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7 終わらない世界を目指して。厄災と勇者の物語。
7ー4 たった1つの
しおりを挟む「君たちは」
その美しい人は、優しく微笑んだ。
「創造し、そして、破壊する者。そして、失った者でもある」
失った?
俺は、涙を拭うとその人を見た。
俺は、大切な何かを失った?
「君たちは、遣り方はどうであれ、ここまでたどり着いたわけだ。この、悠久の花園へとね。ご褒美に、何でも欲しいものをあげよう。何が欲しい?」
その人は、にっこりと美しく笑った。
だけど。
残酷な微笑み。
なぜなら、俺たちは、何が欲しいのかを思い出すことができないのだから。
「ねぇ」
女は、なおも、俺たちに微笑みを向けて言った。
「何が欲しい?」
思い出すことを望めば、きっと、俺たちは、大切な何かを思い出すことができるだろう。
だが、その代わり、俺たちは、その何かを失ったままで生きなくてはならない。
考えろ。
俺は、今までにないほど頭をぐるぐる回していた。
どうすれば、失ったものを手に入れられるんだ?
俺は、目の前の俺とそっくりな誰かをじっと見詰めた。
そいつも、俺のことを見詰めている。
俺たちは。
同じ、もの、だ。
「俺は、失ったものを思い出したい」
俺は、言った。そして、続いてもう1人の俺が言った。
「俺は、その思い出したものを取り戻したい」
「うん?」
その女は、ふふっ、と笑った。
「なかなか考えたね。だけど、半分正解で半分不正解かな?それだと、君たちは、半分しか失ったものを取り戻すことができない」
「では」
俺は、言った。
「俺は、こいつと併せて1つの存在になりたい」
「俺は」
もう1人が言った。
「俺たちが失ったもの全てを取り戻したい」
「うん、正解とは言い難いけど、まあ、いいかな」
その人は、妖しく、そして、なんとも魅力的に微笑んだ。
「君たち2人で1つの世界になる」
ぱん、と彼女は、手を叩いた。
「全てを手に入れるがいい。私は、与えよう。君たちが望む全てを」
辺りが一瞬のうちに暗くなり、全てがすごい速さで消えていっていた。
その拡がっている暗闇の中に、俺たちは、背中合わせに立っていた。
「ねぇ、君たちの後ろには、何があるの?」
「「もう1人の自分?」」
俺たちは答えたが、彼女は、頭を振った。
「だめだめ、それは、違う。だって」
彼女は、言った。
「君たちは、もう、融け合って一緒のものになっていくのだから」
俺ともう1人の俺の意識が混じっていく。
俺は、もう1人の俺が世界を消滅させていく厄災であったことに気づいた。
そして、同時に、もう1人の俺も気づいていた。
俺が、世界を産み出していたことに。
「君たちは、2人で1人になり、そして、新しい世界は、守られる」
その人は、歌うように言った。
「多すぎることもなく、少なすぎることもなく」
俺たちは、どろどろに溶けて、同じ、何かになっていく。
彼女は、言った。
「善すぎることもなく、悪すぎることもない」
彼女が手を打ち鳴らす。
「たった1つの素晴らしい世界へ」
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