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9 バサーラ王国からの使者

9ー6 友だち

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 9ー6 友だち

 魔法学園の特別クラスにバサーラ王国のエルム第2王子殿下が転入してきた。
 エルム王子は、俺の隣の席になった。
 ミラン先生が「何事も男同士で助け合うように」とエルム王子のお世話を俺に丸投げしたのだ。
 放課後、俺とロタそして、アウラ王女殿下でエルム王子に魔法学園の案内をすることになった。
 図書館や、講堂など案内して回った。
 トイレが特別クラス棟の1階に一ヶ所しかないことを知ってエルム王子は、驚いていた。
 「こんな待遇が悪いとは」
 エルム王子は、信じられないというように俺を見た。
 「いくら魔法学園に通う男が少ないからといっても酷くないか?」
 エルム王子の従者である小柄な金髪の美少年ノルドが俺に文句を言う。
 「しかもこの狭さと薄汚れた感じ。まったくあり得ない!」
 「トイレ掃除は、きちんと毎日俺がしてますが」
 俺が言うとエルム王子がさらにびっくりしていた。
 「君、確か、貴族だったんじゃ?」
 「貴族でも平民でもトイレは、綺麗なほうが気分がいいでしょう?」
 ほっとくといつまでも掃除してもらえないんだよ。
 男子トイレって掃除の係りがうっかり見落としがちでさ。
 いや。
 たぶん、わざとじゃないと俺は、思ってるんだけど。
 「それでは、これからは、男子が3人になったことだし、トイレ掃除の当番は、我々で交代に担当しよう」
 「なんですと?」
 ノルドがエルム王子の言葉に信じられないという表情を浮かべている。
 もしかして、エルム王子ってそんなに嫌な奴じゃないのかも?
 俺は、寮の部屋に戻ってからロタにそう話した。
 ロタは、ふふっと笑った。
 「オルナム様に初めて同性のお友達ができるのかもしれませんね」
 そういえば、俺には、同性の友人がいない。
 いままでは、俺は、男でありながら女と同じように騎士を目指してきたからな。
 普通の男と関わることがあまりなかった。
 そのせいか、友人は、女ばかりだし。
  もしかしたらロタの言うとおり、本当に友達になれるのかもしれない。
 でも。
 聖者と同じようにこの王子様が俺を陥れようとする可能性もあるのだ。
 俺は、エルム王子から距離をとるべきだ。
 同性の友達は、欲しいけど自分の身は自分で守らなくてはならない。
 
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