ちったいメイドさんの異世界奮闘記〜最高の片思いだけどご主人様に尽くしたい!〜

トモモト ヨシユキ

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5 初めての友だち

5ー5 マリーベルの葛藤

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 5ー5 マリーベルの葛藤

 泣き腫らしたようなマリーベルの目元にわたしは、はっと息を飲んだ。
 「どうしたの?マリーベル」
 マリーベルは、無言でわたしを部屋へと通してくれた。
 すでに黄色の可愛らしいドレスを身にまとっているマリーベルだったが、メイクは、すっかり流れてしまっていた。
 「なんで泣いているの?」
 わたしが問いかけるとマリーベルは、とつとつと答える。
 「お母様が」
 マリーベルの話しによるとお母様であるローナンデ夫人がパーティーに出席することを拒んだそうだ。
 「お母様にとって、私は、どんなにがんばってもダメな娘なんだわ」
 マリーベルの白いふっくらとした頬を涙が止めどなく流れ落ちていく。
 わたしは、憤慨していた。
 マリーベルは、そのお母様に認められたいがために王立魔法学園に入学したというのに!
 本来、あまり向いていなかった魔法の勉強をして、さらには、魔法の発現まで成し遂げたのだ。
 それなのに!
 わたしは、腹が立って仕方がなかった。
 マリーベルに向き合うとわたしは、手をとった。
 「あなたは、よくやったわ、マリーベル」
 「カヅキ」
 顔を上げたマリーベルにわたしは微笑んだ。
 「悪いけれど、あなたのお母様は、どうしようもない屑だわ。どんな理由があるにせよ、あなたがここまでがんばっているのに、そんな大人げのない態度をとっているなんて、酷すぎるわ!」
 わたしは、ぎゅっとマリーベルの手を握る。
 「あなたが悲しむような価値はないわ、マリーベル。もう、泣かないで。せめて、パーティーを楽しみましょう」
 「でも」
 マリーベルが顔を伏せる。
 「私、酷い顔をしてるし」
 「大丈夫、よ」
 わたしは、そっと手を伸ばしてマリーベルの頬に触れた。
 『リョータ』たちの輝きがマリーベルの腫れた目蓋に降り注ぐと、真っ赤に腫れていた目元が癒されていく。
 マリーベルは、鏡を見ると驚きの声を上げる。
 「どうして?」
 「さあ」
 わたしは、肩をすくめる。
 「それより、メイクを直して。みんな、あなたを待ってるわ、マリーベル」
 すぐに控えていたメイドさんたちが近づいてきて手早くマリーベルの化粧を直していく。
 数分でマリーベルは、今夜の主役に相応しい美しさになって弱々しく微笑んだ。
 わたしは、マリーベルの手をとると彼女を立たせる。
 「さあ!行きましょう、マリーベル!」
 わたしたちは、部屋を出るとパーティー会場である1階にある舞踏室はと向かった。
 そこは、こうこうと魔道灯のシャンデリアが輝いていて、着飾った令嬢たたいやその付き添いの年配の女性たち、それに立派な装いの紳士たちが集っていた。
 その中をわたしは、マリーベルの手を引いて歩いた。
 人々は、海が割れるように道を開けてくれて、わたしたちは、すぐにマリーベルのお父様とご主人様がいるところへたどり着けた。
 
 
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