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11 金色の魔王と癒しの男騎士

11ー1 金貨5万枚

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 11ー1 金貨5万枚

 俺がクィンティラ・ダンジョンから出ていくと落ちこぼれクラスの連中が待っていた。
 「なんで、あたしたちを追い出した?」
 クラリスが言うので俺は、事情を話した。
 ラスボスがヤバすぎた。
 何しろ、魔王、だし。
 でも、それをきいたクラリスたちは、ちっと舌打ちした。
 「もし、あたしたちが戦ってれば、魔王を倒した勇者になってたのに!」
 いやいやいや!
 俺は、ハトマメだった。
 なんでそうなる?
 例え闇に蝕まれていても魔王がお前たちに倒せるわけがないだろうが!
 人工魔道回路があったって、お前たちには、魔王を倒すことは無理だろうよ。
 俺が心の中でそう思っていると、それを代弁してくれる声がきこえた。
 「誰が、お前たちごときに倒せると?」
 声の主は、俺の肩に止まっている小さな金色の竜だった。
 クラリスが指差した。
 「このチビ竜は、どこで拾ってきたんだ?オルナム殿」
 「それは・・」
 俺が言い淀んでいると問題の金色の竜が胸をはって偉そうに言った。
 「我は、魔王ギリアム。この世界を古より守ってきたものだ」
 「ああ?」
 クラリスたちがぎろりとギリアムを睨んだ。
 「これが、魔王だぁ?」
 「嘘をつくならもっとまともな嘘をつけよ!」
 落ちこぼれクラスの面々が口々に文句をいいだしてもう、収拾がつかなくなった。
 そのとき、だ。
 「みなさん!これから魔石の換金に冒険者ギルドにいきますよ!」
 ロタが声を張り上げた。
 落ちこぼれクラスの連中は、じろっと俺とギリアムを睨み付けるとさっさと冒険者ギルドへと歩き出した。
 「何が嘘じゃ!」
 小さな金色の竜は、たいそう不機嫌な様子で俺の肩から飛び立つとロタたちの後をついてひょろひょろと飛んでいった。
 俺は、苦笑すると彼らの後に続いた。
 落ちこぼれクラスの面々のご機嫌は、すぐに治った。
 なぜなら、彼らの稼いだ魔石は、このクィンティラ・ダンジョン始まって以来、最高の金額を弾き出したからだ。
 しかも、おそらくもうこれを越える記録はないだろうとギルドの受け付け嬢が言いきったのだった。
 全部で金貨5万枚。
 それが落ちこぼれクラスの連中が稼いだ総額だった。
 俺たちは、それをすべて落ちこぼれクラスの連中でわけるように促した。
 「ほんとに、いいのか?オルナム殿?」
 「もちろんだ」
 そう。
 これは、すべてこいつらが手に入れたものだ。
 俺が頷くとクラリスたちは、わっと歓声をあげた。

 
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