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7 領地開拓ですか?

7ー10 ご無事であるように

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 7ー10 ご無事であるように

 バルトレット王女殿下は、俺が作った横穴を見ると和平を結ぶのではなく、戦って支配下に置くべきでは、と言った。
 だが、俺は、それでは、ルシナード王国で鉱石を採掘しなくてはならないことを指摘した。
 「鉱石の採掘に関しては、バサーラ王国の方が詳しいのでは?それなら、我々は、彼らの技術を利用して彼らが採掘した魔法石を穀物と引き換えに手に入れる方がよいのではないでしょうか?」
 いや。
 何事も平和が一番。
 俺は、騎士を目指しているが戦争なんか嫌いだ。
 特に、しなくていい戦争は、しないですんだ方がいい。
 バルトレット王女殿下は、この案を王都へと持ち帰り女王陛下と宰相を説得した。
 こうして俺が王都へ戻る頃には、バルトレット王女殿下を中心とした使節団が隣国へと向かうことになっていた。
 魔法学園の寮に戻った俺のもとに現れたバルトレット王女殿下は、俺に茶を所望した。
 ロタがすぐにお茶を用意した。
 すると、バルトレット王女殿下は、そのお茶を飲み干し、俺の手を握った。
 「安心しろ、オルナム。私がお前のためにもこの和平案をまとめてやる」
 「力強いお言葉、ありがたく思います、バルトレット様」
 俺がそっとバルトレット王女殿下の手を外そうとするのを拒むようにさらに俺の手を強く握るとバルトレット王女殿下は、言った。
 「何も望まぬお前のたっての頼みだ。私もこの一命を賭けてその願いを叶えよう」
 「ありがとうございます、バルトレット様」
 俺は、そっとバルトレット王女殿下の手を握ると頭を下げる。
 「どうか、世界の未来のためにご尽力をされてください。きっと、世界中の民がいつかバルトレット様のことを称える日がきましょう」
 バルトレット王女殿下は、頷くと俺のもとから去っていった。
 これからしばらくは、かの王女殿下に会うこともないのだと思うとなんだか少し寂しい気持ちもあった。
 いや!
 雰囲気に流されないで、俺!
 俺は、去っていくバルトレット王女殿下を見送りながらそっと呟いた。
 「ご無事をお祈りしています、バルトレット様」
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