上 下
101 / 105
11 金色の魔王と癒しの男騎士

11ー2 年越しパーティー

しおりを挟む
 11ー2 年越しパーティー

 年越しのパーティーで俺は、バルトレット王女殿下とアウラ王女殿下の二人にエスコートされていた。
 王城でのパーティーは、今生では2度目だった。
 いや。
 ほんとに俺は、死んだ魚みたいな目になっていた。
 こんな似合いもしないきらびやかな衣装を着せられて俺は、二人の王女殿下の横に立って次々に挨拶に来る貴族たちをぼんやりと眺めていた。
 時おり笑顔で相づちを打つ。
 しかし、俺の心は、ここにはなかった。
 あらかた貴族たちが挨拶にきた後で、アウラ王女殿下が俺をホールの隅へとつれていって椅子をすすめた。
 「疲れただろう?ちょっと待ってろ」
 そういってアウラ王女殿下は、俺を一人置いてどこかに姿を消した。
 俺は、ほぅっと吐息をついてぐったりと椅子にもたれた。
 ああ、疲れた。
 俺は、自分の着ている服の裾をちらっと見た。
 薄い絹のドレープのある裾の長い上着にゆったりとしたズボン。
 最近の王都での流行のドレススーツらしい。
 これは、人工魔道回路の開発の褒美にと女王陛下から贈られたものだ。
 いや。
 俺は、こんな服より金がよかった。
 そうすれば、いろんなことができたのに。
 俺は、最近母上から届いた手紙を思い出していた。
 バサーラ王国と通じている横穴の付近にできた交易のための町は、リベラと名付けられた。
 そして、バサーラ王国側の町であるエイブラ、かつて貧しい山村であったあの村の名だったが、そのエイブラとリベラは、不可侵の条約を結んだ。
 例え、戦争があったとしてもお互いにお互いを攻めない。
 そう、二つの町は、約束した。
 ルシナード王国とバサーラ王国は、横穴の中央に国境をさだめ、そこに検閲所を設けた。
 そこには、お互いの国の騎士団が常駐していた。
 まあ、いちおうは、最前線だし。
 しかし、今の両国は、戦争など考えられないぐらい穏やかな関係だった。
 俺は、人垣の向こうにエルム王子とその従者のノルドの姿を見つけた。
 二人は、宰相のクルシーア卿とその嫡女であるルイーズとにこやかに話していた。
 
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

BL / 連載中 24h.ポイント:2,947pt お気に入り:648

平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:30,907pt お気に入り:1,696

あの夏をもう一度─大正時代の想ひ出と恋文─

BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:11

処理中です...