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3 トカゲの谷と生け贄の姫

3ー11 母さんの手紙

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 3ー11 母さんの手紙

 俺たちは、毎日の鍛練や座学の勉強の後で、夜には、ライディアも交えて自習していた。
 というか、目的は、ほとんどリリウスの学力強化だな。
 俺は、計算が苦手なリリウスのためにそろばんを作ってやった。
 試験には、ある程度の魔道具なら持ち込み可能らしい。
 それから、俺は、リリウスに九九を覚えさせた。
 俺がリリウスに九九の暗記をさせていると、ライディアとエディットが目を丸くして俺に訊ねた。
 「それは、なんの歌だ?」
 「変わった歌ですわね」
 俺は、九九の説明をするとライディアとエディットにも教えてやった。
 2人が興味を持ったのでそろばんも作ってやった。
 「なるほど、なかなか便利だな」
 ライディアたちは、そろばんが気に入ったらしくすぐに便利な道具として使い始めた。
 昼間の鍛練や座学の勉強、そして、夜の特別強化学習のおかげでリリウスもなかなかできるようになってきた。
 秋が過ぎ、冬が来る。
 俺は、トカゲの谷のみんなが元気にすごしているかが心配だった。
 そんな頃、ライドウがラダクリフ辺境伯の屋敷を訪ねてきた。
 「よう、クロージャー。元気か?」
 ライドウは、妙に小綺麗な服装をしていて、俺は、なんだかおかしくて笑ってしまう。
 ライドウは、そんな俺を見て不機嫌になった。
 「そんな態度をとるなら、これは、渡さねぇぞ」
 ライドウは、そう言うと白い紙をピラピラっとさせた。
 あれは!
 俺は、はっと気づいた。
 その紙は、俺がトカゲの谷を出る前に指示しておいた紙作りが成功したことを示すものだ。
 俺は、麻を育ててそれで紙を作る計画をたてていた。
 それをティミストリ父さんたちに委ねてきたのだ。
 「すごい!紙ができたんだな!」
 俺は、ライドウに駆け寄ると彼の持っている紙を手に取った。
 分厚い、まだまだ不格好な紙だったが、なかなかいいできだ。
 しかも。
 折り畳まれた紙を広げるとそこには、炭で書かれた文字が並んでいた。
 それは、手紙だった。
 クローディア母さんからの手紙。
 懐かしいトカゲの谷からの手紙に俺は、思わず涙ぐんでいた。
 クローディア母さんは、習ったばかりの下手くそな字でトカゲの谷の毎日が変わりないことを綴っていた。
 「ありがとう、ライドウ」
 俺は、ライドウに礼を言った。
 ライドウは、にかっと笑った。
 「いいってことよ」
 俺は、前世から通してもこんな心を打つ美しい手紙を受け取ったことはなかった。
 俺は、この手紙をリリウスとエディットにも見せた。
 みんなも涙ぐんでいた。
 もう、トカゲの谷に帰りたい。
 だけど、自分達が始めたことだった。
 やり遂げなくては、ティミストリ父さんに叱られる。
 俺たちは、決意を新たにした。
 必ず、魔法学園の入学試験にみんなで合格しよう!
 
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