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9 バサーラ王国からの使者

9ー3 謁見

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 9ー3 謁見

 俺が到着したときには、すでにパーティーは始まっていた。
 俺は、エドワード兄たちと一緒に女王陛下の前へと進み出た。
 赤い絨毯の敷かれた壇上に金の玉座に座った女王陛下がおられた。
 俺は、女王陛下の前に跪いた。
 「よい、顔をあげよ、オルナム・フォル・エルガーナよ」
 許しを得て顔をあげた俺に女王陛下は、微笑みかけた。
 王族の証である豊かな黒髪に縁取られた顏に青い瞳が美しい。
 年齢は、確か、母上と同じくらいだった筈だが、まだ娘といっても通用しそうなぐらい若く見える。
 いまさらだが、どことなくバルトレット王女殿下やアウラ王女殿下には、女王陛下の面影がある。
 放漫なボディを紺色のドレスで包んでいる女王陛下は、なんとも迫力のある美女だった。
 「この度は、お前の働きで隣国バサーラ王国との和平にこぎ着けたとバルトレットから聞いているが、ご苦労だったな」
 「お言葉、ありがとうございます。女王陛下」
 俺は、跪いたまま女王陛下の方をみた。
 「バサーラ王国との和平は、バルトレット王女殿下のお働きのおかげだとお聞きしています」
 「そうか」
 女王陛下がちらっと横に並んでいるバルトレット王女殿下の方をみる。
 「なんでもお前は、すばらしい治癒魔法薬を開発したとか。今回は、それに対する褒美もとらせたいのだが、何か、望むものはあるか?」
 思わず婚約破棄を願い出そうになったのを堪えて俺は、口許に笑みを浮かべた。
 「もったいないお言葉、大変至極にございます」
 「苦しゅうない。なんでも申してみよ」
 女王陛下に促されて俺は、では、と口を開いた。
 「バサーラ王国との交易で入ってくる鉱石の中の一つである魔法石を取り扱う権利を我がエルガーナ辺境伯家にお与えください」
 ほう、と女王陛下が目を細める。
 俺は、笑顔のまま女王陛下に告げた。
 「実は、この魔法石を使った魔法研究をしておりますので。いづれこの研究でこのルシナード王国の発展のためにお役にたてると思っております」
 「お前は我が娘たちの婚約者でもある」
 女王陛下が鷹揚に告げられるのを俺は、ひれ伏して聞いていた。
 「よかろう。魔法石は、お前たち、エルガーナ辺境伯家に任せよう。これからも王国のために尽くすがいい」
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