転生したら本でした~スパダリ御主人様の溺愛っぷりがすごいんです~

トモモト ヨシユキ

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26 リミッターを外しますか?

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    ある日、クーナの山城を見知らぬ老人が訪れた。
   そのボロボロの服とローブをまとった老人は、アークの名を出して言った。
   「大変なことが起きようとしている」
    最初、城の門番は、老人を追い払おうとしたらしい。しかし、老人は、諦めなかった。
   3日後、王都から戻ったアークが馬で通りかかった時も、その老人は、門の前で待っていた。
    老人を見たアークは、すぐさま馬から降りて老人に駆け寄った。
   「オーガント卿ではないですか 」
    ちなみに。
   アウリスト・オーガント卿とは、かつて、アストラル王国において魔導師団長をつとめていた魔導師であり、アークの師でもあった人らしい。
    今では、引退し、賢者と呼ばれ、アストラル王国の外れの山奥に隠遁していた。
    「その人がなんで、こんなとこに訪ねてきたわけ?」
    俺は、アークにきいた。アークは、頭を振った。
   「わからない」
    アークは、オーガント卿からノミがジャンプするのを目撃し、そそくさと彼を風呂へと案内した。
    だから、今、彼は、入浴中なのだった。
   でも。
   俺は、くすっと笑った。
   アークの修行時代の話とかきけるかも。
   
    数十分後。
   こざっぱりとしたハチミツ色の金髪をなびかせた美老人がアークのシャツとズボンを身に付けて現れた。
   マジか。
  とても、同一人物とは思えない。
   「アークよ。お前の悪いところは、たくさんあるが、その内の一つに人の話をきちんと聞かないというものがある」
   オーガント卿は、静かに怒りながら言った。
   「私は、ここまでわざわざ風呂に入るために来たのではないんだぞ」
   「わかっています。オーガント卿」
    アークは、へりくだった態度でオーガント卿に応じた。
   「それで、今日は、いったいなんのご用でしょうか?」
      「1ヶ月ほど前に、予知夢を見た」
   オーガント卿は、話し出した。
   「その夢の中で王都アルサイルに巨大な隕石が堕ち、都が壊滅状態になった」
    「それは」
    アークが息を飲む。
   「本当ですか?オーガント卿」
    「こんな冗談を言うために、わざわざ、できの悪い弟子のところに来たりはせん」
    オーガント卿は、言った。
   「なんとかせんと、甚大な被害が王国を襲うことになる」
    「しかし、いくらオーガント卿の言葉でも、夢では」
   アークが言いかけたのを俺が遮った。
   「その人の言ってることは、本当だよ、アーク」
   「ユウ?」
   サーチの魔法を宇宙空間まで拡げて見たところ、本当に、隕石がこの星へと向かっていた。
   しかも、もう、かなり近い。
   「もう、1、2日中には、堕ちてくるよ」
   「マジか?」
    青ざめるアークに、オーガント卿は、きいた。
   「この少年は、何者なのかね?」
    「ユウは、俺の伴侶で、実は、『Rー15』という魔導書なんです」
   アークの返事をきいたオーガント卿は、じっと俺のことを見つめた。
   「何にせよ、アークよ。お前は、本当にできの悪い弟子だったが、運だけはいいようだな」
    「はい?」
    アークが問いかける。
   「どういうことです?」
   「つまり」
    オーガント卿は、アークに答えた。
   「この少年が本当に『Rー15』という魔道書なのだとすれば、隕石から王都を守ることも可能であるだろうということだ」
   うん。
   俺は、否定も肯定もせずにオーガント卿の話をきいていた。
   たぶん、俺は、隕石から街を守ることができる。
   だけど、そのためには・・・
   アークが俺にきいた。
  「ユウ、できるのか?」
   「うん・・」
    俺は、答えた。
   「たぶん、リミッターを外せば、いけると思う」
      「なんだって?」
    アークが深刻な表情になった。
   「リミッターを?」
    「どういうことかね?」
     オーガント卿にきかれて、アークが説明した。
   「ユウには、『Rー15』には、リミッターがかけられているんです。そして、リミッターを外すと、魔道書の力は、解放されますが、その魔道書の持つ性質、つまり、魂が破壊されかねないのです」
    だから、コウは、レイブンがリミッターを外すことを恐れていた。
   俺は。
   過去にエドランによって世界を滅ぼしかけたことがあるが、エドランは、俺のリミッターについては、まったく知らなかったらしい。
    だから、俺は、まだ、リミッターを外したことがないわけだった。
   リミッターを外せるのは、魔道書に登録された持ち主だけだ。
   俺の場合、アークだけだった。
   「しかし、悩んでいる場合ではないぞ、アーク」
   オーガント卿は、言った。
  「一冊の魔道書と引き換えにすることはできない」
   「しかし、ユウは」
   「俺、やるよ」
    俺は、アークに言った。
   「リミッター外してよ、アーク」
   「ユウ・・」
    「大丈夫」
    俺は、にっこりと笑った。
   「心配しないで、アーク」

    翌日の朝。
   俺は、アークと共にこの星の遥か上空へと向かった。
   成層圏ぎりぎりのところで、俺たちは、隕石に対峙した。
   けど。
  アークは、まだ、躊躇していた。
  だから。
   俺は、アークの手を握って言った。
   「アーク。リミッターを外して」
    「ユウ・・」
     アークは、俺のリミッターを外した。
   世界が。
   拡張されていくのを俺は、感じていた。
   拡がっていく。
   俺の意識が。
  魂が。
   どんどん拡がっていく。
   俺は、俺がまだ、俺である内に、俺の持つ最大の魔法で隕石を打った。
   光の束が隕石を破壊し、世界中へと飛び散っていく。
   ああ。
   俺は、本へと意識が収縮していくのを感じていた。
   アークの泣きそうな顔が見えた。
   バカだな。
   俺は、にっこりと微笑みを浮かべてアークの頬に触れた。
   泣かないで。
   俺は、多幸感に包まれて、そして、消えていった。
    
      「・・ユウ・・細川  ユウさん・・」
    「何?」
    俺は、幸せな夢から目覚めた様な気持ちだった。
   「あんた、誰?」
   「お忘れですか?」
    茶髪で青い目をしたチャラそうな兄ちゃんが俺を覗き込んでいた。
   「あなたは、本に転生しておられたのですが、覚えておられますか?」
   「あっ・・」
   俺は、だんだんと記憶が蘇ってくるのを感じた。
   「そうだ、俺、隕石を破壊するためにリミッターを外して・・」
   俺は、慌てて兄ちゃんにきいた。
   「世界は?隕石は、どうなった?」
   「大丈夫です」
    兄ちゃんは、答えた。
   「あなたは、無事に世界を救いました」
   俺は、ホッとして安堵の吐息を漏らした後で、兄ちゃんにきいた。
   「俺、どうなったの?」
    「あなたは」
    兄ちゃんは、一瞬、暗い表情になって俺に言った。
   「魔道書としては、その魂を失われました」
   「ええっ?」
    「ようするに、お亡くなりになったのです」
    マジか?
   呆然としている俺に、兄ちゃんは、言った。
   「その代わりと言ってはなんですが、あなたは、この度、神となられることが決まりました」
    「何?」
    俺は、兄ちゃんにきいた。
    「どういうこと?」
    「つまり、『Rー15』であるあなたは、その力で世界を救った功績により、神になられることになったのです」
    兄ちゃんが嬉しそうに言うので、俺は、兄ちゃんの胸元を掴んで言った。
   「いい加減にしろよ!俺は、神になんかなりたくなんかない!」
    「なら、どうしたいんです?」
    「俺は」
    俺は、答えた。
    「アークの側で、アークと共に生きたいんだ!」
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