、お前が昔のことを思い出して辛いんじゃないかと思って」
「そういうの、いいから!」
俺は、アークに言った。
「俺は、戦えるよ、アーク。みんなのためだから!」
「でも」
「もう、いいじゃないか、アーク」
クリスが言った。
「本人が、戦うと言ってくれてるんだ。それを、拒むことは、ユウのためにはならないだろう」
「わかった」
アークは、不承不承、頷いた。
「ユウ、お前を我が魔導師団の一員として迎え入れる」
「うん!」
俺は、笑顔で言った。
「任せて!アーク、俺、みんなを守ってみせるよ!」
今度こそ、俺は、世界を守ってみせる!
こうして、俺は、アークの配下の一員となった。
というか、アークの小間使いというか。
魔導師団のみんなは、俺のことをアークが可愛がってるチビッ子扱いするか、それか、よくって恋人だと受け入れてくれているようだった。
「あの、アーク師団長がねぇ」
副師団長のアトラスさんは、感慨深げに言った。
「いくら、回りからお付き合いの相手を紹介されても断り続けていたあの人が、こんなチビッ子とできちゃうとはなぁ」
「チビッ子じゃねぇし!」
俺は、抗議したけど、アトラスさんは、優しく笑って俺の頭をぽんと撫でた。
「アーク師団長のことよろしく頼むよ。あの人、以外と無茶するからしっかりフォローしてやって、ユウ」
俺とアークは、クリスに申し出て、一足先にネシウス公国へと行くことになった。
「『Rー7』ロイドが出会ったっていう『Rー15』のことを知りたいんだ」
そう、俺が言ったから、アークが、頼んでくれたんだ。
もう一人の『Rー15』
いったい、何者なのか。
俺は、知りたかった。
ティルも、俺に双子本 がいたことを知らなかった。
ただ、エドランだけは、知っていた様だった。
エドラン、ルイスは、クリスにきかれて答えたのだという。
「そういえば、『Rー15』をガラムのところから持ち出したときに2冊あった。だが、うち1冊は、魔力に反応することもなかったから、捨てた」
エドランは、その本を失敗作だと思ったのだ。
それが、どういう訳でクスナット教国にわたり、『Rー15』として起動したのか。
俺たちには、情報が少なすぎた。
俺たちは、転移ゲートでネシウス公国へと向かった。
「ユウレスカ?」
「えっと、ロキシス王、お久しぶり、です」
俺は、王宮のロキシスの執務室らしき部屋へと現れた。
ロキシスは、魔導師団の制服に、茶色いローブを羽織った俺の姿を見て、驚きを隠せなかった。
「ユウレスカ、お前は、魔導師だったのか?」
「ええっと・・」
「そうです」
アークが、背後から俺を抱き締めて言った。
「そして、俺の妻です」
「アーク!」
俺は、アークに羽交い締めされたまま、ロキシスに言った。
「その、詳しいことは、また今度。とにかく、今は、『Rー15』のことがききたくって。ロイド、は?」
「ロイドは」
ロキシスの表情が曇った。
ロキシスは、黙ったまま俺たちを王宮の地下の広間へと案内した。
「ここの方が、魔素が濃くってロイドのためにはいいのではないかと、魔導師がいうのでここに安置してるんだ」
広間の中央に置かれた台座の上に1冊の本が置かれていた。
ボロボロに傷んで、あっちこちすりきれ、破れている本の表紙には、
『永久魔法機関Rー7』
と書かれていた。
「ロイド・・」
俺は、声をかけてみるが、返事は、なかった。ロキシスは、泣きそうになりながら俺に言った。
「ロイドは、大丈夫なのか?あれは、俺が幼い頃からずっと俺の側に居てくれた。俺を守り、育ててくれた。まさか・・魔導書だったとは」
「それでも」
俺は、ロキシスにきいた。
「あなたは、変わらずロイドを必要とされますか?」
「もちろんだ」
ロキシスが答えた。
「あれは、俺のたった一人の身内のような存在なのだ」
「わかりました」
アークと俺は、手を繋ぎ、ロイドの、魔導書『Rー7』の上に手をかざした。
治癒の魔法を展開する。
辺りが光に包まれた。
チリチリと乾いた音がして、『Rー7』の傷が治っていくが、ロイドは、起きることはなかった。
「ロイド!」
俺は、叫んだ。
「あんたは、まだ、必要とされてるんだ!戻ってこい!」
俺は、世話役兼護衛のロザとクーナの山城に取り残されていた。
そんなある日、クーナの山城へと思わぬ客が訪れた。
一人は、褐色の肌に、金の髪の少女で、もう一人は、銀髪に銀色の瞳の少年だった。
彼らは、それぞれディエントスとアルカイドを訪ねてきたのだった。
褐色の肌の少女は、ディエントスの側近のエルフでリッカという名で、銀髪の少年は、アルカイドの仲間の精霊でエリという名だった。
リッカは、執事のお仕着せを着たディエントスを前に言った。
「ディエントス様、そろそろお遊びは止めて、お戻りください。今、人間たちは、戦の最中です。今こそ、魔王軍が攻め込むべき時ではないですか」
マジで?
俺は、ディエントスをちらっと見た。ディエントスは、にやりと笑った。
「それも、なかなか面白そうだな」
まずいって、それは!
俺は、ディエントスに言い放った。
「そんなことしたら、この召喚の術を永遠に解いてやらないからな!」
「なんだと?この裏切り者め!」
なぜか、リッカに俺は、裏切り者呼ばわりされた。
最初から、俺は、こっち側だって。
エリも、頷いた。
「ほんとに。精霊王を人間のもとに召喚するとは、許しがたい裏切りです!」
「なんでだよ?」
「あなたも、本の精霊でしょ?」
マジで?
俺、精霊だったの?
「とにかく」
二人が声を揃えて言った。
「お二人を返してもらいたい」
「ええっ?」
俺は、少し、考えてから、ディエントスたちにきいてみた。
「戻りたい?」
「まあ、戻りたいか、戻りたくないかといえば、戻りたいかな」
二人は、答えた。
「しかし、今は、人間界の動きが興味深いので、もうしばらくここで過ごしてもいい」
ディエントスがそう言ったら、アルカイドも答えた。
「ディがそう言うなら、私も残りたいな」
「はい?」
エリが、信じられないという表情できいた。
「本気ですか?アルカイド様?」
「本気だ」
アルカイドは、答えた。
「私は、もう少し、ディと一緒に暮らしたい」
「マジですか?」
ディエントスもまんざらじゃなさそうで、その二人の様子を見た、リッカとエリは、とりあえず、それぞれの国へと帰ることになった。
二人は、ぶつぶつ、文句を言いながら山城を後にした。
「信じられない!」
「マジで、むかつく!」
というわけで、当分、ディエントスとアルカイドは、俺のサーバントを続けることとなった。
「よかったです。魔王が、戻ると言わなくって」
ロザが、お茶を運びながら言った。
なぜか、いまだにメイド姿のロザは、俺にお茶のカップを差し出しながら言った。
「この上、魔王軍とまで戦うことになれば、いくら我がアストラル王国であっても無事ではすまないでしょうからね」
「そうだな」
俺は、ロザにきいた。
「クリスたちは?」
「ええ、父王様も説得され、近いうちにネシウス公国へと出陣されるようです」
「俺、行かなくってもいいの?」
「それは」
ロザが口ごもった。
「アーク魔導師団長が、あなたは、おいていく、と」
「アークが?」
「ええ」
ロザが言った。
「あなたがかつて、無理矢理、エドランに戦わされたことで、いまだに傷ついていることを考えると、アーク魔導師団長は、あなたを戦わせたくないと仰って」
「マジで?」
俺は、アークの思いやりが嬉しかった。
嬉しかったけど。
俺は、クリスやアークたちのために、戦うって、平和のための剣になるって決めてるんだ!
「俺、王都に行ってくる!」
「ユウ?」
俺は、王都への転移ゲートを開いた。
「アーク!」
「ユウ?」
俺は、アークのもとに駆け寄って行った。
アークは、動揺を隠せなかった。
「なんで、ここに?」
「だって」
俺は、アークに言ってやった。
「俺たちは、生きるも一緒、死ぬも一緒だって、誓ったじゃないか。なんで、俺だけ、かやの外なんだよ!」
「でも、俺は、お前が昔のことを思い出して辛いんじゃないかと思って」
「そういうの、いいから!」
俺は、アークに言った。
「俺は、戦えるよ、アーク。みんなのためだから!」
「でも」
「もう、いいじゃないか、アーク」
クリスが言った。
「本人が、戦うと言ってくれてるんだ。それを、拒むことは、ユウのためにはならないだろう」
「わかった」
アークは、不承不承、頷いた。
「ユウ、お前を我が魔導師団の一員として迎え入れる」
「うん!」
俺は、笑顔で言った。
「任せて!アーク、俺、みんなを守ってみせるよ!」
今度こそ、俺は、世界を守ってみせる!
こうして、俺は、アークの配下の一員となった。
というか、アークの小間使いというか。
魔導師団のみんなは、俺のことをアークが可愛がってるチビッ子扱いするか、それか、よくって恋人だと受け入れてくれているようだった。
「あの、アーク師団長がねぇ」
副師団長のアトラスさんは、感慨深げに言った。
「いくら、回りからお付き合いの相手を紹介されても断り続けていたあの人が、こんなチビッ子とできちゃうとはなぁ」
「チビッ子じゃねぇし!」
俺は、抗議したけど、アトラスさんは、優しく笑って俺の頭をぽんと撫でた。
「アーク師団長のことよろしく頼むよ。あの人、以外と無茶するからしっかりフォローしてやって、ユウ」
俺とアークは、クリスに申し出て、一足先にネシウス公国へと行くことになった。
「『Rー7』ロイドが出会ったっていう『Rー15』のことを知りたいんだ」
そう、俺が言ったから、アークが、頼んでくれたんだ。
もう一人の『Rー15』
いったい、何者なのか。
俺は、知りたかった。
ティルも、俺に双子本 がいたことを知らなかった。
ただ、エドランだけは、知っていた様だった。
エドラン、ルイスは、クリスにきかれて答えたのだという。
「そういえば、『Rー15』をガラムのところから持ち出したときに2冊あった。だが、うち1冊は、魔力に反応することもなかったから、捨てた」
エドランは、その本を失敗作だと思ったのだ。
それが、どういう訳でクスナット教国にわたり、『Rー15』として起動したのか。
俺たちには、情報が少なすぎた。
俺たちは、転移ゲートでネシウス公国へと向かった。
「ユウレスカ?」
「えっと、ロキシス王、お久しぶり、です」
俺は、王宮のロキシスの執務室らしき部屋へと現れた。
ロキシスは、魔導師団の制服に、茶色いローブを羽織った俺の姿を見て、驚きを隠せなかった。
「ユウレスカ、お前は、魔導師だったのか?」
「ええっと・・」
「そうです」
アークが、背後から俺を抱き締めて言った。
「そして、俺の妻です」
「アーク!」
俺は、アークに羽交い締めされたまま、ロキシスに言った。
「その、詳しいことは、また今度。とにかく、今は、『Rー15』のことがききたくって。ロイド、は?」
「ロイドは」
ロキシスの表情が曇った。
ロキシスは、黙ったまま俺たちを王宮の地下の広間へと案内した。
「ここの方が、魔素が濃くってロイドのためにはいいのではないかと、魔導師がいうのでここに安置してるんだ」
広間の中央に置かれた台座の上に1冊の本が置かれていた。
ボロボロに傷んで、あっちこちすりきれ、破れている本の表紙には、
『永久魔法機関Rー7』
と書かれていた。
「ロイド・・」
俺は、声をかけてみるが、返事は、なかった。ロキシスは、泣きそうになりながら俺に言った。
「ロイドは、大丈夫なのか?あれは、俺が幼い頃からずっと俺の側に居てくれた。俺を守り、育ててくれた。まさか・・魔導書だったとは」
「それでも」
俺は、ロキシスにきいた。
「あなたは、変わらずロイドを必要とされますか?」
「もちろんだ」
ロキシスが答えた。
「あれは、俺のたった一人の身内のような存在なのだ」
「わかりました」
アークと俺は、手を繋ぎ、ロイドの、魔導書『Rー7』の上に手をかざした。
治癒の魔法を展開する。
辺りが光に包まれた。
チリチリと乾いた音がして、『Rー7』の傷が治っていくが、ロイドは、起きることはなかった。
「ロイド!」
俺は、叫んだ。
「あんたは、まだ、必要とされてるんだ!戻ってこい!」
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