94 / 176
第9章 スタンピード
9ー6 愛しただけなのに
しおりを挟む
9ー6 愛しただけなのに
ルイーズは、この前の長期休暇で養親のもとへと戻ったとき、一人の貴族と出会ったのだという。
これは、本人からの話ではなく、騎士団の調べでわかったことだ。
その貴族が誰だったのかはわからない。
だが、お忍びで領地にやってきていたというその人物と恋に堕ちたルイーズは、おそらくその人物に騙されて隷属の魔法をかけられたのだと思われた。
「あなたは、誰と出会ったの?ルイーズ」
わたしが訊ねるとルイーズが唇を噛んだ。
答えられないのだろう。
なおもわたしが問いかけようとしているとルイーズの脇で彼女の警備をしている騎士がわたしに告げた。
「もう、行きなさい。これ以上は、認められない」
わたしは、騎士に頷くと、最後にそっとルイーズに小さな皮の袋を手渡した。
その中には、金貨が何枚かとわたしが手に入れられたいくつかの宝石が入っていた。
これが、少しは彼女のためになればいい。
わたしは、そのままルイーズに背をむけると立ち去ろうとした。
「何がいけなかったっていうの?」
ルイーズが涙混じりに呟いた。
「あたしは・・あたしは、ただ、愛しただけなのに」
ルイーズの嗚咽を聞きながらわたしは、そこから歩み去った。
「ルイーズが会っていた相手は、おそらくランタスタ伯爵だろうと思われる」
ルシーディア様がわたしに話された。
わたしは、生徒会の部屋に呼び出されていた。
「ランタスタ伯爵?」
わたしが問うとエラード様が説明してくれた。
「マルセロ・ランタスタ伯爵は、希代の放蕩者だよ。おそらく金に困ったランタスタ伯爵が何者かに命じられてルイーズに近づいたんだろうね」
「その人は、今、どこに?」
わたしは、エラード様に訊ねた。
もしかしたら、その人ならルイーズのことを弁護してくれるかも。
だけど。
セシリア様が言いにくそうに話した。
「マルセロ・ランタスタ伯爵は、行方不明で見つからないのよ」
行方不明?
わたしが問いたげにセシリア様を見つめると彼女は、困ったようにため息をついた。
「今、近衛が彼のことを探しているのだけれど。たぶん、無事には見つからないでしょうね」
ルイーズは、この前の長期休暇で養親のもとへと戻ったとき、一人の貴族と出会ったのだという。
これは、本人からの話ではなく、騎士団の調べでわかったことだ。
その貴族が誰だったのかはわからない。
だが、お忍びで領地にやってきていたというその人物と恋に堕ちたルイーズは、おそらくその人物に騙されて隷属の魔法をかけられたのだと思われた。
「あなたは、誰と出会ったの?ルイーズ」
わたしが訊ねるとルイーズが唇を噛んだ。
答えられないのだろう。
なおもわたしが問いかけようとしているとルイーズの脇で彼女の警備をしている騎士がわたしに告げた。
「もう、行きなさい。これ以上は、認められない」
わたしは、騎士に頷くと、最後にそっとルイーズに小さな皮の袋を手渡した。
その中には、金貨が何枚かとわたしが手に入れられたいくつかの宝石が入っていた。
これが、少しは彼女のためになればいい。
わたしは、そのままルイーズに背をむけると立ち去ろうとした。
「何がいけなかったっていうの?」
ルイーズが涙混じりに呟いた。
「あたしは・・あたしは、ただ、愛しただけなのに」
ルイーズの嗚咽を聞きながらわたしは、そこから歩み去った。
「ルイーズが会っていた相手は、おそらくランタスタ伯爵だろうと思われる」
ルシーディア様がわたしに話された。
わたしは、生徒会の部屋に呼び出されていた。
「ランタスタ伯爵?」
わたしが問うとエラード様が説明してくれた。
「マルセロ・ランタスタ伯爵は、希代の放蕩者だよ。おそらく金に困ったランタスタ伯爵が何者かに命じられてルイーズに近づいたんだろうね」
「その人は、今、どこに?」
わたしは、エラード様に訊ねた。
もしかしたら、その人ならルイーズのことを弁護してくれるかも。
だけど。
セシリア様が言いにくそうに話した。
「マルセロ・ランタスタ伯爵は、行方不明で見つからないのよ」
行方不明?
わたしが問いたげにセシリア様を見つめると彼女は、困ったようにため息をついた。
「今、近衛が彼のことを探しているのだけれど。たぶん、無事には見つからないでしょうね」
38
あなたにおすすめの小説
転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!
カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地!
恋に仕事に事件に忙しい!
カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい
木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。
下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。
キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。
家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。
隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。
一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。
ハッピーエンドです。
最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる