竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~

トモモト ヨシユキ

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第16章 魔王

16ー6 旗印

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 16ー6 旗印

 「ずいぶんと派手にやったわね、カイラ」
 セシリア様が修復されている王城を見上げてため息をついた。
 わたしたちは、魔界国の王城の庭でのんびりとお茶を飲んでいた。
 ジェリコが開いたお茶会だった。
 なんでもわたしたちを労うためのものらしい。
 わたしは、こくっとお茶を飲んだ。
 なんだか苦い。
 魔王イリハを倒してからすでに一週間が過ぎようとしていた。
 わたしたちは、イーサ王国の復興のために力を貸していた。
 魔王国の解放のために多くの人々が犠牲になった。
 「イーシュア様のご命令通り、都の人々のために病を治療する治癒師を派遣しました。食料の配給も始めました」
 シタールさんがお茶会の席で報告した。
 「聖樹のおかげでこの魔界国の瘴気も消えて、大地の汚れも払われようとしています」
 「それは、よかったです」
 わたしは、そっけなく答えた。
 「国が落ち着いたならわたしたちは、メルロープ王国へ戻りたいのですが」
 「それだけど、ね。カイラ」
 セシリア様が口を開いた。
 「あなたは、この国に残るべきだと思うの」
 「セシリア様?」
 わたしは、信じられないものを見るようにセシリア様を見た。
 なぜ、そんなことを。
 だけど、セシリア様は、意見を変えようとはしない。
 「今のあなたの姿は、魔族そのものなのよ、カイラ」
 セシリア様が話した。
 「その姿で戻ればいろいろと問題があると思うの」
 「でも!」
 話そうとしたわたしを遮ってエラード様も告げた。
 「君には、この国に残って魔族と人類の架け橋になってもらいたいんだ、カイラ」
 エラード様が微笑んだ。
 「魔族と人類が理解しあえる世界にすることがキルハとイリハの望む未来なんじゃないかな。そして、それを成せるのはカイラ、君だけだ」
 「私からもお願いします。ぜひ、イーシュア様には、この国をまとめていく旗印になっていただきたいのです」
 シタールさんも頭を下げた。
 わたしは、もごもごと応じた。
 「でも、それは、ジェリコたちの仕事なんじゃ?」
 「いや」
 ジェリコが答えた。
 「俺なんかよりずっと君の方が王になるのにふさわしい」
 はい?
 わたしは、なんだか嫌な予感がしていた。
 
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