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第12章 二人の聖女

12ー11 祝賀会

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 12ー11 祝賀会

 今回、精霊の解呪の力によってキルハ様の全ての魔法が解かれた。
 それは、あのマオの『運命の番』である猫竜にかけられた隷属の魔法も解呪されたということだった。
 自由になった番の猫竜は、すぐにマオのもとへやってきた。
 今、二人は、べったりひっついてはなれようとしないので、自然とこの猫竜もわたしの従魔とすることになった。
 従魔の契約には、真名が必要だ。
 「アルバ」
 真名を問われた彼は、わたしにそう答えた。
 その瞬間、わたしとアルバの体を光が繋いだ。
 そうして彼もまたわたしの従魔となった。
 それは、マオに大きな変化をもたらした。
 マオが人化することができるようになったのだ。
 とはいえ、マオは、猫竜としては子供にすぎない。
 人の姿になったマオは、黒髪に猫耳を持つ幼い少女の姿だった。
 番というにはあまりにも幼い姿にもかかわらずアルバがひく様子もなく、二人は、ラヴラヴだ。
 まあ、アルバもマオがまだ幼いのでマオが成竜になるまで正式な婚姻を結ぶことは待つといってくれている。
 でも、べったりな二人を見ているとなんか漂う犯罪臭がするのだが。
 まあ、二人が幸せならそれでいいか。
 アルバをわたしが従魔にしたことでムスタファ王国にとっては大きな損害になったのでは。
 わたしがそうきくとリータ様と二コティマス様は、笑顔で答えた。
 「本来キルハがしたことを考えたらあの猫竜には、国に害を及ぼされてもしかたがないところ。それを丸く納めてもらったのだからありがたいことだ」
 そうして。
 あっという間にリータ様たちがムスタファ王国に帰国される日がきた。
 リータ様たちを見送るためわたしたちは、王都の南側の門へと向かった。
 立派なムスタファ王国の紋章を掲げた馬車に乘った彼らを見送るわたしたちにリータ様が素っ気なく告げた。
 「もしよかったら、今度は、あなた方がうちの国を訪れてくださってもよろしくってよ」
 少し照れた様子のリータ様にわたしたちは、笑顔で頷いた。
 実際には、訪れるときがあるかはわからない。
 けれど。
 また、会えたらと思ってた。
 リータ様たちの馬車が王都から去っていくのを見送るとわたしたちは、街へと繰り出した。
 これがわたしたちにとっての本当の祝賀会だった。
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